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※邦訳は川島聡様のご好意により掲載させて頂きました。

「障害者の権利条約」についての国連総会決議

(訳:川島聡)


国連総会決議五六/一六八:

障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約

国連総会は、

国連憲章の原則及び目的並びに関連人権文書に含まれる義務を再確認し、

また、世界人権宣言(注一)が、すべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ尊厳及び権利について平等であること、並びに、すべての人は人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位によるいかなる差別を受けることなく同宣言に掲げるすべての権利及び自由を享有することができることを宣明していることを再確認し、

障害者に関する世界行動計画(注二)を採択した一九八二年一二月三日の国連総会決議三七/五二、障害者の機会均等化に関する基準規則を採択した一九九三年一二月二〇日の国連総会決議四八/九六、並びに一九九九年一二月一七日の国連総会決議五四/一二一を想起し、

また、障害者による障害者のための障害者と共同した機会均等化の更なる促進と題する二〇〇〇年七月二七日の経済社会理事会決議二〇〇〇/一〇、並びに国連総会、経済社会理事会及びその機能委員会のその他の関連決議を想起し、主要な国連会議及びサミット並びにそれぞれの継続的再検討の成果(特に、平等及び参加を基礎とした障害者の権利及び福祉の促進にかかわるもの)を再確認し、

障害者による障害者のための障害者と共同した機会均等化を促進するための国内、地域及び国際レベルでの政策、プラン、計画及び行動を促進し、公式化しかつ評価するにあたり、障害者の機会均等化に関する基準規則が重要な役割を果たしていることに満足をもって留意し、

障害者に関する世界行動計画が採択されて以来、政府、国連システムの機関及び関連機構並びに非政府組織により、協力及び統合を増すために様々な努力がなされ、また、障害問題についての意識及び感度が増したにもかかわらず、こうした努力が障害者の経済的、社会的、文化的及び政治的生活における完全かつ実効的な参加及び機会を促進するには十分でなかったことを認め、

包括的かつ総合的なアプローチに基づき、世界中の障害者の権利及び尊厳を保護しかつ促進することについて、国際社会の関心が高まっていることにより奨励され、

世界の六億人の障害者が直面している、不利益を被りかつ傷つけられやすい状況を強く憂慮し、また、国際文書の作成が進められる必要があることを認識し、

社会開発委員会に提出される予定の同委員会の障害特別報告者の最終報告書、並びに二〇〇〇年四月二五日の国連人権委員会決議二〇〇〇/五一(注三)に基づき現在行われている、障害者の人権の保護及び監視に関する仕組の妥当性についての研究の成果を期待し、

人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連のある不寛容に反対する世界会議が、障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約(障害者に影響を及ぼす差別的慣行及び取扱に応えた特別の規定を含む。)の作成について検討するよう国連総会に対して勧告したこと(注四)を考慮し、

一.国連人権委員会及び社会開発委員会の勧告を考慮し、社会開発、人権及び非差別分野における全体的アプローチに基づき、障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約についての諸提案を検討するため、すべての国連加盟国及びオブザーバーに参加の途が開かれている特別委員会を設置することを決定する。

二.また、国連総会第五七会期が開催される前に、特別委員会は一〇日間の作業を行う会合を少なくとも一回開くことを決定する。

三.国連の慣行に基づき、特別委員会に委託された作業に貢献するよう、国連加盟国、関連人権条約機関を含む国連システムの関連機関及び機構、地域委員会、社会開発委員会の障害特別報告者、並びに本事案に関心をもつ政府間機構及び非政府組織に対して要請する。

四.障害者の状況を直接又は間接に取り扱う既存の国際的な法的仕組、文書及び宣言(とりわけ、国連、政府間機構及び非政府組織が開催した会議、サミット、会合又は国際的若しくは地域的セミナーにおけるものを含む。)について取りまとめたものを、国連人権高等弁務官事務所及び国連事務局社会政策開発部の支援を得て、特別委員会の第一会期が開かれる前に同委員会に提出するよう、国連事務総長に対して要請する。

五.また、国連人権委員会決議二〇〇〇/五一に基づき着手された研究の成果、及び社会開発委員会の障害特別報告者が同委員会に提出する予定の最終報告書を、特別委員会に提供するよう、国連事務総長に対して要請する。

六.当該国際条約に関して検討すべき内容及び実際的措置について勧告することにより特別委員会の作業に貢献するために、地域委員会、国連人権高等弁務官、国連事務局社会政策開発部及び社会開発委員会の障害特別報告者と協力し、地域会合又はセミナーを開催するよう、国連加盟国に対して要請する。

七.特別委員会にその作業の遂行に必要な環境を提供するよう、国連事務総長に対して要請する。

八.また、特別委員会の進捗状況に関する包括的な報告書を第五七回国連総会に提出するよう、国連事務総長に対して要請する。

(注一) Resolution 217 A (III).
(注二) A/37/351/Add.1 and Corr.1, annex, sect. VIII, recommendation I (IV).
(注三) See Official Records of the Economic and Social Council, 2000, Supplement No. 3 (E/2000/23), chap. II, sect. A.
(注四) See A/CONF.189/12, chap. I, para. 180.

88th plenary meeting
19 December 2001

(『福祉労働』(現代書館、2002年3月25日)160-162頁の拙訳を一部修正したものです。)


「障害者の権利条約」についての国連総会決議
最終更新 2002年5月10日
財団法人 全日本聾唖連盟

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