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※全日本聾唖連盟による仮訳

障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約」
の起草への障害を持つ女性の完全参加を促進する
国連ESCAP女性と障害に関するワークショップ
タイ、バンコク2003年8月18〜22日

提案書
(2003年8月22日 会議参加者により採択)


2003年8月18〜22日にバンコクで開催された、女性と障害の問題及び「障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約」の起草への障害を持つ女性の完全参加を促進するための国連ESCAPワークショップに参加した、

政府、非政府組織、国内障害及び人権団体、個々の専門家は、一致して次のことを確認する:

1.その数が著しく多いにも関らず、特に発展途上国の場合、障害を持つ女性や少女は表に出ず、沈黙したままであり、彼女たちの問題は知られることなく、権利も認められないままである。

2.この地域では、都市部、農村部双方において障害を持つ女性や少女は、その障害のため、女性であるため、そして貧しいため、三重の差別を受けている。

3.アジア太平洋地域の多くの国の農村部に暮らす障害を持つ女性の研究から、このような女性の80%以上は自立して生計を立てる方法を持たず、したがって生活すること自体他人に完全依存していることがわかった。

4.ユニセフの報告によると、女性や子どもはリハビリテーション・サービスの20%以下しか受けられていない。

5.社会的、文化的、宗教的要因に阻まれ、障害を持つ女性は、男性と比べた場合、在宅サービスを含む様々な社会サービスを受けられる可能性が低い。

6.情報、社会の啓蒙、教育、収入、他の人と接する機会などが少ないため、農村部に暮す障害を持つ女性が直面する問題はさらに深刻であり、結果として極端に孤立し、社会から気付かれずにいる。

我々はさらに次のことも確認する:

7.CEDAW(訳注:女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約)は、男女の平等を促進するための人権条約ではあるが、明確に障害問題を打ち出していない。その結果、締約国からの報告には、障害を持つ少女や女性に対する差別や人権侵害などに関する報告が不十分である。

8.北京行動綱領の第32条は、特定の女性グループが人種、年齢、障害などを要因としたエンパワメントへの複合的な障壁に直面していることを認知するが、実際には、ジェンダー・エンパワメントの取り組みにおいて障害のメインストリーミングはまだ実現できていない。

9.1993年のアジア太平洋障害者の十年の発足は、十年の課題をジェンダーの側面から強化する追加目標が採択されたことにより、障害運動におけるジェンダー問題への取り組みの拡大に大きく貢献した。

10.障害を持つ少女や女性の関心をさらに促進し注目を集めさせるため、第二のアジア太平洋障害者の十年の政策ガイドラインである「びわこミレニアム・フレームワーク」は、ジェンダー間の平等を7つの優先的領域の1つとして定めた。

世界中の女性が男性との平等のために奮闘しているなか、障害を持つ女性は第一に人間として、そして第二に女性として認められるために懸命に努力している。従ってESCAP地域における女性と障害に関する本ワークショップの参加者は、条約の起草プロセスに携わる全ての関係者に以下を確実なものとするよう強く求める。

障害を持つ少女と女性が一切の差別なく尊厳を持って全領域の人権と自由を享受できるような形で、条約の構造と規定を決定し、

新しい条約は、CEDAWを含む既存の国連人権条約や専門機関の採択した条約に定められる人権規範、並びに北京行動綱領やびわこミレニアム・フレームワークなどの拘束力のない取り決めで採択された規範を再確認し、これらを基にして築かれるべきであり、

条約は、とりわけジェンダーと障害に基づいた複合的な差別の影響を取り上げ、差別撤廃と平等の原則に基づいて作成されるべきであり、

新しい条約の前文は、とりわけジェンダーと障害の交差による二重の不利と複合的な差別の影響を強調するべきであり、

条約には主に実現可能な権利が含まれるべきであり、障害を持つ女性、男性、少女、少年が権利を平等かつ効果的に享受できるような施策を取り入れるべきであり、

機会と結果を平等にするには、障害もしくは障害とジェンダー、貧困、人種、階層、階級などの交差により直接的および間接的に生じた関連する全ての制約や制限を、適切な変更、修正、補助により解消しなければならないこと、そして積極的な是正措置、適切な配慮、特別措置が必要なことが、平等の定義の中で認識されるべきであり、

「アクセス」という用語は行動や状態を示すのではなく、障害の種類や程度、ジェンダー、年齢に関わらず、物理的、環境的、社会的な構造体、体制、プロセスに関して、入る、近寄る、コミュニケーションをとる、移る、戻る、利用する自由を指す。

締約国には、障害を持つ女性や少女の権利について平等な擁護と促進を保障するための条約の様々な規定を実施する義務が課せられるべきである。この目標を達成するにはジェンダーに配慮した施策を常に実施して行く必要がある。

締約国には、介助者や障害者の家族を含む関係者にも支援を提供する義務がある。既存の人権団体や機構は障害問題への取り組みを強化しなければならない。とりわけCEDAWのモニタリング団体は、障害を持つ少女や女性の直面する差別に関連して、権利に基づいたより進歩的な取り組み方を採用しなければならない。

独立した、効果的かつ行動的なモニタリング機構が、新しい条約に不可欠な要素として組み込まれるべきである。この構造は、障害、ジェンダー、地域のバランス、とりわけ障害を持つ女性の参加に重点をおいて決定されるべきである。締約国がジェンダー別に報告を行うよう、報告の作成に関するガイドラインは改変しなければならない。この取り組みは国のモニタリング機構の中で常に維持され、十分な補助を受ける必要がある。

参加者は、既存の協定で保障される権利や自由を、障害を持つ少女と女性の特定な状況に適応させる必要性を確認し、特定の人権をさらに拡充する必要性を強調した。

参加者は、条約の起草、実施、モニタリングの全ての過程における障害を持つ女性の平等な参加を強く求める。


補足的な追加権利
グループから提案された権利の一覧

1.適切な生活水準への権利には、栄養摂取、清潔な水、公衆衛生、安全な住処などが含まれるべきである。

2.生命と生存への権利には、早期発見、早期処置、情報、支援サービスなどが含まれるべきである。

3.社会保障には、とりわけ障害を持つ母子家庭や寡婦および経済的・社会的不利にある障害を持つ少女や女性に関連して、失業手当、高齢者施設、恩給、子どもの養育費、保健と住居の保障などが含まれるべきである。

4.強姦、強制的な避妊手術、強制的な結婚、隔離などの感情的、身体的、精神的、及びジェンダーに基いたあらゆる形の暴力や虐待からの自由。

5.情報とコミュニケーションの自由では、アクセス可能なICTを含む、代替的・付加的コミュニケーション手段の利用が認識されるべきである。

6.家族の権利は、結婚と家族を持つ権利、離婚した場合の補助、子どもの親権と国籍を保持する権利などを保障するべきである。

7.障害を持つ女性の生活が他者に依存する状況を解消するため、働く権利は、多様でありながら公平、公正、アクセス可能な環境での様々な職業へのアクセスを保障するべきである。

8.法律による平等の保護には、無償の法的支援やカウンセリング、法廷費用の免除が含まれるべきである。

9.障害を持つ少女や女性の尊厳を傷つけるような優生学的な慣行、メディアでの否定的な描写、固定観念などからの保護。

10.財産を相続、所有、保持する権利。

原文(会議情報ウェブサイト内)


作成日 2003年10月7日
財団法人 全日本聾唖連盟

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