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※全日本聾唖連盟による仮訳
  本条約案に含まれる他の国連条約などからの転用部分については以下の和訳資料を仮訳に利用させて頂きました:


・外務省 訳 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約:A規約)
市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約:B規約)
女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約
児童の権利に関する条約
・国連広報センター 訳 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約選択議定書
・長瀬 修 様 訳 障害者の機会均等化に関する国連基準規則
・江橋 崇 様 訳 すべての移住労働者とその家族の権利保護に関する条約

「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する総合的かつ包括的
な国際条約」に向けての地域ワークショップ
2003年10月14日〜17日
タイ、バンコク
2003年6月に採択された『バンコク提案』を踏まえて書かれた討議のための条約草案
(注:ワークショップでの討議前の第1案)


1. 添付の「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する総合的かつ包括的な国際条約」の草案は、2003年6月2〜4日にバンコクで開催された専門家会議で採択された条約起草のための『バンコク提案』が示す枠組みに基づいて書かれたものである。

2. この草案は地域ワークショップでの討議のために準備されたものである。この草案は「バンコク提案」が示す枠組みに従い、主に世界人権宣言及び各国際人権条約やその他関連する世界人権規約などが示す人権と基本的自由を掲げるが、内容によっては特に障害者の人権侵害に対処しやすいような書き方になっている。又、この草案は、他の国連人権規約と同様に、独立した監督委員会の設置に関する項を含む。この監督委員会は条約に従って締約国から提出された報告書や条約違反に関する申し立てなどを検討する。条約草案作成にあたり、バンコク会議及びその他条約に関連する地域内あるいは国際会議に提出された様々な資料を参考にしたが、全ての課題を取り上げてはいない。現段階では、条約の前文の文章が用意されていないが、バンコク提案を受けて、前文に盛り込むべきかと思われる内容を列挙した。

3. 地域ワークショップの参加者、その他関係者には条約草案の検討の際、次のことも取り上げて頂きたい:

  1. 既存の人権条約がすでに保障する人権をこの条約にも記載すべきか否か。
  2. 人権に関する記述が、障害者の問題をより的確に対処するようにするには、どのように書き換えるべきか。
  3. 既存の権利のポテンシャルが十分に開発され、障害者にもこれらの権利が十分に共有される事を保障するにはさらにどのような条項が必要であるか。
  4. 経済的、社会的、文化的権利に関して、締約国の責任(義務)の範囲をどのように設定し、特にこれら全てを、あるいは一部を直ちに実現可能とするのか、または発展的に実現すべきとするのか。
  5. 全般的な制限条項を書き加えるべきか。もし書き加えるならば、市民的、政治的権利にかかわるも条項と、経済的、社会的、文化的権利に関わる条項が違うべきであるか否か。
「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する総合的かつ包括的な国際条約」

2003年6月に採択された『バンコク提案』を踏まえて作成された討議のための草案
前文

この条約の締約国は、

*既存の国連人権規約による国際人権保障の重要性を認識する。

*障害者の人権と非差別を促進するための国際及び地域内の障害を特記した規約、声明、規範、ガイドラインなどを認める。

*国際的に保障されているはずの人権や基本的自由が、障害者の場合は依然として広範に渡り奪われていることを認識する。

*一般社会(メインストリーム)の人権機関が障害者の問題にさらに注力しているにも関わらず、障害者の人権を保障し、これらの人々を代表する組織が十分に聞き入れられ、対策が講じられるには、新しい条約の採択が必要であることを認識する。

*この条約の理解と実施には基準規則が重要な意味を持つことを認識する。

*「アジア太平洋障害者の十年、1993−2002」の間の努力、成果、困難などを認識する。

*「びわこミレニアム・フレームワーク」、「アクセス可能な情報通信技術に関するマニラ宣言」、情報化社会に関する世界サミットの報告、その他の地域規約など、障害に焦点を当てた文書の主張を再確認する。]

次の通り協定した。
第1部

全般

第1条

1. この条約の締約国は、障害を持つ人を含む、全ての人が生まれながらに自由であり、尊厳と権利において平等であり、人権と基本的自由を完全且つ平等に享受できることを確認する。

2. 締約国は、次の原則に則って、本条約が掲げる基本的な権利と自由を、障害者が享有できることを保障することが本条約の目的であることを宣言する:
  1. 充実し、自立した生活を可能にする障害者の自律と自己決定の原則
  2. 社会生活の全ての側面において、平等の市民であり、参加者として障害者の完全参加の原則
  3. 他の人との違いを認める、多様性認識の原則
第2条

定義
1. この条約の適用上:

"associate" (アソシエート=関連する人)とは、助力者、介助者、親戚・家族、障害者の擁護をする人などをいう。

障害 (Disability)

"disability"(ディスアビリティー=障害)とは:
  1. (永続的あるいは一定の期間持続する一時的な)身体的、精神的、知的、あるいは感覚的障害(impairment)を意味し、それにより一つ以上の主要な日常生活動作を行う能力が制約され、その原因または悪化(の全てもしくは一部)が経済的及び社会的環境による場合を言う。
  2. 今後障害となり得る疑わしい状態、推定される状態、推測される状態、そのような可能性のある状態、認知できる障害、過去の障害あるいは過去の障害の影響などを含む。

差別 (Discrimination)

「障害による差別」 "discrimination on the basis of disability"とは:

  1. 障害に基づく区別、排除、または制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的、その他いかなる分野においても、障害者がその人権及び基本的自由を認識し、享有し、または行使することを害しまたは無効にする効果または目的を有するものをいう。
  2. 明確に障害に基づくものでなくとも、下記のような行動、基準、慣行、政策、規則、取り決めなども障害による差別である。
    1. それが障害者全般あるいは特定の障害を持つ人々にだけ不均衡な影響を及ぼす場合。
    2. それが政治的、経済的、文化的、市民的、その他いかなる分野においても、障害者がその人権及び基本的自由を認識し、享有し、または行使することを害しまたは無効にする効果または目的を有する場合。
    3. 客観的に判断して、それが正当な目的を達成するための常識的且つ適切な手段であると認められない場合。
  3. 適切な配慮の欠如を意味する。
  4. 障害を持つ人に関連する人(アソシエート)が、関わる障害あるいはその関わりを理由に望ましくない扱いを受けることを意味する。
  5. 「適切な配慮」とは、障害を持つ人が他の人々と同等の基本的人権と自由を享有できるようにするため、それぞれのケースの必要性に応じて、適切な措置を取ることを意味する。1
2. 「障害による差別」の概念には、障害者が人権と基本的自由を享有し、地域の生活に完全に参加する平等の機会を保障する目的で行われる、金銭的支援、補助機器や技術的支援の提供などの措置は含まれない。
3. 『障害による差別』には、複数の障害を理由に受ける差別、あるいは人種、民族、皮膚の色、性、言語、宗教、政治意見その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、出生、社会的地位、性的特性、障害、などのうち一つ、あるいは複数の特性と障害を合わせた理由による差別も含まれる。
4. 締約国が障害者の事実上の平等を促進する事を目的とする暫定的な特別措置を取ることは、この条約に定義する差別と解してはならない。ただし、その結果としていかなる意味においても不平等なまたは別個の基準を維持し続けることとなってはならず、これらの措置は、機会及び待遇の平等の目的が達成されたときに廃止されなければならない。
第3条

締約国の義務 (自由権規約第2条、社会権規約第2条に基づく)
1.この条約の締約国は、その領域内にあり、且つ、その管轄の下にあるすべての個人にたいし、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、出生または他の地位によるいかなる差別もなしにこの規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束する。
2.この条約の各締約国は、立法措置その他の措置がまだ取られていない場合には、この規約において認められる権利を実現するために必要な立法措置その他の措置を取るため、自国の憲法上の手続き及びこの規約の規定に従って必要な行動を取ることを約束する。
3. この条約の締約国は、この規約の第3部において認められる経済的、社会的、文化的権利のうち、直ちに実現可能な権利の側面は直ちに実現する。(これらの権利の享有に際して非差別の義務を含むが、それのみに限定するのではない)。又、これらの権利の他の側面は、自国における利用可能な手段を最大限に用いり、立法措置その他の全ての適当な方法により、その完全な実現を発展的に達成する事を目指す。
4. この条約の締約国は、次のことを約束する。
  1. この条約に置いて認められる権利または自由を侵害された者が、公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも、効果的な救済措置を受けることを確保すること。
  2. 救済措置を求めるものの権利が権限のある司法上、行政上若しくは立法上の機関または国の法制で定める他の権限のある機関によって決定されることを確保すること及び司法上の救済措置の可能性を発展させること。
  3. 救済措置が与えられる場合に権限のある機関によって執行されることを確保すること。
第4条

権利享有における男女の平等(自由権規約第3条、社会権規約第3条に基づく)
1.締約国は、障害を持つ女性や少女は多重の(multiple)差別を受ける可能性があることを認識し、女性や少女にも男性と同等の人権と基本的自由の享有を確保するには、ジェンダーの問題に的を絞った、特定の措置が必要であることを認める。
2.各締約国は全ての必要な措置をとり、この条約が認める全ての権利の享有について女性も男性も同等の権利を確保することを約束する。
第5条

障害に対する意識(態度)を変える(女性に対する差別撤廃条約、第5条に基づく)
締約国は、障害の性質及び障害を持つ人々に対する定型化された偏見を取り除き、地域社会を啓発するための全ての適当な措置をとる。
第2部

市民的及び政治的権利

第6条

生命の連理(自由権規約第6条に基づく)
全ての人間は、生命に対する固有の権利を有する。この権利は法律によって保護される。何人も、恣意的にその生命を奪われない。
第7条

拷問又は残忍な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱い
もしくは刑罰を受けない権利(自由権規約第7条に基づく)
何人も、拷問又は残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意無しに医学的又は科学的実験を受けない。
第8条

個人の心身の安全 (integrity)を維持する権利(自由権規約第7条、
子どもの権利条約第19条)
1.全ての人は、個人の自由と安全についての権利を有する。

2.障害を持つ人々は、公的立場にある人及び個人によるあらゆる暴力、身体的傷害(injury)、脅迫や威嚇などから国の効果的な保護を受ける権利を有する。

3.締約国は、児童が父母、法的保護者、または児童を監護する他の者による監護を受けていて、あらゆる形態の身体的もしくは精神的な暴力、傷害、もしくは虐待、放置もしくは怠慢、不適当な取り扱いまたは搾取(性的虐待を含む)からその児童を保護するため全ての適当な行政上、社会上、及び教育上の措置をとる。
第9条

奴隷の状態、隷属状態に置かれること、強制労働に服すること
などを要求されない権利
1.何人も、奴隷の状態に置かれない。あらゆる形態の奴隷制度及び奴隷取引は、禁止する。

2.何人も、隷属状態に置かれない。

3.
  1. 何人も、強制労働に服することを要求されない。
  2. (a)の規定は、犯罪に対する刑罰として強制労働を伴う拘禁刑を科することができる国において、権限のある裁判所による刑罰の言い渡しにより強制労働をさせることを禁止するものと解してはならない。
  3. この三の適用上、「強制労働」には、次のものを含まない。
    1. 作業また役務であって、(b)に規定において言及されておらず、かつ、裁判所の合法的な命令によって抑留されているものまたはその抑留を条件付で免除されている者に通常要求されるもの
    2. 軍事的性質の役務及び、良心的兵役拒否が認められている国においては、良心的兵役拒否者が法律によって要求される国民的役務
    3. 社会の存立または福祉を脅かす緊急事態または災害の場合に要求される役務
    4. 市民としての通常の義務とされる作業または役務
第10条

個人の自由と安全についての権利(自由権規約第9条に基づく)
1.全ての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕され又は拘留されない。何人も、法律で定める理由及び手続きによらない限り、その自由を奪われない。

2.逮捕される者は、逮捕の時にその理由を告げられるものとし、自己に対する被疑事実を速やかに告げられる。

3.刑事上の罪に問われて逮捕され又は抑留された者は、裁判官又は司法権を行使することが法律によって認められている他の官憲の面前に速やかに連れていかれるものとし、妥当な期間内に裁判を受ける権利又は釈放される権利を有する。裁判に付される者を抑留することが原則であってはならず、釈放に当たっては、裁判その他の司法上の手続きの官界における出頭及び必要な場合における裁判の執行のための出頭が保証されることを条件とすることができる。

4.逮捕または抑留によって自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続きをとる権利を有する。

5.何人も、その人が実際持つ障害あるいは他の者から認識された障害を理由に拘束、抑留、または意に反して監禁されてはならない。

6.法律に反する逮捕または抑留の被害者は、それが法によりに弁償される権利を有する。
第11条

自由を奪われたものの人道的に取り扱われる権利(自由権規約第10条に基づく)
1.自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる。

2.
  1. 被告人は、例外的な事情がある場合を除くほか有罪の判決を受けた者とは分離されるものとし、有罪の判決を受けていない者としての地位に相応売る別個の取り扱いを受ける。
  2. 少年の被告人は、成人とは分離されるものとし、できる限り速やかに裁判に付される。
3.行刑の制度は、被拘禁者の矯正及び社会復帰を基本的な目的とする処遇を含む。少年の犯罪者は、成人とは分離されるものとし、その年齢及び法的地位に相応する取り扱いを受ける。
第12条

移動の自由(自由権規約第12条に基づく)
1.合法的にいずれかの国の領域内にいる全ての者は、当該領域内において、移動の自由及び居住の自由についての権利を有する。

2.全ての者は、いずれの国(自国を含む)からも自由に離れることができる。

3.1及び2の権利は、いかなる制限も受けない。ただし、その制限が、法律で定められ、国の安全、公の秩序、公衆の健康もしくは道徳または他の者の権利及び自由を保護するために必要であり、かつ、この規約において認められる他の権利と両立するものである場合は、この限りでない。

4.何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。
第13条

アクセスの権利
1.全ての人は物理的環境、とりわけ公共の建物及び公共の目的に使用される建物へのアクセス、歩行のための環境、道路、その他屋外の環境、及びアクセス可能な住居などにアクセスする権利を有する。

2.全ての人は公共交通機関及びその他の交通サービスにアクセスする権利を有する。

3.締約国は物理的環境への参加を阻む障壁を取り除く措置をとる。さらに締約国は、建築家、建設技師、その他物理的環境の設計、建設に関わる専門家が、アクセスを達成するための障害者施策や措置に関する十分な情報を得られることを保証する必要がある。
第14条

法の前に人として認められる権利(自由権規約第16条に基づく)
1.全ての者は、全ての場所において、法律の前に全ての法的能力を有する人として認められる権利を有する。

2.障害を持つ人が完全に法的能力を発揮できず、かつその人の法的代理が必要であるという例外的な場合、その人の権利は明確な保護手段により擁護され、裁判所が定期的にその代理行為の必要性及び適正な行使の検証を行われなければならない。
第15条

裁判所及び裁決機関に対する権利(自由権規約第14条に基づく)
1.全ての者は、裁判所及び裁決期間の前に平等とする。これは証人として立ち、法廷で証
言する権利を含む。

2.すべての者は、その刑事上の積みの決定または民事上の権利及び義務の争いについての決定のため、法律で設置された、権限のある、独立の、かつ、公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利を有する。報道機関及び公衆に対しては、民主的社会における道徳、公の秩序もしくは国の安全を理由として、当事者の私生活の利益のため必要な場合においてまたはその公開が司法の利益を害することとなる特別な状況において裁判所が真に必要があると認める限度で、裁判の全部または一部を公開しないことができる。もっとも、刑事訴訟または他の訴訟において言い渡される判決は、少年の利益のために必要がある場合または当該手続きが夫婦間の争いもしくは児童の後見に関するものである場合を除くほか、公開する。

3.刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。

4.全ての者は、その刑事上の罪の決定に付いて、十分平等に、少なくとも次の保障を受ける権利を有する。
  1. その理解する言語で速やかにかつ詳細にその罪の性質及び理由を告げられること。
  2. 防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられ並びに自ら選任する弁護人と連絡をすること。
  3. 不当に遅延することなく裁判を受けること。
  4. 自ら出席して裁判を受け及び、直接にまたは自ら選任する弁護人を通じて、防御すること。弁護人がいない場合には、弁護人を持つ権利を告げられること。司法の利益のために必要な場合には、十分な支払い手段を有しないときは自らその費用を負担することなく、弁護人を付されること。
  5. 自己に不利な証人を尋問し又はこれに対し尋問されることならびに自己に不利な証人と同じ条件で自己のための証人の出席及びこれに対する尋問を求めること。
  6. 裁判所において使用される言語を理解すること又は話すことができない場合には、無料で通訳(手話通訳を含む)の援助を受けること。
  7. 自己に不利益な供述または有罪の自白を強要されないこと。
  8. 関連する法律及び裁判資料がアクセス可能な形態で提供されること。
5.少年の場合には、手続きは、その年齢及びその更正の促進が望ましいことを考慮したものとする。

6.有罪の判決を受けた全ての者は、法律に基づきその判決及び刑罰を上級の裁判所によって再審理される権利を有する。

7.確定判決によって有罪と決定された場合において、その後に、新たな事実または新しく発見された事実により誤審のあったことが決定的に立証されたことを理由としてその有罪の判決が破棄されまたは赦免が行われたときは、その有罪の判決の結果刑罰に福祉他者は、法律に基づいて補償を受ける。ただし、その知られなかった事実が適当なときに明らかにされなかったことの全部又は一部がその者の責めに帰するものであることが証明される場合は、この限りでない。

8.何人も、それぞれの国の法律及び刑事手続きに従ってすでに確定的に有罪または無罪の判決を受けた行為に付いて再び裁判されまたは処罰されることはない。
第16条

裁判所及び裁決機関に対する権利(自由権規約第15条に基づく)
1.何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪を構成しなかった作為又は作為を理由として有罪とされることはない。何人も、犯罪が行われたときに適用されていた刑罰よりも重い刑罰を科されない。犯罪が行われた後により軽い刑罰を科する規定が法律に設けられる場合には、罪を犯した者は、その利益を受ける。

2.この条のいかなる規定も、国際社会の認める法の一般原則んより実行の時に犯罪とされていた作為または不作為を理由として裁判しかつ処罰することを妨げるものでない。
第17条

裁判及び裁決機関において私生活、家庭、もしくは家族の尊厳が保護される権利
(自由権規約第17条に基づく)
1.何人も、その私生活、家族、住居もしくは通信に対して恣意的にもしくは不法に干渉されまたは名誉および信用を不法に攻撃されない。

2.すべての者は、1の干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。
[この条項の別な書き方として、欧州人権条約、第8条を参考にできる:

1.何人も、その私生活、家族生活、家庭、及び通信に対する尊厳が保護される権利を有する。

2.この権利の享有に対して、公権力からの干渉があってはならない。ただし、法律に則って、民主的社会または国家保安、公共の安全または健全な国家経済、混乱や犯罪の防止、保険または倫理の保護、他の者の権利と自由の保護のために必要とみなされた場合はこの限りではない。]
3.全ての者は、性的権利を有し、他のものと密接な関係を築き、家族を作る(養子を引き取る権利を含む)権利を有する。

4.障害者は自分の生活のあり方を選択する権利を有する。これには自分の世帯を作ること、家族と共に暮らすことなどの選択が含まれ、これらの選択を実現するために必要な金銭的またはその他の支援を受ける権利を有する。この権利には、施設に入所しないことを選択する権利を含む。
第18条

思想、良心及び宗教の自由(自由権規約第18条に基づく)
1.全ての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由ならびに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を状名する自由を含む。

2.何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害する恐れのある強制を受けない。

3.宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康もしくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。

4.この規約の締約国は、父母及び場合により保護者が、自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。
第19条

意見及び表現の自由、及び情報アクセスの権利(自由権規約第19条に基づく)
1.すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。

2.すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書きもしくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境との関わりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。

3.障害者の表現の自由には、自らがもっとも適当と考える言語又はその他のコミュニケーション手段(手話、点字、その他のコミュニケーション形態を含む)を使用する権利を含み、このコミュニケーションのモードが公的に認められ、この代替のコミュニケーション・モードにより、政府、公的機関、その他重要なサービスを提供する人や期間からの情報やサービスを受け取る権利をも含む。

4.情報を受ける権利には、適時に、追加の費用を伴うことなく、全ての公知の情報が障害者(特に盲もしくは弱視の人)にもアクセス可能な形態で提供される権利を含む。

5. 2の権利行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課すことができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、且つ、次の目的のために必要とされるものに限る。
  1. 他の者の権利又は信用の尊重
  2. 国の安全、公の秩序又は講習の健康若しくは道徳の保護
第20条

集会の権利(自由権規約第21条に基づく)
1. すべての者は平和的な集会の権利を有する。

2. この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することが出来ない。
第21条

集会の自由(自由権規約第22条、社会権規約第9条に基づく)
1. 全ての者は、結社の自由についての権利を有する。この権利には、自己の利益の保護のために労働組合を結成し及びこれに加入する権利を含む。

2. 特に障害者は独立した組織を作り、その利益を促進する権利を有する。又障害者も政党や社会団体に加入する権利を有する。

3. これらの権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全もしくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することが出来ない。この条の規定は、軍隊及び警察の構成員にたいして合法的な制限を課することを妨げるものではない。

4. この条のいかなる規定も、結社の自由及び団結権の保護に関する1948年の国際労働機関(ILO)の条約の締約国が、同条約に規定する保障を阻害するような立法措置を講ずること又は同条約に規定する保障を阻害するような方法により法律を適用することを許すものではない。
第22条

家族の保護、婚姻する権利(自由権規約第23条、社会権規約第10条に基づく)
1. 家族は、社会の自然かつ基本的な単位である、社会及び国による保護を受ける権利を有する。

2. 婚姻をすることができる年齢の男女(障害者を含む)が婚姻をしかつ家族を形成する権利は認められる。

3. 障害を持つ人々は自由に、自己の責任において子どもの数及び出産の間隔を決める平等の権利を有する。又、この権利を行使するために必要な情報、教育、方法などへのアクセスも確保されなければならない。

4. 婚姻は、両当事者の自由かつ完全な合意なしには成立しない。

5. この条約の締約国は、婚姻中及び婚姻の解消の際に、婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等を確保するため、適当な措置をとる。その解消の場合には、児童に対する必要な保護のため、措置が取られる。

6. 障害者は、児童の養護、保護、監護、養子縁組及びこれらに順ずる制度を定める国の法律において平等の権利を有する。
第23条

児童の権利(自由権規約第24条、子どもの権利条約第23条に基づく)
1. 全ての児童は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国民的若しくは社会的出身、財産又は出生によるいかなる差別もなしに、未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、社会及び国に夜措置について権利を有する。

2. すべての児童は、出生の後直ちに登録され、かつ氏名を有する。

3. 全ての児童は、国籍を取得する権利を有する。

4. 締約国は、障害を有する児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める。

5. 締約国は、障害を有する児童が特別の養護についての権利を有することを認めることし、利用可能な手段の下で、申し込みに応じた、かつ、当該児童の状況及び父母又は当該児童を養護している他の者の事情に適した援助を、これを受ける資格を有する児童及びこのような児童の養護について責任を有するものに与えることを奨励、かつ、確保する。

6. 障害を有する児童の特別な必要を認めて、5の規定に従って与えられる援助は、父母又は当該児童を養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償で与えられるものとし、かつ、障害を有する児童が可能な限り社会への統合及び個人の発達(文化的及び精神的な発達を含む。)を達成することに資する方法で当該児童が教育、訓練、保健サービス、リハビリテーション・サービス、雇用のための準備及びレクリエーションの機会を実質的に利用し及び享受することができるように行われるものとする。
第24条

政治的、公的活動に参加する権利(自由権規約第25条、
女性への差別撤廃条約第7条に基づく)
全ての障害者は、第三条に規定するいかなる差別もなく、かつ、不合理な制限無しに、次のことを行う権利及び機会を有する。
  1. 直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、政治に参与すること。
  2. あらゆる選挙及び国民投票において投票する権利ならびに全ての公選による機関に選挙される資格を有すること。この権利には次のことが含まれる。
    1. これらの選挙において秘密投票の権利及びそれを可能にする設備。
    2. これらの選挙において政党及び候補者の公約に関する情報をアクセス可能な形態で得る権利。
    3. 移動の制約により、投票所へ行くことが困難な場合、郵便による投票の権利。
  3. 政府の政策の策定及び実施に参加すること、ならびに政府の全ての段階において公職に就き及び全ての公務を遂行すること。
  4. 一般的な平等の条件の下で、自国の公務に携わること。
  5. 自国の公的又は政治活動に関係のある非政府機関及び非政府団体に参加する権利。
第25条

国際的な公的活動への参加(女性への差別撤廃条約第8条に基づく)
締約国は、国際的に自国政府を代表し及び国際機関の活動に参加する機会を、障害者に対していかなる差別もなく確保するための全ての適当な措置をとる。
第26条

法律の前の平等及び法律による平等の保護(自由権規約第26条に基づく)
全ての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このために、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生、障害、又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護を全ての者に保障する。
第27条

少数民族に属する者の権利(自由権規約第27条、
子どもの権利条約第30条に基づく)
種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する障害者は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。
第28条

財産を所有し、取り仕切る権利(世界人権宣言第17条、
女性への差別撤廃条約第13条に基づく)
1. 全ての者は、単独で又は他の者と共同して財産を所有する権利を有する。

2. 何人も、ほしいままに自己の財産を奪われることはない。

3. 障害者は銀行貸付、その他の形態の金融上の信用を受け、自己の金融上の事柄を自ら決定し、事業を行う権利を有する
第3部

経済的、社会的、文化的権利

第29条

労働の権利(社会権規約第6条に基づく)
1. この条約の締約国は、労働の権利を認めるものとし、この権利を保護するため適当な措置を取る。この権利には、全てのものが自由に選択肢又は承諾する労働によって生計を立てる機会を得る権利を含む。

2. 障害者の労働の権利には、職場における適切な配慮を含む。

3. この条約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためとる措置には、個人に対して基本的な政治的及び経済的自由を保障する条件の下で着実な経済的、社会的及び文化的発展を実現し並びに完全かつ生産的な雇用を達成するための技術及び職業の指導及び訓練に関する計画、政策及び方法を含む。
第30条

公正かつ良好な労働条件(社会権規約第7条に基づく)
この条約の締約国は、全ての者が公正かつ良好な労働条件を享受する権利を有することを認める。この労働条件は、特に次のものを確保する労働条件とする。
  1. すべての労働者に最小限度次のものを与える報酬:
    1. 公正な報酬及びいかなる差別もない同一価値の労働についての同一報酬。特に女子については同一の労働についての同一の報酬とともに男子が享受する労働に劣らない労働条件が保障されること。又障害者についても他の労働者と同一の労働についての同一の報酬とともに他の労働者が享受する労働に劣らない労働条件が保障されること。
    2. 労働者及びその家族のこの条約に適合する相応な生活
  2. 安全かつ健康的な作業条件
  3. 先任及び能力以外のいかなる事由も考慮されることなく、全てのものがその雇用関係においてより高い過当な地位に昇進する均等な機会
  4. 休息、余暇、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇並びに公の休日についての報酬
第31条

社会保障の権利(社会権規約第9条に基づく)
1. この条約の締約国は、社会保健その他の社会保障についての全ての者の権利を認める。

2. 締約国は、特に次のことを認める。

  1. 障害を持つ人々については、次の権利を認める。
    1. 障害を有するが故に生じる追加の経費(技術的、その他の援助及び機器を入手する経費も含まれる)を補償するための経済的その他の援助を受ける権利。
    2. 必要な援助に掛かる金銭的、物理的負担及び、介助者を雇用する経費を補償するための経済的援助を受ける権利。
  2. 重度障害者の家族については、障害に関連する経費(レスパイト介護の費用を含む)に対する援助を国から受ける権利。
第32条

相当な生活水準に関する権利(社会権規約第11条、基準規則の規則2と3に基づく)
1. この条約の締約国は、自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての並びに生活条件の不断の改善についての障害者を含む全てのもの権利を認める。締約国は、この権利の実現を確保するために適当な措置をとり、このためには、自由な合意に基づく国際協力が極めて重要であることを認める。

2. 障害者の場合、この権利には最低限の生活必需品を入手する権利を含む。これには必要なサービス、機器類、その他障害に関連して必要な介助・援助の全てを含む。
第33条

健康への権利(社会権規約第12条、基準規則2に基づく)
1.この規約の締約国は、すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有することを認める。これは、障害を持つ人が社会の他の構成員と同じレベルの保健・医療ケアへのアクセスを持つべきこと、さらに障害により必要となった他のあらゆるサービスへのアクセスを持つべきことを意味する。

2.この権利を完全な形で実現するためにこの条約の締約国が講じるべき施策には以下が含まれる:
  1. 損傷の早期発見、早期評価、早期治療のプログラム
  2. 障害者の機能レベルを維持もしくは改善するのに必要とされる治療や薬物へのアクセス
  3. 適切なリハビリテーション・サービスの提供
3.障害を持つ人への保健ケアやサービスの提供は、インフォームド・コンセントを基本原則として提供されるべきである。

4.障害を持つ人は、障害に関連する医療記録を本人の事前承諾なく第三者に公開させない権利を有する。
第34条

教育への権利(社会権規約第13条、基準規則6に基づく)
1.この条約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。

2.教育への権利は、一般学校制度内でのインクルーシブ教育を受ける障害を持つ子供の権利、及びこの制度内で障害を持つ生徒の完全参加を確保するために必要なあらゆる支援を受ける権利を含む。

3.一般学校制度が障害を持つ人のニーズをまだ適切に満たさない場合、生徒が一般学校制度で教育を受けられるようにすることを目的とし、一般学校制度の同等の水準と抱負を反映する質の教育であれば、特別教育も認めら場合がある。

4.ろう者、盲ろう者、盲人(及びその親)の特殊なコミュニケーション・ニーズを考慮し、これらの人々は、特別学校での教育や、一般学校の特別学級での教育を選択することができる。

5.障害を持つ人は、他者との平等に基づいて第三次教育への対等なアクセスを持つ権利を有し、このアクセスを有効にするのに必要な経済的もしくは他の形の支援を受ける権利を有する。

6.障害を持つ人は、他者との平等に基づいて職業訓練および成人教育への対等なアクセスを持つ権利を有し、このアクセスを有効にするのに必要な経済的もしくは他の形の支援を受ける権利を有する。
第35条

文化的な生活とレジャーに参加する権利(社会権規約第15条、
基準規則10・11に基づく)
1.この条約の締約国は、障害を持つすべての人が文化的な生活に参加する権利を認め、以下を確保するために必要なあらゆる手段を講じなければならない:
  1. 障害を持つ人が自らのためだけでなく、地域社会を豊かにするためにも自らの創造的、芸術的及び知的潜在能力を十分に活かす機会を有すること。
  2. 劇場、美術館、映画館、図書館など文化的な公演やサービスが行われる場所への有効なアクセスを有すること。
  3. 文学、映画、演劇への有効なアクセスを有すること(アクセシビリティを確保するための適切な技術的設備の開発と利用を含む)
2.締約国は、障害を持つすべての人がスポーツを含むレジャー活動に参加する権利を認め、以下を確保するために必要なあらゆる手段を講じなければならない:
  1. スポーツ活動に参加する機会を持ち、他の参加者と同等の質の指導やトレーニングを受けられること。
  2. スポーツを行う場所への有効なアクセスを有すること。
  3. スポーツやレジャー活動の主催者から提供されるサービスにアクセスを有すること。
第36条

経済的・社会的・文化的権利の制限(社会権規約第4条)
締約国は、この条約の第4部で保障される権利に関して、その権利の性質と両立しており、かつ、民主的社会における一般的福祉を増進することを目的としている場合に限り、法律で定める制限のみをその権利に課すことができることを認める。
第4部

締約国のその他の義務

第37条

農村の障害者を持つ人の権利(女性差別撤廃条約第14条に基づく)
締約国は、農村の障害を持つ人が直面する特別の問題を考慮に入れるものとし、障害を持つ人に対するこの条約の適用を確保するためのすべての適当な措置をとる。
第38条

統計とデータの収集(規準規則の規則13に基づく)
1.政府は障害を持つ人の生活状態に関する性別の統計や他の情報を適切な手段で定期的に収集すべきである。この情報収集は国勢調査や世帯調査と同時に行うことが可能であり、とりわけ大学、研究所、障害を持つ人の組織との緊密な協力のもとに行うことも可能である。情報収集には施策やサービスとそれらの利用に関する質問も含まれるべきである。

2.政府は、利用できるサービスや施策に関する統計と異なる障害種別グループに関する統計を含む、障害データバンクの設立を考慮すべきである。政府は個人のプライバシーと人間としての尊厳を守る必要を心に留めるべきである。

3.政府は障害を持つ人とその家族に影響する社会・経済・参加の問題に関する調査計画を提案し、支援すべきである。こういった調査は障害の原因・種類・頻度、既存の施策の有用性と効果、サービスと支援方策の開発と評価に関する研究を含むべきである。

4.政府は障害を持つ人の組織と協力して、全国的調査を実施するに当たっての用語と基準を開発し採用すべきである。

5.政府は障害を持つ人の資料収集と調査への参加を促進すべきである。調査の実施にあたって、政府はその業務に適性ある、障害を持つ人の雇用を特に奨励すべきである。

6.政府は調査結果と経験の交換を支援すべきである。

7.政府は全国・地方・地域の全政治・行政レベルで障害に関する情報と知識を普及させるための措置をとるべきである。
第39条

国内機関
締約国は、条約の遵守を監視(訳注:モニタリング)ならびに促進するために、適切な国内機関制度を設置するか、既存の機関(国内の人権機関を含む)を利用するべきである。

締約国はとりわけ、障害者の権利擁護に関する責任が、実施の権限を持つ政府内の専門部署(訳注:focal point)に置かれることを確保しなければならない。
第40条

条約と委員会活動に関する周知(子どもの権利条約第42条、
女性差別撤廃条約選択議定書に基づく)
各締約国は 条約および委員会の見解や勧告、その中でもとりわけ締約国に関連する事柄について、広く宣伝して周知するよう努めるべきである。
第41条
1.この条約のいかなる規定も、次のものに含まれる規定であって障害を持つ人の権利と自由に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。
  1. 締約国の法律または慣行
  2. 締約国について効力を有する国際法
2.この規約のいかなる規定も、国、集団又は個人が、この条約において認められる権利若しくは自由を害する活動に従事し又はそのようなことを目的とする行為を行う権利を有することを意味するものと解することはできない。
第5部

条約の適用

(移住労働者の権利条約と女性差別撤廃条約選択議定書に基づく)

第42条
1.この条約の適用を審査するために、障害を持つすべての人とその家族の権利保護に関する委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

2.委員会は、この条約が効力を生じたときは10名の徳望が高く、公正で、かつ、この条約が対象とする分野において十分な能力を有する専門家で構成する。委員会は:
  1. その過半数を障害を持つ人で構成しなければならない。
  2. 最低でも4名の女性と4名の男性を含まなければならない。
  3. 委員会に必要とされる独立性と公正さの体面にそぐわない立場にある人を含んではならない。
3.委員会の委員は、委員の配分が地域的に衡平に、とくに出身国と就業国の間で衡平に行われること及び主要な法形態が代表されることを考慮に入れて、締約国により選挙のために指名された者の名簿の中から、締約国による秘密投票により選出される。各締約国は、自国民の中から1名を指名することができる。

4.委員会の委員は、個人の資格で選挙され及び職務を遂行する。

5.委員会の委員の最初の選挙は、この条約の効力が生じた日の後6ヶ月以内に行い、以後は2年ごとに行う。国際連合事務総長は、委員会の委員の選挙の日の遅くとも四ヶ月前までに、締約国に対し、委員会の委員に指名された者の氏名を2ヶ月前までに提出するよう書面で要請する。事務総長は、指名された者のアルファベット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し、名簿を各選挙の遅くとも1ヶ月前までに、指名された者の経歴を添付して、締約国に送付する。

6.委員会の委員の選挙は、国際連合事務総長により国際連合本部に招集される締約国会議において行う。この会合は、締約国の3分の2をもって定足数とする。この会合においては、出席しかつ投票する締約国代表によって投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得た指名された者をもって委員会に選出された委員とする。

7.委員会の委員は4年の任期で職務を遂行する。ただし、最初の選挙で選出された委員のうち5名の委員の任期は、2年で終了するものとし、この5名の委員は、最初の選挙の後直ちに、その選挙を行った締約国会議の議長によりくじ引きで選ばれる。

8.委員は、再度指名された場合には再選される資格を有するが、どの委員も2回の完全な任期を超えて委員会に留まってはならない。

9.委員会の委員が死亡し、辞任し、またはその他の理由で委員会の職務を遂行することができない旨を宣言したときは、その専門家を指名した締約国は、その残余の任期につき、自国民の中から他の専門家を任命する。この新規の任命は委員会によって承認されなければならない。

10.国際連合事務総長は、委員会がこの条約に定める任務を効果的に遂行するために必要な職員及び便益を提供する。

11.委員会の委員は、国際連合総会が決定する条件に従い、国際連合の財源から報酬を受ける。

12.委員会の委員は、国際連合の特権及び免除に関する条約の関連規定で規定される国際連合のための職務を行う専門家の便益、特権及び免除を享受する。
第43条

締約国による報告
1.締約国は、次の場合に、この条約の実施のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する報告を、委員会による検討のため、国際連合事務総長に提出することを約束する。
  1. 当該締約国についてこの条約が効力を生ずる時から一年以内
  2. その後は少なくとも五年ごと、更には委員会が要請するとき。
2.この条項に基づいて作成された報告には、この条約に基づく締約国による義務の履行の程度に影響を及ぼす要因及び障害を記載するべきである。

3.報告の内容に関する追加ガイドラインが必要であれば委員会がこれを決定する。

4.締約国は自国の報告を、自国の言語のアクセス可能な形式で、国内に広く閲覧可能な状態にするべきである。
第44条
1.委員会は締約国の提出する報告を審査し、適当と認める意見をその国に送付する。その国は、本条に基づいて委員会が行った意見に対する見解を提示することができる。委員会は、報告に関して締約国に情報の追加を要請することができる。

2.国際連合事務総長は、さらに、委員会との協議の後、報告に含まれる事項のうち、いずれかの専門機関または国際機関の権限の範囲に含まれるものの写しを当該専門機関または国際機関に送付することができる。

4.委員会は、専門機関、国際連合の諸機関、政府間機関その他の関連する機関に要請し、その機関の活動分野に属し、かつこの条約が扱っている事項について、委員会における検討のために、書面で情報を提出するよう求めることができる。

5.委員会は、専門機関、国際連合の諸機関ないし政府間機関に対して、その機関の権限領域に関する事項を委員会が検討する際には、出席して聴聞に応じるよう要請するものとする。

6.委員会は、障害分野の問題や他の関連分野における専門的知識を持つ非政府組織に対して、委員会の活動を補助する関連情報の提出や、会議に出席し聴聞に応じるよう要請するものとする。

7.委員会は、この条約の実施状況について国際連合総会に年次報告書を提出する。報告書は、締約国から提出された報告と意見にとくに基礎を置いて、委員会による考察と勧告を含むものとする。

8.国際連合事務総長は、委員会の年次報告書を、この条約の締約国、国際連合の経済社会理事会及び人権委員会、国連社会開発委員会及びその他の関連諸機関に送付する。
第45条
1.委員会は、手続規則を採択する。

2.委員会は、役員を二年の任期で選出する。

3.委員会は、原則として毎年会合する。

4.委員会の会合は、原則として国際連合本部において開催する。
個人とのコミュニケーションの手順

第46条
1.この条約の締約国は、この条約の定める個人的権利が締約国により侵害されたと主張する、締約国の管轄下にある個人又は個人に代わる通報を受理及び審議する委員会の権限を認めることを、この条項の基で何時でも宣言することができる。
2.通報は、締約国の管轄下にある個人又は集団であって、条約に定めるいずれかの権利が侵害されたと主張するものにより、又はそれに代って提出することができる。個人又は集団に代わって通報を提出する場合は、当該個人又は集団の同意を得て行うものとする。ただし、かかる同意がなくとも申立人が当該個人又は集団に代わって行動することを正当化できる場合は、この限りでない。

3.通報は、文書で行うものとし、匿名であってはならない。委員会は、条約の締約国ではあるがこの議定書の締約国でないものに関するいかなる通報も受理してはならない。
第47条
1.委員会は、利用し得るすべての国内的救済措置が尽くされたことを確認した場合を除き、通報を検討しない。ただし、かかる救済措置の適用が不当に引き延ばされたり、効果的な救済の見込みがない場合は、この限りでない。

2.委員会は、次の場合、通報を受理することができないと宣言する。
  1. 同一の問題が委員会によってすでに審議されており、若しくは他の国際的調査又は解決手続きの下ですでに審議され又は審議中である。
  2. 通報が条約の規定に抵触する場合
  3. 通報が明らかに根拠を欠いており又は十分に立証されない。
  4. 通報提出の権利の乱用である。
  5. 通報の対象となった事実が、当該締約国について本議定書が発効する以前に発生している。ただし、かかる事実がこの期日以降も継続している場合は、この限りでない。
第48条
1.通報が受理されてから理非の決定に到達するまでのいずれかの時点で、委員会は、該当する締約国に対し、通報の対象となった権利侵害の被害者に取り返しのつかない損害が及ぶ可能性を回避するために必要となり得る暫定的な措置を講ずるよう要請し、その緊急な検討を求めることができる。

2.委員会による本条第1項に定める裁量権の行使は、該当する通報の受理可能性又は理非に関する決定を示唆するものではない。
第49条
1.委員会が該当する締約国に対する照会を行わずに、通報が受理不可能と判断する場合を除き、かつ、通報の本人である個人又は集団が当該締約国に対するその身元の開示に同意していることを条件に、委員会は、この議定書に基づき提出された通報に関して、極秘に当該締約国の注意を喚起するものとする。

2.通報を受理する締約国は、6箇月以内に、委員会に説明書又は声明書を提出し、事実関係及び当該締約国によってとられた救済措置がある場合には、これを明らかにする。
第50条
1.委員会は、個人又は集団により、若しくはそれらに代わり、並びに関係締約国によって提出されたあらゆる情報に照らして、この議定書に基づき受理した通報を検討するものとするが、この場合、この情報が当事者に伝達されていることを条件とする。

2.委員会は、この議定書に基づく通報を検討する際には、非公開の会合を開くものとする。

3.委員会は、通報を検討した後、通報に関する意見を、勧告があればこれと共に当事者に送付する。

4.当該締約国は、委員会の意見をもしあればその勧告と共に十分に検討した上で、6箇月以内に、委員会に委員会の意見及び勧告に照らしてとられたいかなる行動に関する情報も含め、回答書を提出するものとする。

5.委員会は、当該締約国に対し、同国がその意見又はもしあれば勧告に応じて講じたいかなる措置に関してもさらに情報を提出するよう促すことができるが、委員会が適切と判断する場合、かかる情報は、条約第43条に基づき当該国が後に作成する報告書に含めることができる。
調査手順

第51条
1.委員会は、締約国による条約に定める権利の重大又は組織的な侵害を示唆する信頼できる情報を受理した場合には、当該締約国に対し、情報の検討における協力及び、この目的のために関係情報に関する見解の提出を促す。

2.委員会は、当該締約国から提出された見解及びその他の信頼できる情報があれば、これらを考慮した上で、調査を実施し、委員会に緊急の報告を行うよう1人又は複数の委員を指名することができる。十分な根拠及び当該締約国の同意がある場合、調査に同国領域への訪問を含めることができる。

3.かかる調査の結果を検討した上で、委員会は、何らかの註釈及び勧告があればこれを添えて、これらの調査結果を当該締約国に送付する。

4.当該締約国は、委員会が送付した調査結果、註釈及び勧告の受理から6箇月以内に、その見解を委員会に提出する。

5.かかる調査は極秘に行うものとし、手続きのあらゆる段階において、当該締約国の協力が求められる。
第52条
1.委員会は、関係締約国に対し、条約第51条に基づき行われた調査を受けて講じられたいかなる措置も、条約第43条に基づく報告書に含めるよう促すことができる。

2.委員会は、必要に応じ、前項にある6箇月の期間の満了後も、当該締約国に対し、かかる調査に応えて講じられた措置について通知するよう促すことができる。
第53条
1.締約国は、この条約の署名又は批准、若しくはこれへの加入の際に、第51条に定める委員会の権限を認めない旨を宣言することができる。

2.本条1項に基づく宣言を行った締約国は、事務総長に対する通告により、いつでもこの宣言を撤回することができる。
第54条
締約国は、その管轄下にある者が、この条約に従って委員会へ通報を行った結果として、虐待あるいは脅迫を受けないよう、あらゆる適切な措置を講ずる。
第55条
委員会は、条約第44条に基づくその年次報告の中に、この条約に基づくその活動の概要を含める。
第6部

最終規定

第56条
国際連合事務総長は、この条約の寄託者として指名される。
第57条
1.この条約は、すべての国による署名のために開放しておく。この条約は批准されなければならない。

2.この条約はすべての国による加入のために開放しておく。

3.批准書または加入書は国際連合事務総長に寄託する。
第58条
1.この条約は、20番目の批准書または加入書が寄託された日から3ヶ月を経過した翌月一日から効力を生じる。

2.条約が効力を生じた後に批准または加入する国については、当該の批准書または加入書が寄託された日から3ヶ月を経過した翌月1日から効力を生じる。
第59条
1.この条約が効力を発してから五年の期間が経過した後は、いずれの締約国も、国際連合事務総長にあてた書面の通告により、いつでもこの条約の改正を求めることができる。事務総長は、この改正提案をすべての締約国に通知し、締約国による改正案の審議及び投票のための会議開催の賛否を通知するよう求めるものとする。事務総長からの通知後4ヶ月以内に締約国の3分の1以上が会議開催に賛成する場合には、事務総長は国際連合の主催のもとに会議を招集する。会議において、出席しかつ投票する締約国の多数決によって採択された改正案は、承認のために国際連合総会に提出される。

2.条約の改正は、国際連合総会で承認され、かつ、締約国のうち3分の2以上の国で、各々の憲法の定めるところにより受諾されたときに効力を生じる。

3.改正が効力を生じたときには、受諾した締約国はそれに拘束される。受諾していない締約国は、この条約及びそれ以前に行われた改正で自国が受諾しているものに拘束される。
第60条
1.国際連合事務総長は、署名、批准、又は加入の際に行われた留保の書面を受領し、かつ、すべての国に送付する。

2.この条約の趣旨及び目的と両立しない留保は、認められない。

3.留保は、国際連合事務総長にあてた通告によりいつでも撤回することができるものとし、同事務総長は、その撤回をすべての国に通報する。このようにして通報された通告は、受領された日に効力を生ずる。
第61条
1.この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争で交渉によって解決されないものは、いずれかの紛争当事国の要請により、仲裁に付される。仲裁の要請の日から六箇月以内に仲裁の組織について紛争当事国が合意に達しない場合には、いずれの紛争当事国も、国際司法裁判所規程に従って国際司法裁判所に紛争を付託することができる。

2.各締約国は、この条約の署名若しくは批准又はこの条約への加入の際に、1の規定に拘束されない旨を宣言することができる。他の締約国は、そのような宣言を付した締約国との関係において1の規定に拘束されない。

3. 2の規定に基づいて宣言を付した締約国は、国際連合事務総長にあてた通告により、いつでもその留保を撤回することができる。
第62条
1.この条約は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合事務総長に寄託する。

2.国際連合事務総長は、この条約の認証謄本をすべての国に送付する。

原文


作成日 2003年10月9日
更新日 2003年12月4日
財団法人 全日本聾唖連盟

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