※全日本聾唖連盟による仮訳
「障害者の権利及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約」に向けての
地域ワークショップにおいて採択された、条約に関する全般的な提案
2003年10月17日、バンコクにおいて採択
- 本条約は、既存の国連人権条約及び規範に表記される人権を踏まえたものとする。
- 人権は普遍的であり、不可分であり、相互に関連があり、相互依存的であり、本条約の開発の有無に関わらず、障害を持つ人々も完全に享有すべきである。本条約の極めて重要な役割は、障害者が必要とする特別な人権保護措置の適用を明確にすることにある。
- 本条約は、障害者が全ての人権を最高の水準で享有できることを目指すべきである。
- 政府は、本条約の根幹的な部分に関して留保する権利を持たない。そのような留保は、本条約の目的に相いれない。条約の根幹的部分を明確にしなければならない。
- 実施のために詳細のガイドラインを開発し、本条約が要求する義務を詳しく説明する。
- 締約国が障害者の機会と結果の均等を保障するには、特別な法的および行政措置を講じる義務があることを強調する必要がある。条約に表記される義務を達成するために必要となる可能性のある様々な特別措置を明確にする必要がある。これらの特別措置は差別的とはみなさない。
- 本条約には、「障害」の定義を明記する。この定義は、広く、包括的で、柔軟な定義であり、またこの言葉の理解の変遷に対応できなければならない。
- 本条約には、「アクセシビリティー」の定義を明記する。この定義は、総合的なものであり、「女性と障害に関するバンコク・フォーラム」が提案する定義に基づくものであり、マニラ宣言、6月のバンコク提案、ニューヨークにおけるブラウンの発表などの理念も取り入れるべきである。
- 締約国は、障害を持つ女性や少女が多重の差別を受ける可能性があり、女性や少女も男性と同等で平等な結果が得られるためには集中した、ジェンダーに特化する特別措置と保護が必要であることを認めるべきである。
- 締約国は、次の人々が多重の差別を受ける可能性があることを認め、これらの人々が人権と基本的自由を、他のものと平等の結果が得られるようなかたちで享有できる事を保障するために、集中した、該当する人々に特化した特別措置と保護が必要であることを認めるべきである:
- 重度障害者及び重複障害者
- 精神障害者
- 知的障害者
- 先住民族の障害者
- 少数民族の障害者
- (本条約の)前文は、障害者の能力及び地域全般の経済的、社会的、文化的、市民的、政治的福利と多様性に対する障害者の実質的な貢献について述べるべきである。
- 前文は、各種政策及び計画の開発基準に障害者を含むことの重要性と、この障害者のインクルージョンがもたらす経済的、財政的メリットについて述べるべきである。
- 障害を持つ人は、障害を持たない人と同等の権利を、その国の一般的なレベルで享有できるべきである。
- 本条約の実施について、国際協力の意義が認識された。政府が海外援助先を決定する際の重要な決定基準に、障害者に対する影響、障害に関する行動計画などが重視されるべきである。
- 締約国は、障害を持つ人々及びこれらの人々の家族、支援者などが、代表権の確保と自助活動を行うために、独立した組織を作ることを認めなければならない。締約国がこのような組織を認め、経済的支援をすることこそ、障害を持つ人々の市民的、政治的権利の実現の前提条件となる。
- 本条約は、全ての障害に関係する主要な目標の一つである「自立した地域生活の達成」について前文で触れ、また、本文において「自立した地域生活」を詳細に定義すべきである。
- 条約の定義の部分において、「インフォームド・コンセント」の適切な定義を表記すべきである。
- 本条約の適用に関する報告及びモニタリングは定期的に、また適時に行われるべきである。障害者及びこれらの人々の組織の重要な役割を認め、報告を作成する作業には障害者からの情報を取り入れる必要がある。
- 締約国は、本条約の遵守をモニタリング(監視)し、促進し、執行するための制度を設立する。この制度には、(1993年12月20日の国連総会決議48/134)の「パリ原則」に則った、独立した国内制度が含まれる。この国内制度は、障害者を代表する人々や組織との協議によって設立される。
- モニタリングと報告のために使用される統計的データには、数量的データと質に関するデータの双方がなければならない。また、データの収集は科学的な正確さを持って行われ、国際的な比較が可能な方法を用いる必要がある。
- 政府間組織や団体は、本条約が表記する障害者の人権を認め、尊重すべきである。
- グループ討議では、個人通報、調査などの手順・手法に関して、合意に達せなかった。しかし、大多数の参加者は、これらに関する条項を条約に盛り込むべきであるという意見であった。したがって、この問題を今後の政府間会合(2003年11月4~7日に北京で開催される政府間会合を含む)及びアドホック委員会に委託されたワーキング・グループなどに提起することとする。
原文: http://www.worldenable.net/bangkok2003a/recommendations.htm
更新日 2003年10月27日
財団法人 全日本聾唖連盟