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※全日本聾唖連盟による仮訳

「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する総合的かつ包括的な国際条約」
に関するアドホック特別委員会のためのワーキング・グループ(作業委員会)
2004年1月5〜16日 ニューヨーク

「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する
総合的かつ包括的な国際条約」に対して議長が提案する項目

2003年12月

国連HP掲載の原文最新版


序文

1.添付の「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する総合的かつ包括的な国際条約に提案する項目の草案」は、障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する総合的かつ包括的な国際条約のためのアドホック特別委員会の議長により、作業部会〔ワーキング・グループ〕に提出されたものである。この「草案」は、アドホック特別委員会に提出する条約案を起草する際、作業部会の討議に寄与する目的で作成された。

2.この「草案」はいくつかの文書に基づいて作成された。とりわけ新条約の構成と内容を検討した地域会議からの意見を反映している。この「草案」の内容は実質的な事項に限定され、あえて前文、実施又はモニタリングに関する項目、条約の一般的な項目を書き記していない。この「草案」は、条約に取り入れるべき項目を全て書き尽くすことを目的としていない。
****
「障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する
総合的かつ包括的な国際条約」に対して議長が提案する項目

2003年12月


目次


第1部
1. 条約の目的及び基本的な原則
2. 定義
3. 基本的な人権と自由
4. 締約国の一般的な義務
5. 救済措置と関連した義務
6. 平等と非差別
7. 権利享有における男女の平等
8. 障害に対する意識(態度)を変える
9. 農村部もしくは遠隔地、島嶼、過疎地に暮らす人々の権利
10. 重度の障害を持つ人々の権利
第2部
11. 法の下に人間として認められる権利
12. 生命の権利
13. 拷問又は残忍な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは刑罰を受けない権利
14. 個人の自由と安全についての権利
15. 意見及び表現の自由、及び情報コミュニケーションへのアクセスの権利
16. 私生活及び家庭が尊重され、家族が保護される権利、婚姻に関する権利
17. 地域社会の一員として地域内に暮らす権利
18. 障害を有する児童の権利
19. 政治的、公的活動に参加する権利
20. 財産を所有し管理する権利
第3部
21. アクセシビリティ
22. 移動(mobility)に対する権利
23. 健康およびリハビリテーションへの権利
24. 教育への権利
25. 労働の権利
26. 社会保障および相当な生活水準に関する権利
27. 文化的な生活、レクリエーション、及びレジャーに参加する権利
28. ユニバーサル/インクルーシブ・デザインへの権利
第4部
29. 各国内の実施体制
*****

この条約の締約国は、

次の通り同意する:
第1部

全般

第1条

条約の目的及び基本的な原則
1.締約国は、次の原則に則って、この条約に定められる、又は再確認される基本的な権利と自由を、障害者がその障害の発生、性質、重度、原因に関わらず享有できることを保障することがこの条約の目的であることを宣言する:

(a) 充実し、自立した生活を可能にする障害者の自律と自己決定の原則

(b) 社会生活の全ての側面において、平等の市民及び参加者として障害者の完全参加の原則

(c) 他の人との違っている権利を認める、多様性容認の原則

(d) 女性、男性、女児、男児の平等の原則。
第2条

定義
1.この条約の適用上:

「アクセシビリティ」とは、障害者を含む全ての人が物やサービスを容易に入手あるいは利用できる状態を意味する。この状態は、物理的環境、公共交通機関や情報通信技術及び支援機器を含む情報とコミュニケーション、社会的制度及びあらゆる決定と政策策定プロセスへのアクセスを促進するためのインクルーシブ及びユニバーサルなデザインや適応、及び法的、計画的手段などにより達成できる。

「アソシエート」とは障害を持つ人の家族、助力者、介助者、親戚、擁護者を含む。

「コミュニケーション」方法には、音声によるコミュニケーション、手話によるコミュニケーション、指点字、点字、拡大文字、オーディオ、アクセシブル・マルチメディア、人による朗読支援、アクセシブルな情報通信技術を含むその他補完的あるいは代替的コミュニケーション方法が含まれる。

「障害」とは、身体的、感覚的、精神的、発達、学習、神経、その他の機能障害(impairment)を有する人(体内に機能不全もしくは疾患の原因となる生物もしくは媒介物が存在する人も含む)が直面する身体的、社会的、意識的、文化的バリアが原因で、他の者と平等な条件で地域社会に参加する機会が奪われ、もしくは制限されることを言う。

「障害を理由にした差別」 とは:
(1) 障害を理由にしたあらゆる区別、排除、または制限であり、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的、又はその他の分野において、障害者がその人権及び基本的自由を認識し、享有し、または行使することを害しまたは無効にする効果または目的を有するものをいう。

(2) 明確に障害を理由にしていなくても、下記のような行動、基準、慣行、政策、規則、取り決めなども障害を理由にした差別と言う。
(a) それが政治的、経済的、文化的、市民的、その他いかなる分野においても、障害者がその人権及び基本的自由を認識し、享有し、または行使することを害しまたは無効にする効果または目的を有する場合。

(b) 客観的に判断して、それが正当な目的を達成するための常識的且つ適切な手段であると認められない場合。
(3) 適切な配慮の欠如

(4) 障害を持つ人に関係する人(アソシエート)が、関わる障害あるいはその関わりを理由に望ましくない扱いを受けることを意味する。
更に障害には今後障害となり得る疑わしい状態、推定される状態、推測される状態、そのような可能性のある状態、認知できる障害、過去の障害あるいは過去の障害の影響、障害の特徴などが含まれる。
「言語」には音声言語と手話が含まれる。

「適切な配慮」とは、障害を持つ人が基本的人権と自由を享有できるようにするため、必要かつ適切な措置をとることを意味する。

2.障害による差別には、複数の障害を理由に受ける差別、障害の種類や重度による差別、あるいは人種、民族、皮膚の色、性、言語、宗教、政治意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生、社会的地位、性的特性、障害などのうち一つ、あるいは複数の特性と障害を合わせた理由に夜差別も含まれる。

3.障害者が、その人権と基本的自由を平等の原則に基づいて享有し、地域社会の生活に完全に参加できることを保障するための措置(例えば金銭的支援あるいは補助機器や技術支援の提供等)は均等な機会を保障する上で必要な措置であり、差別と解してはならない。

4.締約国が障害者の事実上の平等を促進することを目的とする特別な暫定的な措置をとることは、この条約に定義する差別と解してはならない。ただし、その結果としていかなる意味においても不平等な又は別個の基準を維持し続けることとなってはならず、これらの措置は、機会及び待遇の平等の目的が達成されたときに廃止されなければならない。
第3条

基本的な人権と自由
1.この条約の締約国は、障害を持つ人を含む、全ての人が生まれながらに自由であり、尊厳と権利において平等であり、人権と基本的な自由を完全且つ平等に享受できることを確認する。これらの人権と自由には、「世界人権宣言」において掲げられ、国際連合の主要な人権宣言において認められる権利と自由が含まれる。

2.本条約の実施において、段落1の権利の範囲の解釈について、いかなる場合も本条約における権利の範囲の解釈が他の文書の範囲より狭いことはない。
第4条

締約国の一般的な義務
1.この条約の締約国は、
(a) 障害を理由とするあらゆる形態の不平等と差別を非難する。

(b) その領域内にあり、且つ、その管轄の下にあるすべての個人に対し、この規約において認められる権利を尊重し保障し、確保することを約束する。
2.この条約の締約国は、障害を理由とする差別を排除し、障害者の全ての人権と基本的自由の完全享有を促進することに同意する。そのために次のことについて努力する:
(a) この条約において認められる権利を実現するために必要な立法措置、行政措置、  その他の措置を取り、これらの権利と矛盾する習慣や慣行を排除する。

(b) 障害を持つ人々に対する平等と非差別の原則が自国の憲法又はその他適切な法律に取り入れられていない場合は、これらを取り入れ、立法措置やその他適切な方法により、これらの原則の実践的達成を保障する。

(c) この条約において認められる権利に矛盾する行動や慣行を控え、公的資格を有する人や機関はこの条約において認められる権利に即して行動することを保障する。

(d) 人、組織、民間団体などが障害を理由に行う差別を無くすために、あらゆる適切な措置をとる。
3.この条約の締約国は、この規約の第三部において認められる経済的、社会的、文化的権利のうち、直ちに実現可能な権利の側面は直ちに実現する。(これらの権利の享有に際して非差別の義務を含むが、それのみに限定するのではない)。又、これらの権利の他の側面は、自国における利用可能な手段を最大限に用いり、特に立法措置など、全ての適当な方法により、その完全な実現を発展的に達成する事を目指す。
第5条

救済措置と関連した義務
1.この条約の締約国は次のことを行う:
(a) この条約において認められる権利もしくは自由を侵害された人もしくは集団は効果的な救済措置を受けることを保障する。その侵害を行った人又は集団が公的資格で行動する場合も、個人の資格で行動する場合も等しく保障をする。

(b) 救済措置を求めるものの権利が権限のある司法上、行政上若しくは立法上の機関または国の法制で定める他の権限のある機関によって決定されることを確保すること。これには差別の結果として受けた被害に対して公正かつ十分な賠償又は満足の行く弁償をこの決裁機関に求める権利が含まれる。

(c) 救済措置が与えられる場合に権限のある機関によって執行されることを確保すること。
2.締約国は、障害者が効果的な救済措置を得られるようにするには、無料の法的支援の提供及び、手順や証言などを規定する既存の法律や慣行の修正又は柔軟な適用が必要となる場合があることを認める。
第6条

平等と非差別
全ての者は法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このために、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人権、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、出生、障害、その他の地位などのいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護を全ての者に保障する。
第7条

権利享有における男女の平等
締約国は、障害を持つ女性や少女は多重の(multiple)差別を受ける可能性があることを認識し、女性や少女にも男性と同等の人権と基本的自由の享有を確保するには、女性の問題に特化した、集中的な措置(保護措置を含む)が必要であることを認める。
第8条

障害に対する意識(態度)を変える
締約国は、障害の性質及び障害を持つ人々に対する定型化された偏見を取り除き、地域社会を啓発するため、特に指導、教育、文化、情報、民間社会、メディアなどの分野において、即時的且つ効果的な措置をとる。
第9条

農村部もしくは遠隔地、島嶼、過疎地に暮らす人々の権利
締約国は、農村部もしくは遠隔地、島嶼、過疎地に暮らす障害者が直面する特別の問題を考慮し、これらの人々に対するこの条約の適用を保障するために必要なすべての適切な措置をとる。
第10条

重度の障害を持つ人々の権利
1.締約国は、重度の障害を持つ人々が特にその人権と基本的自由を奪われやすい立場にあり、特別なケア及び支援サービスを要することを認める。

2.締約国は、これらの人々が必要とする特別なケアとサービスを受けられ、虐待や放置から守られることを保障するためあらゆる必要な措置をとる。
第2部

第11条

法の下に人間として認められる権利
1.全ての人は、いかなる場においても法の下に、全ての法的能力を有する人間として認められる権利を享有する。障害や機能不全を理由にこの権利が制約されたり、限定されることはない。

2.自ら権利の主張、提示された情報の理解、自らの決定を表明あるいは伝達することなどが困難である障害者は、自らの判断を施行する目的のために、権利擁護支援及びその他の適切な配慮を受ける権利を有する。
第12条

生命の権利
全ての人間は、生命と生存に対する固有の権利を有する。この権利は法律によって保護される。何人も、理由なくその生命を奪われない。
第13条

拷問又は残忍な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは
刑罰を受けない権利
1.何人も、拷問又は残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意無しに医学的又は科学的実験(または診療行為)を受けない。

2.全ての人は、実際の障害もしくはあると想定される障害を矯正、改善、あるいは軽減する目的の医学的もしくはその他の介入を無理やり、強制的に受けさせられることを拒否する権利を有する。

3.締約国は全ての適切な法的、行政、社会的、教育的措置をとり、障害を有する者、特に障害を有する女性や子どもを、あらゆる形態の身体的もしくは精神的な暴力、傷害、もしくは虐待、放置もしくは怠慢、性的虐待を含む不適当な扱い又は搾取から保護する。
第14条

個人の自由と安全についての権利
1.全ての人は、個人の自由と安全についての権利を有する。障害を持つ人々は、その人が実際に有する障害、または有すると見られる障害を理由に本人の同意なく拘束、投獄、あるいは監禁されてはならない。

2.  (a) 拘束あるいは監禁された障害者は、独立した公正な法廷において、このように自由を奪われたことの適法性と正当性について反論する権利を有する。
(b) 次の場合はこの拘束もしくは監禁に関する定期的な審査を求める権利が含まれる。(拘束もしくは監禁が継続的に正当であるかに関する審査を含む。)
(i) 拘束又は監禁の期間が法律又は裁判により明確にされていない場合。

(ii) 拘束又は監禁がその人の健康又は健康に関連する状態を理由にしている場合。
3.全ての障害者は、反対の主張が証明されない限り、法律の前に全ての法的能力を有する人として認められる権利を有する。

4.全ての障害者は、その障害の性質や重度に関わらず、裁判所及び裁決機関の前に平等とし、障害を理由にした一切の差別なく全ての訴訟手続きを受ける権利を有する。

5.犯罪の容疑者あるいは被告人となった、または有罪判決を受けた障害者は全ての国内、国際基準に則った正当な法の手続きを受ける権利、本条約に認められるアクセシビリティに関する全ての権利、及び刑に服す間に支援的及びリハビリテーション・サービスを受ける権利を享有する。
第15条

意見及び表現の自由、及び情報コミュニケーションへのアクセスの権利
1.障害者の表現の自由には、自らがもっとも適当と考える言語又はその他のコミュニケーション手段(点字、その他のコミュニケーション形態を含む)を使用する権利が含まれ、このコミュニケーションのモードが公的に認められ、この代替のコミュニケーション・モードにより、政府、公的機関、その他重要なサービスを提供する人や機関からの情報やサービスを受け取る権利も含まれる。

2.情報を受ける権利には、適時に、追加の費用を伴うことなく、全ての公知の情報が障害者(特に盲もしくは弱視の人、知的障害、認知発達障害、学習障害の人)にもアクセシブルな形態で提供される権利が含まれる。すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
第16条

私生活及び家庭が尊重され、家族が保護される権利、婚姻に関する権利
1.障害者は性への権利を有し、他の者と親密な関係を築く権利を有する。この権利は、全ての婚姻をすることができる年齢の障害を持つ男女が婚姻をし、且つ家族を形成る権利を含む。

2.障害を持つ人々は自由に、自己の責任において子どもの数及び出産の間隔を決める平等の権利を有する。又、この権利を行使するために必要な情報、性と生殖に関する教育、この権利を行使する方法などへのアクセスも確保されなければならない。

3.者は、児童の養護、保護、監護、養子縁組及びこれらに順ずる制度を定める国の法律において平等の権利を有する。

4.障害を持つ親(知的障害、精神障害を持つ親を含む)は、自分の子どもを家族の単位の中で養育するために必要な継続的且つ十分な社会的支援と援助を受ける権利を有する。締約国は、親の持つ障害を直接的もしくは間接的な理由としてその子どもが親から引き離されないため立法措置、行政措置その他全ての適当な方法をとる。
第17条

地域社会の一員として地域内に暮らす権利
1.障害を持つ人々は自らの生活形式を決定する平等の権利を有する。この権利には、自分の家庭を築く権利、家族とともに暮らす権利、自らの決定を実施するために費用な経済的及びその他の支援を受ける権利が含まれる。この権利は、施設での生活を選ばない権利を含む。

2.国は全ての障害者が地域社会の一員として地域内に暮らす権利を認め、次のことを保障するために必要な全ての措置を行う:
(a) 障害を持ついかなる人も施設に収容されない保障。

(b) 障害者の地域生活を効果的に支援する様々な在宅(in-home, residential)及び地域支援サービスを受けられる保障。

(c) 一般的な地域サービスが地域内に暮らす障害者にも利用可能であり、そのニーズに適応していることの保障。
第18条

障害を有する児童の権利
1.約国は、障害を有する児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める。

2.締約国は障害を有する児童が早期発見、早期介入、特殊ケアへの権利を有することを認めるとし、利用可能な手段の下で、申し込みに応じた、且つ、当該児童の状況及び父母又は当該児童を養護している他の者の事情に適した援助を、これを受ける資格を有する児童及びこのような児童の養護について責任を有するものに与えることを奨励、かつ確保する。

3.を有する児童の父母又は家族は、適切な情報、照会、カウンセリングなどを受ける権利を有する。これらの情報は、家族が児童自身について、また児童の充実した、社会へ統合された生活を送る潜在能力と権利について、肯定的な考えを与える方法で提供されるべきである。
第19条

政治的、公的活動に参加する権利
締約国は、いかなる差別もなく、性による差別もなく障害者の政治的権利を認め、障害者の政治的活動への完全参加を保障するための措置をとる。これらの措置には、特に次が含まれる:

(a) 障害者の投票する権利ならびに選挙される資格を保障するため、選挙制度に障害者の様々なニーズに合わせた、適切な、アクセシブルな、理解しやすい形態の情報,特殊且つ必要な機器類及び技術を導入する。

(b) 政党及び民間団体の活動に参加し、公務に携わる平等の権利を保障する。

(c) 全ての政策の策定プロセス、特に障害者に関係する課題に関する政策には、障害者および障害者組織の参加を保障する。
第20条

財産を所有し管理する権利
1.全ての障害者は、とりわけ障害を持つ女性は、単独で又は他の者と共同して財産を所有する権利を有する。

2.いかなる障害者も、ほしいままに自己の財産を奪われることはない。

3.障害者は銀行貸付、その他の形態の金融上の信用を受け、自己の金融上の事柄を自ら決定し、事業を行う権利を有する。知的障害を持つ人が、この権利を行使できない場合、その人の法的後見人がその人に代わり、その人の利益のためにその権利を行使できる。

4.障害者は、障害を持たない人と平等の条件で,また男女平等に,財産を相続する権利を有する。
第3部

第21条

アクセシビリティ
1.締約国は、障害者が物理的環境、公共交通機関、情報通信支援機器を含む情報とコミュニケーションにアクセスする権利を有することを認め、詳細な国内基準を設けるなどを含む発展的な方法で、生活の全ての場面において障害者の自由、自立、及び完全参加を保障する。特に次におけるアクセスを保障する:
(a) 公共の建物、道路、及びその他公共の目的に使用される施設(機関)

(b) 公共の交通機関とサービス

(c) 公共の住居と施設、もしくは公的資金で新築または改修された建物。民間企業も、住居もしくは施設を新築もしくは改修する際には、アクセシビリティを考慮することを奨励する。

(d) 公共及び民間のサービス、とりわけ健康と教育に関するサービス

(e) 雇用及び職場

(f) 情報通信、電子銀行サービス、報道・マスコミなどを含む情報と通信サービス。
2.締約国は障害者を生活の全ての面において支援するための新技術の研究、開発、促進を奨励すべきである。
第22条

移動(mobility)に対する権利
この条約の締約国は全ての障害者の行動の権利を認め、障害者に対して次のことを保障するためすべての必要な措置をとる:
(a) 障害者の可能な限りの自立を支援するため、高品質な移動支援用具、生活支援用具・機器類の入手を保障する。

(b) 公的助成金、その他障害に掛かる経費を軽減する措置を用いて、障害者が移動支援用具、生活支援機器・用具を低価格もしくは無料で容易に入手できることを保障する。

(c) 障害者に可能な限り自立した移動を可能にする物理的環境の設計・適応を保障する。
第23条

健康およびリハビリテーションへの権利
1.全ての障害者は、到達可能な最高水準の身体的・心理社会的・精神的健康を享受する権利を有する。これは、保健およびリハビリテーションのサービスおよびケアが、全ての障害者に提供可能な状態であること、アクセシブルであること、低価格であること、そして受けるにふさわしい形である必要性を意味する。障害者は社会の他の構成員と同レベルの保健・医療ケアへのアクセスを持ち、さらに障害を理由に必要となる他のあらゆるサービスへのアクセスを持つべきである。

2.障害者とその組織は、障害者が利用する保健やリハビリテーションのサービスに関する決定へ参加する権利を有する。これには、法律や政策の策定、さらに保健やリハビリテーションのサービスの計画立案、提供、評価などにおける先導的な役割も含まれる。
第24条

教育への権利
1.教育への権利は全ての障害者が有する。教育は、人間としての潜在能力の完全な育成と尊厳の意識を指向し、人権及び基本的自由の尊重を強化するものでなければならない。

2.教育への権利には、自らの地域社会内でインクルーシブ教育を受ける障害児の権利(幼年早期介入へのアクセス、及び一般学校制度へ参加するための就学前準備へのアクセスを含む)と、この制度の中で障害を持つ生徒の完全参加を保障するためのアクセシブルなカリキュラム、媒体や技術、学習計画、建築環境など、必要とされるあらゆるサポートを受ける権利が含まれるべきである。

3.一般学校制度が障害者のニーズをまだ適切に満たさない場合、特別および代替的な学習形式を提供することもできる。ただしこれらは、生徒が一般学校制度で教育を受けられるように準備することを目的とし、一般学校制度と同等の水準と目標を反映する質の教育でなければならない。

4.特定の補助や代替的なコミュニケーション方式が必要な場合、これらは一般学校内もしくは特別教育学校で提供しなければならない。

5.聴覚に障害のある子どもは手話による教育を受ける権利を有する。各締約国は法的、行政的、政治的措置を講じて、手話に堪能なろう又は健聴の教師の採用を保障し、手話による質の高い教育を提供しなければならない。

6.障害者は、他者との平等に基づいて高等教育、職業訓練、成人教育への対等なアクセスを持つ権利を有し、これらへの有効なアクセスを保障するのに必要な経済的もしくは代替的な形の支援を受ける権利も有する。
第25条

労働の権利
障害者は、生産的なリソースやサービスへのアクセスを持つ権利、及び自由に選択または承諾した労働によって生計を立てる機会を得る権利を含めた労働の権利を有する。障害を持たない労働者と対等な機会と待遇の促進を目的として、この権利には職場へのアクセスを持つ権利、そして募集と雇用の過程および職場全面における適切な配慮への権利が含まれる。
第26条

社会保障および相当な生活水準に関する権利
1.締約国は、社会保障、社会保険、社会事業、及び相当な生活の質についての全ての障害者の権利を認める。

2.締約国は、自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする、相当な生活水準についての、並びに生活条件の不断の改善についての障害者を含む全ての者の権利を認める。

3.障害者の場合、この権利には、必要となるサービス、補助具、その他障害に関連して必要な介助・援助の全てが含まれるものとする。

4.締約国は、貧困な環境のなかで生活する重度障害者および重複障害者の家族が、障害関連費用(レスパイト・ケアを含む)を負担するために国から補助を受ける権利を認める。補助する際、家族発展の意欲を阻害しないような形で提供すべきである。
第27条

文化的な生活、レクリエーション、及びレジャーに参加する権利
1.締約国は、全ての障害者が文化的な生活に参加する権利を認め、以下を保障するために必要なあらゆる措置をとらなければならない:
(a) 障害者が自己のためだけでなくそのコミュニティを豊かにするために、自らの創造的、芸術的及び知的な潜在能力を十分に活かす機会を有すること。

(b) 電子テキスト、点字、音声テープを含む様々なアクセシブルな形式、及びテレビ番組、映画、演劇などへの字幕の付加などを通して、文書情報へのアクセスを有すること。

(c) 劇場、美術館、映画館、図書館などの文化的な公演やサービスが行われる場所、およびホスピタリティ産業へのアクセスを有すること。
2.障害者による文化作品へのアクセスにおいて、知的所有権を保護する法律が不合理な、または差別的なバリアを築かないよう、締約国は必要とされるあらゆる手段を講じなければならない。

3.ろう者は、その固有な文化的・言語的アイデンティティに対する認知と支持を受ける権利を有する。

4.締約国は全ての障害者がスポーツ活動を含むレジャー活動に参加する権利を認め、以下を確保するために必要なあらゆる措置をとらなければならない:
(a) スポーツ活動の開催ならびにスポーツ活動への参加において均等な機会を持ち、他の参加者と同等に高い質の指導とトレーシングを受けられること。

(b) スポーツ及び他のレクリエーション活動を行う場所への有効なアクセスを有すること。

(c) スポーツやレジャー活動の主催者から提供されるサービスにアクセスを持つこと。
第28条

ユニバーサル/インクルーシブ・デザインへの権利
この条約の締約国は、それぞれの障害者の特定のニーズを満たすことのできるユニバーサル/インクルーシブ・デザインの製品、サービス、機材、施設を、全ての障害者が最小限の適応と費用で得られる権利を認める。
第4部

締約国のその他の義務

第29条

各国内の実施体制
1.締約国はこの条約の遵守を監視ならびに促進するために国内レベルの体制を整えなければならない。これには以下のような独立した国機レベルの関が含まれるべきである:
(a) パリ原則を遵守して活動する。(国連総会決議48/134(1993年12月20日)「人権の促進及び擁護のための国内機構の地位に関する原則」:パリ原則)

(b) 障害者および障害者を代表する組織との協議の上で設立される。

(c) 全国機関の政策やプロセスの形成において、障害者の継続的な関わりを促進するような構造を有する。
2.とりわけ、この条約の実施に関わる諸事項の責任が政府内の特定の担当部署に割り当てられることを、締約国は確保しなければならない。

3.全ての新しい法律、政策、プログラムなどの提案が障害者の立場にどのような影響を与えるか見極めるため、それらの開発段階において評価を行う制度を締約国は採用するべきである。
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作成日 2003年12月18日
財団法人 全日本聾唖連盟

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