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ニュージーランド政府に手話の法的認知の動き

「ニュージーランド朗報」
ボクトリア・マニング

WFDニュース2003年7月号(P.39)掲載記事

(全日本ろうあ連盟 仮訳)


「7年間の苦闘の結果、ついにニュージーランドでもリレーサービスが実現した。
ニュージーランド手話の認識もまた確立しつつある。」

 ニュージーランドのろう者は、7年に渡る戦いの後、電話サービスのアクセスを受けることができるようになります。ろう者であるビクトリア・マニング氏とキム・ロビンソン氏は、1995年と1997年に人権委員会と組み、当国の最大の規模を持ち主要な電話サービスを提供する電話会社、「テレコムニュージーランド」に、各々に不満を投げかけました。2002年5月、政府が現法律のもとにリレーサービスを委任し(電気通信法、2001年)、彼らの勝利が告げられました。

 1993年に制定されたニュージーランド人権法では、障害者を理由とする差別を一切禁止しています。「私達の言う電話へのアクセスというのは、ろう者の人権を支持するための、この法律の能力を評価する事だった」、とマニング氏は語っています。「ろう者の人権のために新しい評価基準を確立しようとしている最中、想像を絶するほどのハードルがありました。公共の理解の少なさ、官僚的な妨害、そして政治的風土などが挙げられます。最初の数年は、あきらめてしまいそうになる程の我慢ならない抑圧がありました。」

 この問題に関し、メディアは「デイビッド対ゴリアスの戦いだ」と報じていました。1998年、この問題の調査から3年経った年、なんとニュージーランド人権委員会は、この問題を取り下げることを決意したのです。マニング氏は、この判決をくつがえすために死力を尽くそうと立ち上がり、委員会の決断の理由を綴った長い評論文を提出しました。彼女の評論提出は受け入れられ、委員会はこの問題に関し、さらに深い分析をするため、更なる調査を取り入れることにしました。

 2002年初期に人権委員会は、テレコムが人権法に違反しているという最終判決を発表しました。その判決に伴い政府は、電気通信産業会社は電気通信法令のもと、委任されているリレーサービスによりろう者の人権の義務を遂行することが必要だと発表したのでした。

 このみごとな勝利をたたえ、マニング氏とロビンソン氏は議会までマーチを組み、行進をしました。障害問題大臣及び通信大臣は、民衆に対し、大きな喜びを表し、しかも手話でそれを表現しようとし、民衆から大きな拍手が湧き起こったのです。障害問題大臣はまた手話通訳者を用意し、ニュージーランド史上、初めて議会で手話通訳者がついたのです。

 アメリカ合衆国の留学経験を持つマニング氏。様々な障害にも関わらず電話のアクセスの闘いを続けてこれたのは何故か、と尋ねられた時、彼女は次のように答えています。「アメリカで電話のアクセスを実際に経験し、この闘いは私達の人権の基本となるものだと言うこと知っていたからです。それは真実であり、一度も疑ったことはありませんでした。それに、目標の達成は私にとっては常に確かなものでした。数多くの研究を重ね、何年間にもわたり頑張ってきました。そして身近にいる仲間達が私達に活き活きとした励ましをくれたのです。」と。また彼女は、「私は頑固で粘り強いことで有名ですから。」と付け加えました。

 2002年5月の勝利以来、政府はリレーサービスの契約の準備を進め、2003年9月頃には、入札を行う予定です。この期待の中、オーストラリアのリレーサービスのプロバイダーであるオーストラリア・コミュニケーション・エクスチェンジはニュージーランドに会社を設立しました。コミュニケーションNZというその会社は、マニング氏によって経営され、ニュージーランドの通信連絡の指示を取り締まる予定です。

 ニュージーランド政府の、リレーサービスに関するこの決断は、独断ではありませんでした。最後の数年にわたり、ニュージーランドでは、障害者の社会的運動が大きな発達をみせていたのです。1999年、政府は障害者問題に関する大臣を始めて任命しました。2001年になると、ニュージーランド社会の全地域障害者の社会的参加の向上に関する、政府の公約をまとめた障害者戦略が発表されました。そして2002年、この障害者戦略の実行を指揮する障害者問題の事務局が誕生しました。

 ろう者やその他の障害をもつ人々がもつ問題に関し政府が取った手段の重要な増加は、彼らにとって、ニュージーランドで更なる社会的平等を増やす、というきっかけの始まりだと言えます。その証拠として、政府が最近取り決めた、ニュージーランド手話(NZSL)の社会的意識の向上を目的とした、NZSLの調印の進行が挙げられます。その法律の進展には、約2年かかるでしょう。マニング氏は言います。「まずのスタートとして、政府が動き出してくれたのは本当に素晴らしいニュースです。ニュージーランドのろう者は歴史的に今まで本当にひどく差別され、状況は一向に変わりませんでしたから。」と。
障害者問題の事務局に関する情報をもっと知りたい方は、www.odi.govt.nz へ。

 ビクトリア・マニング氏は、ニュージーランドのウエリントン市にあるビクトリア大学心理学部を修了後、アメリカ合衆国ワシントン市にあるギャローデット大学院で精神カウンセリング修士を取得。現在彼女はニュージーランド障害者問題事務局で、政策問題専門家として活躍中。

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更新日:2004年1月16日