厚生労働省へ聴覚障害者の福祉施策について要望書を提出

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 全日本ろうあ連盟は厚生労働省へ意思疎通支援事業の充実を求めました。厚生労働省からは、各自治体に対し意思疎通支援事業の適正な運用について、今後も引き続き周知をしていくとの回答がありました。また聴覚障害者の労働施策については障害当事者の意見を聞いて施策を進めることを要望しました。

自立支援振興室

連本第170248号
2017年7月10日

厚生労働大臣
 塩崎 恭久  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、本年6月4日福岡県福岡市において開催された第65回全国ろうあ者大会にて、聴覚障害者の福祉施策に関する大会決議を行いました。つきましては、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。
 なお我が国は「障害者権利条約」批准に向けての国内法整備の一環として「障害者差別解消法」を制定し、1年が経過致しました。障害者を取り巻く環境は一歩前進しましたが、聴覚障害者にとっては手話通訳・要約筆記等を含めた情報アクセス・コミュニケーション支援が不可欠です。今後、合理的配慮の事例を積み重ねていき、障害者の社会参加のためにも、より一層の基礎的環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.「手話言語法」及び「情報・コミュニケーション法」を早急に制定するよう進めてくださいますようお願いします。

<説明>
 全日本ろうあ連盟では2010年より「手話言語法」、「情報・コミュニケーション法」の早期制定を求めて取り組みを進めております。改正障害者基本法で「手話」が言語のひとつとして認知され、貴省においても障害者総合支援法・意思疎通支援事業において手話通訳制度等が実施されているところですが、ろう者等への手話言語獲得・手話を使える環境整備を保障する「手話言語法」、ろう者、盲ろう者、視覚障害者等の情報・アクセス・コミュニケーションを保障する「情報・コミュニケーション法」の双方を制定させ、福祉・医療・雇用・教育・司法等の様々な場面で具体的な施策行うことで、ろう者等の真の社会参加を推進できるものと考えます。

2.障害者総合支援法地域生活支援事業「意思疎通支援事業」の手話通訳派遣について、適正に運用されるよう周知・指導をお願いします。

(1)「意思疎通支援事業」手話通訳派遣について平成25年厚労省発出「意思疎通支援事業実施要綱」(モデル要綱)に基づいて、各地域で適正な運用がなされるよう周知をお願いします。

<説明>
 「意思疎通支援事業」手話通訳派遣については平成25年貴省発出「意思疎通支援事業実施要綱」(モデル要綱)に基づいての運用を周知していただいておりますが、同要綱の未導入の自治体が多くみられ、また地域で手話通訳派遣を断る、聴覚障害者が意思疎通支援を十分に受けられない事例が報告されています。
 再度「意思疎通支援事業実施要綱」に基づいた適正な運用を指導いただけますようお願いします。

(2)障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を福祉部局からも働きかけるように周知してください。また予算化されるまでは、引き続き意思疎通支援事業による手話通訳派遣制度を利用できるように周知してください。

<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、少しずつですが手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。一方で、学校や病院等で、今まで利用できた意思疎通支援事業による手話通訳派遣制度が学校や病院の合理的配慮事項とされ、利用できなくなった事例が発生しています。
 聴覚障害者への情報保障が後退しないように、各自治体の担当部局や団体等で手話通訳者に要する経費を予算化されるよう、福祉部局からも働きかけるように周知してください。また予算化されるまでは、引き続き意思疎通支援事業による手話通訳派遣制度を利用できるように説明・配慮をお願いします。

3.IT技術を活用した手話通訳サービス(例:遠隔手話通訳サービス等)は手話通訳を補完的に補う役割を担うものであり、導入によって従来の手話通訳設置・派遣制度が後退することのないように、行政等へ周知してください。

(1)自治体において遠隔手話サービスの導入を検討するにあたり、意思疎通支援事業を含む自治体での聴覚障害者への対応・支援には手話通訳者の設置・派遣等の拡充が基本であることについて、改めて周知またはご説明をお願いします。

<説明> 遠隔手話通訳サービスについては、2017(平成29)年度地域生活支援事業の予算で、手話通訳者を設置できない自治体における導入が認められています。
 聴覚障害者の中には聞こえないことにより社会生活の中で、必要不可欠な情報を充分に獲得することができず、自己選択、自己決定のための補足説明や相談、生活支援などの様々な支援を必要とする者も少なくありません。また手続きや生活相談等でより深い内容になると遠隔手話通訳サービスのような単なるタブレット等を介しての「翻訳技術の提供」では不十分です。 このような聴覚障害の特性やニーズ、また場面に合わせた対人支援のためには 手話通訳者やろうあ者相談員、手話協力員等といった人材が必要であることを理解していただくことが大切です。 遠隔手話通訳サービスは、手話通訳設置事業の補完的な役割を担うものであり、手話通訳設置の代替手段ではないことを各自治体に周知もしくは説明していただきたくお願いします。

(2)遠隔手話サービスの導入にあたっては、地域の聴覚障害協会や聴覚障害者情報提供施設と連携することが必須であり、当事者のニーズを把握したうえで、導入への体制を構築すべきであることを周知または説明をお願いします。

<説明> 遠隔手話サービスの導入に当たっては、必ず聴覚障害当事者団体の意見を聴収したうえで検討する必要があります。また導入に至った場合でも、聴覚障害者の福祉向上のための事業を行う聴覚障害者協会や聴覚障害者情報提供施設と連携のうえ、体制を構築する必要があります。これは、複数の業者による入札を行った結果、民間業者が担当する場合でも同様です。 これらの団体や施設は、聴覚障害の特性やニーズを把握しており、また手話通訳士資格もしくは地域の登録手話通訳者といった一定の専門知識と技術レベルを有する手話通訳者を用意し、適切な運営・支援が可能になりますので、 その旨を各自治体に周知もしくは説明をお願いします。

以上

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障害者雇用対策課 障害者雇用対策課懇談

連本第170249号
2017年7月10日

厚生労働大臣
 塩崎 恭久  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

聴覚障害者の労働及び雇用施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、本年6月4日福岡県福岡市において開催された第65回全国ろうあ者大会にて、聴覚障害者の福祉施策に関する大会決議を行いました。つきましては、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。
 なお我が国は「障害者権利条約」批准に向けての国内法整備の一環として「障害者差別解消法」を制定し、1年が経過致しました。障害者を取り巻く環境は一歩前進しましたが、聴覚障害者にとっては手話通訳・要約筆記等を含めた情報アクセス・コミュニケーション支援が不可欠です。今後、合理的配慮の事例を積み重ねていき、障害者の社会参加のためにも、より一層の基礎的環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.東日本大震災後の聴覚障害者の求職等支援のために、被災した東北3県に対しすべての職業安定所の手話協力員の設置・増員と、障害者就業・生活支援センターの聴覚障害者に対する支援体制を強化してください。
<説明>
 2016(平成28)年度に提出した本要望に対して、「東北3県(21ヶ所)の障害者就業・生活支援センターの職員数が増加しているとの回答をいただきましたが、それが聴覚障害者の支援体制の強化にどのように結びついているのかご教示ください。また、聴覚障害者雇用の状況について調査してくださるとの回答もいただいておりますが、調査の進捗状況を説明してください。

2.手話協力員制度の拡充を図ってください。
 手話協力員制度は昭和48年に実施した国の制度ですが、雇用でなく「委嘱」の形であり、さらに交通費支給はつかない状態が続いています。また最近は意思疎通支援者(手話通訳者)の高齢化により、手話協力員も次世代の育成、確保が困難になりつつあります。委嘱から雇用への形態に変えていくなど、身分保障の見直しが早急に求められています。

(1)手話協力員制度の拡充のための人員確保及び予算確保を図ってください。
<説明>

① 現在、手話協力員は1ヶ月の稼働時間が7時間であり、窓口での手話通訳が中心業務となっており、就労先における職場定着や職場適応にむけた指導等の時間確保が困難な状況です。しかも、相談が可能な日は手話協力員の配置日に限られており、聴覚障害者は一般の利用者に比べて利用機会を制限されています。
 前回の回答では27年度に手話協力員の予算は増額し、その後も維持されているということですが、手話協力員設置のハローワークが27年度以降これまでどれだけ増えたかをご教示ください。
 また、聴覚障害者の来所が多い職業安定所を中心に、手話協力員の常勤化、もしくは1ヶ月の稼働時間の増加・手話協力員の増員等の対策など、聴覚障害者支援体制の強化にはどのように取り組んでこられているのかご説明ください。

② 手話協力員の謝金は、10年程1時間2,950円に据え置かれたままであるうえ、交通費の支給はありません。手話協力員は日本語から手話言語あるいはその逆の通訳を求められる専門性の高い業務であり、ハローワークの近辺でそのような専門性を備えた適任者を見つけることは容易ではありません。人材を幅広い範囲から募る必要がありますが、遠方からの通勤による交通費を賃金とは別に支給する賃金体系でなければ、優秀な人材の確保は困難です。
 当連盟は手話協力員という名称とはいえ、手話協力員は貴省が管轄する障害者総合支援法でいう意志疎通支援者=手話通訳者と位置付けており、社会的に重要な役割を担っていると考えています。このような手話協力員を取り巻く社会的状況に鑑み、現行の謝金単価は早急に見直し、交通費を支給すべきであります。
 2012年度厚生労働省補助事業「平成24年度障害者総合福祉推進事業」の「手話通訳者等の派遣に係る要綱検討事業」において、都道府県および市町村における1時間あたりの派遣単価を調査した結果、最高額で4,000円の単価を設定している自治体もみられました。手話通訳技術を活用して支援を行う手話協力員の専門性の高さに見合う謝金単価の設定が求められることから、早急に見直しを図ってください。

(2)手話協力員の効果的な人材活用のために、手話協力員要領の趣旨の文言を下記のように修正してください。

現・手話協力員要領

(イ)手話協力員の委嘱に当たっては、所期の目的を達成しうるよう、都道府県福祉関係部課、聴覚障害者の団体等の協力を得て、適格者の選定を行い、聴覚障害者に対する就職指導業務の計画的かつ円滑な実施を図ること。

修正意見

(イ)手話協力員の委嘱に当たっては、所期の目的を達成しうるよう、都道府県福祉関係部課、聴覚障害者団体等の協力を得て、適格者の選定を行うとともに、都道府県民生関係部課もしくは聴覚障害者情報提供施設、聴覚障害者団体等を手話協力員の派遣窓口とし、聴覚障害者に対する就職指導業務の計画的かつ円滑な実施を図ること。

<説明>
 現在、手話協力員は個人委嘱となっており、都道府県労働局においては、聴覚障害者団体の推薦を受けて配置しているところがある一方で、聴覚障害者団体と相談せずに公募で採用した者を配置するところもあり、対応が統一されておりません。後者の場合、聴覚障害者団体と連携が取りづらく、聴覚障害者の就労問題の解決が円滑に行われていないという報告があります。
 聴覚障害者の職場定着のさらなる推進に向け、支援の計画的かつ円滑な実施を図るためには、労働局との連携により、聴覚障害者情報提供施設、聴覚障害者団体等も、手話協力員の派遣窓口となり、派遣に係るコーディネート業務や研修、手話協力員会議など実務面を担うことがより効果的な方法であると考えますが、このような連携の可能性についてご見解をお示しください。

(3)各地の職業安定所において手話協力員の業務の範囲がまちまちです。聴覚障害者の職業相談や就労支援ニーズに適切に対応するためにも、「手話協力員要領」の見直しが必要です。手話協力員の在り方にも関わることであり、貴省の労働政策審議会障害者雇用分科会等で検討する場を設けてください。検討にあたっては、聴覚障害当事者・手話協力員を検討メンバーに加えてください。

<説明>
2016年度話し合いで、検討メンバー化は容易でないが「手話協力員要領の見直し」につき該当部局へ要望する旨を伺っています。この進捗状況をご教示ください。

(4)全国の職業安定所担当職員、障害者就労支援専門員、手話協力員等の資質を高め、聴覚障害者への就労支援サービスが十分に図られるようにするために次の通り要望します。

①全日本ろうあ連盟は毎年「全国職業安定所手話協力員等研修会」を開催しています。この研修会を厚生労働省主催で開催してください。

<説明>
 担当職員、障害者就労支援専門員は、人事異動があり、聴覚障害の特性に対する理解が不十分で不適切な対応も見られます。手話協力員とともに一緒に研修の場を持つことで理解が深まり、聴覚障害者雇用・定着を含む労働問題の解決につながります。一日も早く厚生労働省主催で研修する場を設けるように求めます。聴覚障害者が一般社会で働ける環境づくりのためには、労働分野で高い専門性を求められる手話協力員の資質向上、人材育成が重要であるのは言うまでもありません。
 また貴省から地方労働局に当連盟主催「全国職業安定所手話協力員等研修会」への参加よびかけにご協力いただいているところですが、参加される手話協力員に対する参加費及び交通費、宿泊費が支給されるよう、措置を行なってください。

②各都道府県労働局主催の障害者窓口担当職員等の研修カリキュラムに「聴覚障害の特性と支援」についての内容も入れてください。

<説明>
 聴覚障害は外見上わかりにくい障害であり、コミュニケーション方法も手話、筆談、口話などまた手話と口話の併用もあり様々です。本人にあったコミュニケーション支援、職場環境を整えないと、本人が職場で能力を発揮できません。このためには障害者窓口担当職員等が「聴覚障害の特性と支援」の理解を深め、手話協力員との連携で聴覚障害者に対する就労支援サービスを高めることにあります。「聴覚障害の特性と支援」を障害者担当窓口担当職員を対象とした研修カリキュラムに盛り込むことについて各都道府県労働局における取り組みの進捗状況はいかがでしょうか?

以上

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連本第170250号
2017年7月10日

厚生労働大臣
 塩崎 恭久  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

聴覚障害者の労働及び雇用施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、本年6月4日福岡県福岡市において開催された第65回全国ろうあ者大会にて、聴覚障害者の福祉施策に関する大会決議を行いました。つきましては、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。
 なお我が国は「障害者権利条約」批准に向けての国内法整備の一環として「障害者差別解消法」を制定し、1年が経過致しました。障害者を取り巻く環境は一歩前進しましたが、聴覚障害者にとっては手話通訳・要約筆記等を含めた情報アクセス・コミュニケーション支援が不可欠です。今後、合理的配慮の事例を積み重ねていき、障害者の社会参加のためにも、より一層の基礎的環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.法定雇用率制度の徹底を図り、聴覚障害者の積極的な採用を行ってください。

(1)各企業が法定雇用率を達成するよう、また未達成の企業に対しては法定雇用率を遵守するよう、雇用率のアップを図ってください。

<説明>
 2016(平成28)年12月発表の障害者の実雇用率は昨年度と比べ、雇用率が上がっていますが、一般民間企業が1.92%であり、公的機関の一部は法定雇用率が達成されていません。すべての公的機関、民間企業が法定雇用率を遵守するよう、対策を講じてください。

(1)「障害者の雇用の促進等に関する法律」を実効性のあるものにするためにも、障害種別の雇用の状況を表示し、雇用納付金制度のあり方を再検討してください。

<説明>
 法定雇用率が2013(平成25)年4月1日より一般民間企業は2.0%、国、地方公共団体は2.3%、都道府県等の教育委員会は2.2%となっていますが、身体障害者は一括りされています。聴覚障害者をはじめとする障害種別の障害者雇用率の表示をしてください。
 また、聴覚障害者の雇用数と離職数が公表されていないため、聴覚障害者の雇用の実情が分かりません。聴覚障害者に対する情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障が必要なことを理解されていない事業所が多い中で、聴覚障害者の雇用改善のための分析を行い、聴覚障害者の実雇用率増加を図るためにも、障害種別の実雇用率、雇用数、離職数が分かるようにしてください。

(2)ろう重複障害者(盲ろう者含む)の就業について全国的な実態調査を実施し、その結果に基づき、一日も早くろう重複障害者の働く場の保障に関する施策を講じるようお願いします。

<説明>
 厚生労働省の施策として、「医療・福祉」から「一般就労」へ転換する方向を進めています。しかし、ろう重複障害者の就労状況は厳しい現況です。ろう重複障害者の就労をスムーズに進めるために、まず、全国的なろう重複障害者の就労状況に関する実態調査を実施し、その結果を踏まえて、適切な施策を実施するよう求めます。こうした調査の実施に向けた取り組みに関して2016年度の進捗状況をご教示ください。

2.民間企業の模範となるべき官公庁・公共団体等における聴覚障害者の採用条件や職場環境の改善を図ってください。

<説明>

 官公庁や地方自治体では、障害者雇用率を達成しているとされていますが、大半が軽度障害者の雇用です。よって国が率先して採用されている聴覚障害者の職場での情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障について範を示すべきです。厚生労働省が率先して、聴覚障害者を採用し、すべての障害者が平等に働けるよう、条件や職場環境の改善を図ってください。また、貴省をはじめとする各省庁(国の機関)における聴覚障碍者の雇用状況をご教示ください。

3.厚生労働省の所管である、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の障害者介助等助成金による「手話通訳担当者の委嘱助成金の制度」の一層の拡充および事業所や職業安定所に利用の周知徹底を図ってください。

(1)1回の助成額を1人3/4(6千円)ではなく、手話通訳料1回の3/4にしてください。

<説明>
 現行制度では実費の3/4(上限6千円)を超える分は事業所の負担となり、事業所によっては制度を活用しにくい状況です。聴覚障害者が聞こえる人と対等に研修が受けられるように、1回当たりの助成額の上限を撤廃し、手話通訳に対する総費用の3/4を助成額としてください。

(2)年間の助成額の上限28万8千円を取り払い、必要に応じて手話通訳を利用できるようにしてください。

<説明>
 聴覚障害者にとって、職場における情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障は、就労継続上、必要不可欠です。この制度は年間助成額に上限があるため、情報保障の範囲も限られたものになり、複数の聴覚障害者が複数の部署に配属されている場合は、更に情報保障される内容が限定されてしまいます。こうした現行制度における不合理を解消するため、年間助成額の上限撤廃を求めます。

(3)申請提出期間は、事業所が必要と認めた場合いつでも申請できることとし、利用可能期間も雇用後10年間と限定することなく聴覚障害者が就労している限りにおいていつでも利用できるようにしてください。

<説明>
 この制度は、聴覚障害者を採用した事業所に対しての最初の10年間適用となっています。つまり最初に入社した聴覚障害者が申請して10年間は助成されるが、2人目の聴覚障害者がその5年後に入社してきても助成されません。「聴覚障害者を初めて採用してから10年間」のみ有効な制度になっています。10年を過ぎたら、努力義務である「合理的配慮の提供」がなされない場合、聴覚障害者は再び情報アクセスの機会が閉ざされてしまいます。

(4)難聴者、中途失聴者の情報保障のために、要約筆記の活用にも同じように助成金が利用できるようにしてください。

<説明>
 聴覚障害者の中には手話通訳者ではなく要約筆記を必要とする場合がありますが、現行制度では要約筆記者に委嘱された場合について支給対象とされていません。
 障害者雇用促進法が求める「合理的配慮の提供」には筆談も含まれており、会議、講演会などの場合では重要な配慮手段になります。障害者雇用促進法の求める「合理的配慮の提供」の観点からみても制度的な欠陥であるといわざるを得ません。

4.聴覚障害者等ワークライフ支援事業を国の制度として新設してください。

<説明>
 現在、大阪府の独自事業として実施されている聴覚障害者等ワークライフ支援事業は、就職前後の聴覚障害者(重複聴覚障害者を含む)に対して、個々のニーズに応じた雇用・労働相談・支援を行い、聴覚障害者の職場定着に成果を上げています。聴覚障害者の就労面での相談支援機能の充実を図るため、聴覚障害者等ワークライフ支援事業を国の制度として実施してください。

5.聴覚障害者の職場定着を確実なものとしていくために、聴覚障害者がコミュニケーションや意思疎通に不安を感じることなく、職場定着指導や職業相談などが受けられるよう、ジョブコーチの条件に「手話ができる」ことを明記し、ジョブコーチ養成のカリキュラムに「手話言語」を取り入れてください。

<説明>
 現行では、手話を必要とする聴覚障害者にジョブコーチが手話での会話が可能の場合、対応できますが、手話ができるジョブコーチが非常に少なく、聴覚障害者に対する支援が十分にできません。

6.聴覚障害者が安心して利用するために、全国に約300ヶ所設置されている障害者就業・生活支援センターに手話通訳者を配置してください。

<説明>
 聴覚障害者にとって、公的な就労相談の場である障害者就業・生活支援センターでは、筆談対応を中心とした支援が多く、手話を第一言語とする聴覚障害者にとっては利用しにくく、相談支援機能が十分に果たされているとは言えません。聴覚障害の特性を理解した手話通訳者の配置を働きかけてください。

以上

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