日本聴力障害新聞2003年4月号一面より (日聴紙購読についてはこちら)

警察庁委託 安全運転と聴覚との関係に関する調査研究

偏見まる出し記述

「周囲に人や車にとって危険」

 聴覚障害者の自動車運転免許取得に関して、2001年の道路交通法88条改正により「耳が聞こえない者には免許を与えない」とする欠格条項は廃止されましたが、適性試験の聴力検査が残されたままで、事実上、何ら改善されませんでした。
 ただ、その際「それら(適性試験)が障害者にとって欠格条項に代わる障壁とならないよう配慮していく」との付帯決議がなされました。
 実質的な改正に向けた調査研究が注目されましたが、委員会設置による審議でなく、民間の調査会社に委託されていました。
 このほど、調査研究の結果として「平成14年度警察庁委託・安全運転と聴覚との関係に関する調査研究成果報告書」が、発表されました。
 報告書は全文168頁にわたるものですが、医師や補聴器メーカー等の専門家に対するヒアリングの結果として、聴覚障害者による運転は「周囲の人や車にとって危険である。(交通安全上、危ない)」「車の運転を勧めないほうがよい」とするなど、偏見が随所に見られる報告書となっています。
 警察庁が国の予算を使って委託した調査研究だけに、その「成果報告」がずさんな内容となっていることに対してどう対応するのか、厳しい監視が注がれています。

時代に背を向けた認識
(安藤豊喜全日本ろうあ連盟理事長のコメント)

非常に残念に思います。私共の差別法規改正運動では,200万人を超える国民の皆さんの支持署名と1000を超える地方議会での意見書採択がありました。このことは,世論や地方議会は「障害を理由とした差別や偏見があってはならない」と認識し,その意思を表明したと言えます。しかるに医師等の専門家の認識は旧態依然であって,ノーマライゼーションやバリアフリーの時代に背を向けた認識といわざるを得ません。