2001年5月15日

厚生労働大臣
  坂口 力  様

〒162-0801新宿区山吹町130 SKビル8F
財団法人全日本聾唖連盟
理事長 安藤豊喜

平成14年度予算に関する要望

 平成14年度予算に関して、下記のように要望いたしますので、実現くださるようよろしくお願い申しあげます。

1.貴省よりの当連盟委託事業「手話通訳指導者養成研修事業」の見直しと予算増額について

 貴省は一昨年「手話奉仕員・手話通訳者養成カリキュラム」を策定して全国に通達し、つづいて昨年「手話通訳事業」が法定化されました。手話関係事業の取り組みの充実および積極的な推進を全国の自治体にご指導いただき厚くお礼申し上げます。
 しかしながら、新カリキュラムによる都道府県・市町村単位の手話奉仕員および手話通訳者養成事業が円滑に行われるには、その指導者の養成と、指導方法の全国的統一が必要不可欠です。
 つきましては、当連盟への委託事業である「手話通訳指導者養成研修事業」の事業内容を新カリキュラムに沿って見直し、手話奉仕員養成「入門」「基礎」・手話通訳者養成「基本」「応用」「実践」の合わせて5コースの指導者養成ができるよう予算の増額をお願いします。

2.「手話通訳事業」を法定化したことによる関係予算の大幅増額を求めます。

 「手話通訳事業」を法定化し、これをより推進するために「障害者生活訓練・コミュニケーション支援等事業」として『「障害者の明るいくらし」促進事業』から抜き出し新しい事業として位置づけていただき厚く御礼申し上げます。
 ついては、これらの事業をより一層推進するために「手話奉仕員・通訳者養成事業」「手話奉仕員・通訳者派遣事業」「手話通訳設置事業」「要約筆記奉仕員養成事業」「要約筆記奉仕員派遣事業」の思い切った予算増額をお願いします。

3.貴省内に「手話通訳事業検討委員会(仮称)」を設置して下記を検討し、その結果を全国の自治体に通達してください。

〔検討内容〕
  1)「手話通訳設置事業」の職務内容および手話通訳者の採用基準 
  2)「手話奉仕員派遣事業」の事業内容の具体化
  3)「手話通訳事業」(社会福祉法)の内容

4.介護保険制度における情報・コミュニケーション保障について

 昨年4月より開始された「介護保険」において懸念される、聴覚障害者への情報・コミュニケーション保障について下記を要望します。
  (1)介護度認定時の訪問調査における聴覚障害者への手話通訳等のコミュニケーション保障費用を、国の介護保険補助金として公費負担をお願いします。
  (2)ホームヘルパー派遣・ディサービス・ショートスティ・特別養護老人ホーム等、介護保険制度で提供されるサービスは、高齢ろうあ者も一般高齢者と同質のものが受けられるよう、下記整備・予算措置(国の補助金)を要望します。
    1)手話の通じるホームヘルパー(特に聴覚障害者ホームヘルパー)の養成・派遣
2)高齢ろうあ者専門のディサービス・ショートスティ施設の創設
3)既存のディサービス・ショートスティ・特別養護老人ホーム等においては、高齢ろうあ者を集団として受け入れ、手話と文字による情報・コミュニケーションが保障されるよう設備の整備・人的配置をお願いします。

5.「聴覚障害者情報提供施設」関係予算の増額について

 身体障害者福祉法に聴覚障害者情報提供施設の機能として、「手話通訳等を行う者の養成・派遣等の便宜の供与を加える」ことが追加されます。この法改正および施設機能の充実を図る目的で、建設費・設備整備費の国庫補助に下記の予算化をお願いします。
  (1)建物の規模・構造について
    1)機能拡充に伴う建物の規模 400平方メートルを 800平方メートルに引上げる
2)特殊設備の設置(火災時避難誘導システム・スタジオ設備・試写設備等)
  (2)職員の配置
    点字図書館・点字出版施設同様に職員の職務・資格について下記のように明示し、職員増員の予算措置をお願いします。
  • 施設長
  • ビデオカセット制作担当・ビデオカセット貸出担当
  • コミュニケーション支援担当(手話通訳者・要約筆記者)
  • コーディネーター担当
  • 聴覚障害者相談員

6.ろう重複障害者福祉施策関係予算について

  (1) 既存のろう重複障害者施設に関わる予算について、下記を要望します。
    1)ろう重複障害者の命と安全が確保され、障害の特性を熟知しその処遇と援助の専門性に対応できるよう、指導員の抜本的な加配、看護婦の複数配置、心理相談員・理学療法士・手話通訳士の配置をお願いします。
2)聴覚障害対応の施設設備について、下記の整備をお願いします。
  情報提供システム・フラッシュランプ・バイブレーター等
  (2)小規模無認可施設の運営への助成について
  最近、必要に迫られてかなりの数の無認可施設が、全国各地に設立されています。しかし、無認可の施設は親・家族・関係者の献身的な努力で運営されているのが現状です。またこれらの無認可施設ではいくつかの自治体にわたって入所・通所しているため、自治体単位の助成が受けられず、その運営には厳しいものがあります。
 全国各地の無認可施設・作業所の運営に助成して下さい。
  (3)ろう重複障害者の実態調査研究への助成について
 全国的には未だ、ろう重複障害者の実態は明らかになっていません。今後予定されている障害者のケアマネジメントが適切に行えるよう、詳細な調査・研究を「全国ろう重複施設連絡協議会」に事業委託を行って下さい。
  (4)職員養成機関の創設、現存の国立・公立研修機関での養成・研修の実施についてろう重複障害者への適切な処遇・援助を行う専門性をもった職員の養成が急務となっていますが、職員の養成・現任研修に関する体制は民間に委ねられているのが現状です。
 職員養成機関の創設・現存の国公立研修機関での養成・研修の実施、または「全国ろう重複施設連絡協議会」への事業委託を要望します。

7.手話協力員制度を充実させてください。

 本制度は創設後27年になります。本制度の設立は聴覚障害者の就労援助に多大な効果がありましたが残念ながら制度内容が設立当初から改善されていません。
 当連盟は手話協力員の正職員化を制度設立依頼要望しつづけておりますがいまだ実現しません。正職員化を強く要望するとともに、直ぐの要望が叶わない場合は時間数及び日数を少しでもよいので増やすよう強く要望します。

以 上