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福祉医療機構助成事業「デフリンピック啓発セミナー」シンポジウム
(2009/2/22)

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及川 力(国立大学法人筑波技術大学 障害者高等教育研究センター)

 技術大学の及川です。本当は無駄な話の中におもしろい内容がいっぱいあると思うのですけれども、私が無駄話を交えながら行うとたぶん1時間かかっても終わらないので無駄な話はやめて10分程度で終わるようにしますので、多分おもしろくないんじゃないかなと思います。

 次回(9月の台北デフリンピック)はどうなるかというところだと思うんですけど、一見すると成績が落ちているように見える。それがどういうことなのかを見ていたら実はこういう論文が出てきました。なんてことはない、前回の事務局長である大杉先生が、総括に書いていました。原因は他国のレベルアップではないかと。日本選手団の今度の活動として若い選手の発掘と育成、国際大会の派遣・経験等をすることが重要だろうと。それで昨日からの話の脈絡が私も理解できます。聞こえない選手について大杉先生は同じ論文の中でこのようなこともおっしゃっています。「デフリンピックとは競技記録を競う国際大会である。」競技性の高い大会であるということと同時に「文字や映像による情報保障と手話を中心とするコミュニケーション保障がないとデフリンピックにならない」と述べています。

 こういう3つの条件が整うことがデフリンピックだと聞こえない方が定義されているわけですから、それに対して私がどうのこうの言う立場ではございません。ただ、少し意見はあとで申し上げます。

 ではオリンピックはどこに価値があるのか?我々がどういうところを見て感動するのか?例えば、みなさんすぐにオリンピックに出場できますか?目指そうと思えば今から出られますか?私も若いときはちょっと思ったんですね、高校生くらいまでは。サッカーというのは怪我の多いスポーツなので私も頭を打って3日間意識不明で入院しました。脳波異常の診断を2回受けているんです。その頃、1年間くらい左右の焦点が合いませんでした。目をやられたんですね。それから頭がボーっとしてなかなかサッカーを続けられない状態になりました。それで競技生活は終わったということです。ただ今はサポート体制がとても良くなっていますから今だったら多少は違うのかな。選手のリハビリが非常にいいですよね。このように話が脱線してる・・自分で言ったことですが。

 (価値があるのが)何かというと「誰にも真似できない」ということです。「誰にも真似できない」ちょっと1年くらい練習すれば芽が出るというわけではない。出来そうになるなんてもんじゃない。例えばキタジマコウスケさんなんて、私は実家まで見に行ったんです。幼稚園の頃からやっているわけです。ずーっと幼稚園・小学校・中学校・高校・大学まで専業でやっているわけですから、それくらいでないと本当に人の感動を得るというのは難しいということです。

 ではパラリンピックは?本質は同じだと私も思います。オリンピックにない条件が他にも加わっているということです。最後にデフリンピック。デフリンピックも同じではないかと私は思っています。だから本当に死に物狂いでやって誰にも真似できないくらいのパフォーマンスを出さないと本当は感動を呼ばないのではないかと思います。たぶん条件の中のいくつかに文字や映像による情報保障だとかコミュニケーション保障だとかが入ってくるのだと思うのですけれど、おそらくそれ以外にトレーニング法、栄養の問題、メンタルの問題などがたくさん入っていると思いますので、まあそれ以上はここでは言いません。

 <PPを指して>全部読まなくても良いんですがここではこう言っている。「聴覚障害者は聴覚障害者のグループ活動に終始しやすく健聴者との交流が乏しいため競技力の向上にハンディキャップを負う。」藤原さんという大学の先生がおっしゃっている。これ学術論文ですから批判は学術論文でしなければならない。じゃあどうしたら良いかという中に「コミュニケーションを考えましょう」ということとここに書いてあるように「視覚による保障」みたいなものですかね。情報保障が必要だということが書かれている。どうやら考えは同じようであるという風に私も思います。実は藤原先生は体格などは健聴者と(聴覚障害者は)変わらないとおっしゃっていますが、私は本当かなぁと思い研究で調べてみました。

 <PPを指して>これは6~17歳の聴覚障害児の平均値の話ですから、そう取っていただきたいのですけれど、同じ年代の健聴者の子供を100%として聴覚障害児は何%になるかを単純に比較したものです。これは反論もあると思いますが。

 これで見ると体格的なものはほぼ同じです。身長や体重は健聴者とほぼ同じ。体の大きさは聞こえる人も聞こえない人も同じということです。松田先生に余計なことを言ってはいけませんが、体育連盟の目標の中に「体位の向上」っていまだにあるからもう変えたらいいんじゃないですか(笑)体位はもう充分向上していますよ。問題は筋力や敏捷性、運動能力的なものはほぼ90%くらいなのかなぁと思っています。ただこの中にいくつかちょっと低いものがあります。男子のボール投げは別の機会にいうことにして、ここでは20mシャトルランという研究をしていました。音を使うテストなので聞こえない人は補聴器をつけて受けるわけですが、それだけでは不十分なのではないか、どうしたら良いのだろうと考えてそれなりの機械を作ってみたんです。単純に1.500m、1.000mを走らせると先ほど説明したように約90%くらいなのに、これ(20mシャトルラン)だけは7割。やはり何か原因があるのではないかと調べました。こういう視覚的に見える装置を作って、正面に見て走った時にこのような映像が見えるようにして、床にはLEDのライトが光っていくというものですが、まだ充分な検証はできていません。

 実は聴覚障害者選手のスタートシステムの話はパンフレットに写真が載っています。ここに載っているスタートシステムは非常に改良されてきていると思っているのですが、しかし斜め前を見るようになっています。横というか斜め前ですね。私も時々引用するハーレーさんはだいぶ前に20年前にこういう論文を書いていて、ここら辺(PPの画面を指す)に置くのがいいとなっています。

 なぜかというとデフリンピックの場合は(スタートシステムが)このへんにあるんです。斜めに見るわけです。そうするとハーレーさんの研究によると、体にねじれが出て回転モーメントが働くので前にいく推進力が弱いということなのです。たぶん中学や高校の時に力の合成、ひし形みたいのを書いてこうひくみたいな、そんな勉強をしたかと思うのですが、その原理なんです。ですから将来的に機械が非常に良くなっているのでもっと改良されるとパフォーマンスが良くなるんじゃないかと思っています。研究の余地がまだありそうです。

 シドニーオリンピックの時に、南アフリカのパーキンと言う聴覚障害者の選手が平泳ぎで2位になりました。大騒ぎになりました。このときに、スタート台にスイスの有名な時計メーカー・スウォッチ社が作ったスタートシステムがありましてスタート台の脇でランプが点滅するようになっていたようです。どうやらパーキンの活躍に関係があったようです。お金をかけないでやることにどんなことがあるのか、いろいろな団体に聞いてみたのですが、ラグビーの場合は観客に黄色の紙を入場の時に渡すということをやったことがあるそうです。審判が笛をピーっと吹いたら紙を掲げるというようなことをやったんですけど、成功した時と成功しなかった時があってあんまり人数が少ないと効果が薄いそうです。かなり人数がいると良いとここには書いてあります。

 聞こえない人は音の反応よりも目の反応の方が早いというのがいくつかの研究で分かっています。これは私の先輩でもうお辞めになっている方で後藤さんという方が研究をしました。高いほうが数値が遅いってことですから短いほうが、下の方がいいってことです。するとやはり聞こえない人というのは光の反応の方が早いということが分かります。当時私も短期大学の学生に50人くらい同じ実験をやりましたが結果は同じでした。条件としては音を聞かせるのと光を見させるというもの。補聴器をつけて下を向き、やる前に音を聞かせる、音が聞こえていることを確認してやったんです。だから音が聞こえていても視覚に入るもののほうが早いということです。スタートシステムを使うほうが音声利用よりは良いと思います。もう時間ですので短くしましたが、これからこういうことをやってはいかがでしょうか?今聴覚障害者競技団体に係わっているトレーナーや栄養士さんいらっしゃいますよね。それから聾学校には体育の先生などがいるわけです。大学はほとんどいません。私が知っている範囲で聴覚障害者のことを研究しているのは4人くらいです。代表チームやクラブチームの指導者などもいるでしょう。その他も色々いると思います。こういう方々をもっと利用すること。それから色々な研究をもっと進めるほうがいい。進めるために組織を作ったほうがいいと思います。昨日の監督会議の席で私の同僚である中村から今度デフリンピックにでる選手に対するアンケート依頼があったかと思います。成果をまた皆さんへご報告したいと思います。それから親団体との連携をもっと深めるのが良いと思います。本日は松田先生に来ていただいたんですが、そういう意図があって来ていただくようお願いをしました。

 最後に、午前中に報告があったように、聴覚障害者組織の改革運動の話がありました。いま組織が色々変わっていっています。国内的には私も驚いたんですけど、競技団体の運営をもっと専門的にやるために大学院まで進むという方も出てきています。だいぶ色々変わってきているなと感じています。沢山の知恵を活用できる柔軟な組織へ変わっていくことが良いのではないか?と個人的には思っています。そのときに、まあこれは昔の論文に書いたのですが、英語でしか表せられないのでこのまま載せてあります。

 CISSがパラリンピックに加盟するとき、実際国際パラリンピック委員会に加盟したわけですが5年くらいで辞めてしまいました。その経緯を書いた論文です。当時の会長のジョーダンさんにFAXなどでやりとりをして教えていただいたのですがCISSがIPCに加盟するときにIPCの決定権半分以上を障害者が持つと良いんじゃないかと提案をしたのだけれどもそれが却下されたということが(論文に)書いてあります。皆様の団体はそのような原則を堅持しておられるということになります。私はこれはこれで良いんではないかと思います。

 私も何か貢献できないかと色々やっているわけですが1つはこんなことをやりました。もうデフニュースに載ったんじゃないかと思うのですが、ネットワーク作りをやろうと思ってこういう名前のメーリングリストを作りました。まだ何人も入っていないのですが、とにかく、どういうところでどういう人がどういう事をしているのかが分かるだけでも参考になるかなと思っています。さきほど栄養士さんだとかトレーナーだとか書きましたが、そういう方にも呼びかけてネット作りをしていこうかなと思います。何がしかの形で応援になれば良いかなと思っています。以上です。


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