自民党「障害者の情報コミュニケーション推進に関するPT」へ要望書を提出



 2017年5月24日(水)、自由民主党障害児者問題調査会「障害者の情報コミュニケーション推進に関するPT」(以下、議連)の会合が開かれ、石野理事長、久松事務局長、嶋本理事が出席し、情報・コミュニケーション法と手話言語法の早期制定について要望しました。

出席:
・全日本ろうあ連盟/石野理事長、久松局長、嶋本理事
・自民党の障害児者問題調査会会長…衛藤晟一議員(参…大分)
 PT座長…福岡資麿議員(参…佐賀)
 PT事務局長…笹川博義議員(衆…群馬)

障害児者問題調査会 情報コミュニケーション推進に関するPT 議事次第(PDF)

PT会合 PT会合

連本第170108号
2017年5月24日

自民党 障害児者問題調査会
障害者の情報コミュニケーション推進に関するPT
 座長 福岡 資麿  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

「情報・コミュニケーション法」および「手話言語法」制定に関する要望

 平素より聴覚障害者福祉の向上にご理解ご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
 今般、障害児者問題調査会「障害者の情報コミュニケーション推進に関するPT」の会合にお招きいただきありがとうございます。
 2016年4月1日より、「障害者差別解消法」が施行しました。障害者の社会参加の促進に寄与するこの法律においても「アクセシビリティ」は重要な理念として掲げられており、この理念を具体化することが急務となっております。
 また、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、世界中から障害の有無にかかわらず多くの人々が来日します。多種多様な人々と自由にコミュニケーションをし、「心のバリアフリー」によるおもてなしをもって迎えるよう、「世界に開かれた言語・コミュニケーション環境」の整備のために、下記の通り要望いたします。

1.「情報・コミュニケーション法」の制定を早急に進めてください。
 聴覚障害、盲ろうをはじめ、話すこと、聞くこと、見ること、書くこと、読むこと、認知することに困難がある人達は、情報アクセスとコミュニケーションに制限を受けています。そのため、憲法で保障された権利を行使するときに必要な情報アクセスとコミュニケーションを保障する制度も、縦割り行政のなかで部分的に保障している状況が続いており、依然として「制度の谷間」が存在します。
 例えば、現在の障害者総合支援法77条の六では、地域生活支援事業において、意思疎通支援のための手話通訳者・要約筆記者等の設置・派遣を規定していますが、その実施状況はまちまちです。また、福祉の面だけでなく、学校教育、医療、就労の場面等社会のあらゆる場面で意思疎通支援が不可欠です。そして地方行政のみならず、すべての省庁が実施するあらゆる事業においても合理的配慮の提供や基礎的環境整備による意思疎通支援のための予算を確保し、その利用が求められています。省庁を横断した取り組みを推進することが必要です。
 障害者が自由に情報にアクセスでき、自らのコミュニケーション手段を選択できることは、国民として等しく社会参加ができることであり、社会全体にとってプラスになるはずです。あらゆる場面における「情報アクセスとコミュニケーション手段の選択」を保障するための法律「情報・コミュニケーション法」の制定を、早急に進めてください。

2.「手話言語法」の制定を早急に進めてください。
 障害者基本法で手話が「言語」の一つとして規定されています。しかし、手話を「言語」として明記するだけにとどまらず、ろう者が手話を言語として獲得することをはじめ、手話による情報獲得や手話を使用することを保障する法律、「手話言語法」はまだありません。
 例えば、「手話を学ぶ権利」として、10年に一度、文部科学省では学習指導要領が改正されています。この学習指導要領の今回の改正では「コミュニケーション手段に、手話に加え、指文字を追加し、コミュニケーション手段を積極的に使うこと」と「コミュニケーション能力を伸ばすこと」の2つを大きな柱にしており、手話について一歩踏み込んだ改正が行われていますが、依然として教育現場における児童・生徒、そして教員の手話習得のための機会設定はなく、また厚生労働省で取り組まれている新生児スクリーニングでは障害を発見できても、0~3歳児までの乳幼児時期は、療育分野そして「教育相談」で対応しており、「手話」が位置づけられていません。
 私たちはこの「手話言語法」の制定に向けて、2010(平成22)年より取り組んでおり、その結果、1,788ある全ての自治体の議会において「手話言語法制定を求める意見書」が採択され、2017年5月24日現在、全国97の自治体で手話言語に関する条例が成立・施行しています。また、条例制定を機に、首長間のネットワーク化が進められ、「全国手話言語市区長会」(現在279の区市町が入会)や「手話を広める知事の会」(現在40の道府県知事が会員)が設立されています。
 ろう者が手話を用いて、聞こえる人と対等に社会参加をしていくためにも、手話を獲得し手話で学べるようにするための環境整備と手話言語を研究・普及・保存していくことを保障するための法律の制定を早急に進めてください。

<参考>
 「障害者権利条約」では「手話」が言語のひとつとして規定されると同時に、第9条では「施設及びサービス等の利用の容易さ(アクセシビリティ)」、第21条では「表現及び意見の自由、情報の利用の機会」が明記されています。
 また、「障害者基本法」では、基本原則の一つとして「言語(手話を含む。)その他の意思疎通の手段を選択する機会の確保」と「情報を取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大」(第3条の3)が規定されています。

以 上