総務省へ聴覚障害者の参政権等について要望書を提出



 2017年5月26日(金)、3団体政見放送検討委員会(全日ろう連/全通研/士協会)は総務省を訪問、聴覚障害者の参政権等について要望書を提出し、意見交換を行いました。

【写真左】総務省選挙部管理課長へ要望書を提出する
     情報・コミュニケーション委員会 小椋委員長、中西副委員長
【写真右】総務省面談の様子

【出席者】全日ろう連/小椋武夫・中西久美子、全通研/荻島洋子、
     士協会/小椋英子・武居みさ・渡邉照子・望月香代

要望書を提出 面談の様子

2017年5月26日

総務省 政見放送関係事務担当者 様

三団体政見放送検討委員会
委員長 小 椋 英 子 

総務省訪問時(5月26日)の確認事項について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、手話言語法の早期実現をめざし、全国的な運動展開をした結果、手話言語法制定を求める意見書は、全国全ての自治体議会で採択されました。また、手話言語条例を制定する自治体は全国で97か所になりました。「手話に対する認知・評価」が広がり、聴覚障害者の情報を担う手話通訳士がますます必要となります。
 また、昨年4月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行され、行政機関等には障害のある方に対し積極的な合理的配慮の提供が求められています。聴覚障害者の参政権が、全ての国民と同等に保障されるよう5月26日に貴省に訪問し、以下の内容について、話し合いたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

1 聴覚障害者の参政権保障について
 2011年4月から、都道府県知事選挙の政見放送に手話通訳を付けることが認められ、参議院議員比例代表選出選挙、衆議院議員比例代表選出選挙と合わせ、政党(都道府県知事選挙では候補者)の「任意」という条件ながらも、手話通訳付政見放送が実現しており、手話通訳の付与率は徐々に上がっています。また、2013年の参議院比例代表選出選挙から字幕の導入が実現し、参政権保障が手話のわからない聴覚障害者にも拡大したことを嬉しく思います。
 しかし、現状では、手話通訳が全くつかない政党(候補者)もあり、聴覚障害者の参政権を保障した政見放送とは言い難いのが現実です。聴覚障害者が国民の一員として平等に選挙に参加する機会を保障すべく、2年後の参議院選挙区選挙政見放送への手話通訳付与を含め、衆議院・参議院・都道府県知事選挙のすべての政見放送に手話通訳及び字幕を義務づけられるように早急にご検討ください。

2 政見放送や候補者の演説等に携わる手話通訳者の身分について
 公職選挙法により「選挙運動に従事する者のうち、専ら手話通訳のために使用する者」には「報酬を支払うことができる」とされていることは、手話通訳士が選挙運動員とみなされ、手話通訳士が掲げる公正・中立な理念に反します。また、基本的な人権としての参政権を求める聴覚障害者の取り組みが選挙運動とみなされる懸念があります。手話通訳士については、「選挙運動に従事する者」に含めないこととし、手話通訳士の社会的信用と公正・中立の立場を保障していただきたい。
 地方公務員法36条では、特別職員の政治的活動は制限されていません。このことを周知し、公務員の身分である手話通訳士も従事できるよう検討していただきたい。
 また昨年の話し合いの中で、公務員特別職の手話通訳を担える調査を行うとのことでしたが、進捗状況をお聞かせください。

3 政見放送に関する研修会の公費開催について
 現在、政見放送の手話通訳を担っている者は、「政見放送及び経歴放送実施規程」により手話通訳士となっておりますが、毎年、資格を取得する新たな手話通訳士や関係法令等の改正の理解及び政見放送内容に関わる新しい手話の習得のために「政見放送従事者研修会」が必須となっております。衆議院・参議院・都道府県知事選挙のすべてに対応できるよう、総務省研修を選挙ブロック内で開催し、研修履修者を増やすことが求められています。2018年以降も総務省研修が継続できるようご検討ください。

4 政見放送収録時の手話通訳士の環境整備について
 手話通訳士は、政見放送の手話通訳を担うにあたり、様々な準備を行った上で手話通訳現場に臨んでいますが、選挙関係者が集まり、時間等の制約もある中での収録は、極度の緊張が強いられます。また、候補者によっては、事前の資料がなく、内容が把握できないまま収録となるケースもあります。
担当する手話通訳士が、本来持っている技術を十分発揮できるよう選挙関係者とは別の場での収録、それが難しいのであれば、環境整備や事前資料の準備をしていただけるようご検討ください。

5 その他「キャンセル時の補償料について」
 昨年県知事選挙収録当日に、候補者の都合で収録が行われなかった例があります。担当手話通訳士とサブ手話通訳士はすでに収録現場に到着していました。手話通訳士に通訳料がどこから支払われるのか現場の混乱がありました。今後も、同様なことが起きる可能性もあることから、国政選挙・知事選挙の政見放送収録においてのキャンセル時における手話通訳士に対する補償料の整理が求められます。

三団体政見放送検討委員会事務局
 一般社団法人日本手話通訳士協会