自由民主党ユニバーサル社会推進議員連盟へ「聴覚障害者にかかる政策に関する要望について」を提出



 2016年2月24日(水)、自由民主党ユニバーサル社会推進議員連盟のヒアリングがありました。全日本ろうあ連盟からは長谷川副理事長と久松事務局長が出席し、要望書を提出、説明を行いました。

要望書を提出

連本第150593号
2016年2月24日

自由民主党 ユニバーサル社会推進議員連盟
会長 石破 茂 様

一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者にかかる政策に関する要望について

 日頃より、聴覚障害者の福祉向上について、格別のご理解とご協力を賜り、厚くお礼申しあげます。
 2016年4月1日より、「障害者差別解消法」が施行されます。障害者の社会参加の促進に寄与するこの法律においても「アクセシビリティ」は重要な理念として掲げられており、この理念を具体化することが急務となっております。
 また、2020年には、東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。世界中から選手を含め多様な障害をもつ多くの外国人が日本を訪れます。身体の運動機能に障害をもつ人だけでなく、視聴覚等の感覚機能に障害のある人もたくさんいます。障害者が安全に移動することができ、あらゆる情報に自由にアクセスすることができ、また旅行等を楽しむことができるように整備する必要があります。私たち聴覚障害者が社会参加に必要な「手話言語法」「情報アクセス・コミュニケーション法」も含め、以下のとおり要望いたします。

1.「手話言語法」の制定について
 2013年10月に鳥取県において「手話言語条例」が制定されて以来、全国に手話言語条例の制定が相次ぎ(2016年2月24日現在:3県25市5町)、全国各地で手話言語条例を検討する県市町が増えてきています。また全国で1788ある都道府県・区市町村自治体のうち99.9%となる1787議会が「手話言語法」の制定を求める意見書を採択しております。また、全国市長会、全国県議会議長会等も手話言語法の制定を求めています。
 早急に「手話言語法」の制定を進めてください。

2. 障害者差別解消法について

2-1.「合理的配慮の提供」における「人的支援」について
 聴覚障害者にとっての合理的配慮は、手話通訳や要約筆記、文字情報の提供といった人的支援が必要不可欠です。全省庁・全分野において、障害がある当事者への人的支援による「合理的配慮」に応えられるよう施策とその予算措置を推進してください。

2-2. 省庁を横断する取り組み
 合理的配慮に基づく施策により、基礎的環境の整備と共にアクセシビリティ政策を推進していくことで、社会のあらゆる分野、場面での意思疎通支援が十分に進展していくことが見込まれています。現在の意思疎通支援事業では、分野にかかわらず、意思疎通支援のための手話通訳者・要約筆記者等の設置・派遣を行っていますが、今後、各分野での基礎的環境の整備を進めていく中で、すべての分野において、意思疎通支援のための予算を確保し、その利用を推進することが必要です。合理的配慮や基礎的環境整備による支援の推進について、省庁を横断する取り組みを検討してください。

2-3.「障害がある当事者」主体の政策審議について
 障害者の権利条約・改正障害者基本法・障害者総合支援法・障害者差別解消法に基づき進められていく障害者施策や政策を審議する国・地方の審議会や委員会の選任の際には、それぞれの分野で、あらゆる種別の障害がある当事者の声が反映されるようにすべきであり、情報・コミュニケーションに障害がある当事者団体を必ず含めてください。

3.「情報・コミュニケーション法」の早期制定を!

3-1. 情報アクセス・コミュニケーション手段の自己選択について
 コミュニケーション手段は当事者自らが選択すべきであり、その選択によって不利な扱いがされないよう、情報アクセスやコミュニケーション手段を保障するための法律を制定してください。

3-2.「検討会」の設置について
 各省庁に横断的に関わる事項を統括する立場にある内閣府において、視覚、聴覚、言語の感覚機能障害その他の障害のため「情報アクセス・コミュニケーション保障」の法制化を検討する「検討会」を立ち上げ、同時に聴覚障害をもつ当事者等に委員を委嘱するよう推進してください。

3-3. 電話リレーサービス・テレビ電話システム等、ITCを利用した通信サービスの拡充について
 聴覚障害者の情報アクセスの一助として電話リレーサービスやテレビ電話等がありますが、現在わが国ではこの制度が十分に整っておりません。電話による情報アクセスが聞こえるものにとって必要不可欠であるように、聴覚障害者にとっても電話の音声情報を視覚情報で得ることができるシステムは、聴覚障害者の社会参加を飛躍的に向上させます。
 この通信サービスシステムの整備・拡充をぜひ進めてください。

3-4. テレビ・インターネット放送等に字幕・手話等を
 テレビにおける字幕普及率は、普及目標の対象時間で約90%を超えおり、総時間数でも約60%となっております。しかしながら、テレビ放送における手話付与率は0.2%と著しく低い状況です。情報アクセスの選択権の保障を鑑みると、この状況は問題であり、改善が必要です。
 また、インターネット放送については、字幕や手話の付与義務がなく、多くの番組に字幕や手話がありません。これらの番組についても、ぜひ字幕や手話の付与を推進してください。

以  上