関東・東北豪雨 茨城県被災状況視察報告



関東・東北豪雨 茨城県被災状況視察報告

日時:2015年10月5日(月)10:00~14:00
場所:茨城県常総市石下地区
視察者:・聴覚障害者災害救援中央本部  石川副運営委員長, 事務局
    ・茨城県聴覚障害者災害対策本部 茨城県聴覚障害者協会 3名

(1)被災者宅訪問

  • 自宅は120cm浸水 周囲は160cm浸水
  • 家族構成 ろう夫婦(定年後で家にいた)
         長女(市役所勤務)
         次女(つくばのホテル勤務、産休)
         この地に来て30年。被災ははじめてのこと。
  • 9月9日鬼怒川堤防決壊
    最初に若松町の決壊の情報を聞いた。
    7~8km離れているので影響はないと考えた。
    次に三坂の堤防が11:50に決壊したとの情報を聞いた。
    自分は大丈夫と考えていたが、市役所に勤めている長女と産休で家にいる次女間で電話によるやりとりをして、危険、避難が必要ということで、14時までの間に、テレビ等の家財を2階に上げて、車3台で14:00に自主避難。近所の人はまだどこも避難していなかった。
    次女が勤務していたつくば市のホテルが受け入れてもよいとのことでホテルに避難。1泊後、下妻市にいる妹宅に身を寄せている。
  • 目の前に広がっている田の稲は全部売り物にならないそう。遠方に見える「コシヒカリ」のJAの米タンクも浸かって全て廃棄するとのこと。

  • 2日目は、周囲全て水浸しで通行止めで家に行くのを断念。
    3日後、自宅に自衛隊のボートで戻ることが出来た。
  • 自宅は3日後も10cm位水浸し状態。
    外見は大丈夫そうであるが、中は全滅の状況。

  • 冷蔵庫が倒れて、中の食材が出て、もの凄い悪臭を放っていたのにショックを受けた。洗濯機も倒れていた。キッチンも水膨れで使えない。ドアも下膨れして動かせない状況。

食卓の机の位置まで浸水しており、家を作った会社が被害の程度を調査に来て、あちこちの壁の中を検査し、結局1階は全部リフォームすることになった。幸い保険に入っていたので、保険適用出来る見込みでほっとしている。

  • 数キロ先に見える赤い屋根の建物が福祉センターで、そこでボランティア派遣やWC設置、配水等をやっていた。保険会社より、ボランティアが家を清掃すると、保険の査定が出来なくなるので手をつけないようにと言われてボランティアは頼まなかった。

  • 家財保険にも入っており、今日被害のあった家財を申請する予定。また、被災者申請もした。コミュニケーションは全て娘が手話が出来るので通訳してくれた。
  • 娘のホテルから7人が来て、使い物にならない家財の運び出しや、200リットルの水タンクによる高圧洗浄で汚れた庭の清掃をやってくれて大変助かった。
  • 娘から言われて、市役所職員や電気会社の訪問を受けたときには必ず身分証明を確認するように注意した。
  • 防災無線は、雨やヘリの音がうるさく、聞こえる人もなかなか聞き取れない状況であった。
  • 新聞報道によると、決壊前後、手が回らず、防災メールの発信が出来なかったそう。

茨城県常総市は21日、関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防が決壊した10日に、避難指示や避難勧告に関する携帯電話などへの「エリアメール」を配信していなかったことを明らかにした。市は「防災行政無線で伝えることを優先した。メール入力の余裕はなかった」と説明している。
 エリアメールは、携帯電話会社3社のメール機能を使って緊急情報を一斉に知らせる仕組みで、常総市は2012年3月から運用を開始した。10日に配信したのは午前7時14分の大雨注意情報、午後3時10分の避難所開設情報など7回。午前2時20分以降、計10回出した避難指示・勧告は抜け落ちていた。
 メールの配信作業ができる市職員は市安全安心課の4人。手が空いた人が対応することにしていたが、当日は防災行政無線や消防などとの連絡に追われ、手が回らなかったという。これまでの防災訓練でもメール配信を実施しておらず、同課の斎藤健司課長は「あらゆる手段で情報を伝えるべきだった」と話している。
【毎日新聞・9/21玉腰美那子】

  • 今回は自分は特に協会に何かして欲しいということはないが、同じようなことが起きた場合、3日目以降に、聞こえない仲間がガラスの清掃等お手伝いに来て頂ければとても嬉しいだろう。是非考えて欲しい。

(2)決壊地の視察、最も浸水被害が大きかった地点の視察

  • 決壊堤防は暫定補修が終わっている(鉄板が並んでいるところ)

  • 水海道の町の中のそば屋。あちこちのお店が閉まっており、住民の暮らしがまだ戻っていない状況が伺える。

  • 街の中は、ある程度清掃されているが、町外れに行くとまだ手つかずの状況だった。

  • ガードレールの損傷が至る所に見られ、水流が激しかったことを物語っている。

  • 普段はこんなに水量の少ない川が氾濫して大きな被害を生んだ。

(3)災害対策本部との意見交換

  • 9/9発災後、災害対策本部が出来たのが9/20、被災者とのコンタクトがとれたのが9/27。
  • 発災後、下妻市協会は、周辺地域(常総市を含む)の安否確認に努めた。会員はほぼ全員LINEを使用しており、安否確認がとれた。今回の被災者の他に夫婦2名浸水し、避難した人もいる。非会員で石下駅そばにいる人にも聞いたが、いずれも大丈夫とのことで、それ以上のことは手出ししていない。
  • 茨城県は家族の絆が強く、親兄弟のサポートが手厚い。(東北3県と同じ状況)しかし、ろう者だけの世帯もあるので、災害支援は必要。
  • 一番困ったことは、やはり非会員の安否確認。限界を感じる。非会員は相談員を通した繋がりがあるので、もっと相談員が災害支援にどのように関わるか考えて行きたい。
  • 災害=地震というイメージが根強く、台風や大雨等様々な災害があることをもっと認知してもらえるように周知活動を進めて行きたい。
  • 下妻市協会で、8/31にろう者も参加した防災訓練を行ったばかりで、9/9の災害対応に役立った面がある。(被災者もこの防災訓練に参加していた)
  • 中央本部としては、要請があれば、出来ることはやるので、災害対策本部で何かあれば遠慮なく相談して下さいと伝えました。

視察では、外から見ると被害もなく、暮らしも戻っているように見えますが、説明を聞いたり、現状を見るとまだまだ大変と言うことがよく分かりました。

以上、ご報告致します。

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