厚生労働省へ「障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ(第2回)におけるヒアリング」の意見書を提出



日時:2015年(平成27年)1月23日(金) 9:30~12:30
場所:TKPガーデンシティ竹橋ホール10C(10階)
出席:小中副理事長、中橋情報・コミュニケーション委員会委員長

全日本ろうあ連盟より、下記の意見書を提出しました。

障害者福祉サービスの在り方に関する論点整理のためのワーキンググループによるヒアリングへの意見書

一般財団法人全日本ろうあ連盟

【3年見直しの項目】

① 常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの在り方

② 障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方

③ 障害者の意思決定支援の在り方、障害福祉サービスの利用の観点からの成年後見制度の利用促進の在り方

④ 手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方

⑤ 精神障害者及び高齢の障害者に対する支援の在り方

 当連盟より下記意見を提出いたします。

見直し項目④ 手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方について

【基本姿勢】

1)聴覚障害者の主体的な社会参加を支援する手話通訳が提供されるためには、手話通訳技術、倫理、聴覚障害者のエンパワーメントや周囲の人々を含めた関わり方や働き方等を学び実践していく専門性が必要です。有償ボランティアによる手話通訳者派遣事業が中心になっている現状は問題がありますので、より専門的な養成機関、(手話通訳士)国家資格制度による質の担保、正職員として雇用される設置手話通訳者が核となる制度設計を早急に構築する必要があります。

2)私たちが進めてきている「情報・コミュニケーション法(仮称)」および「手話言語法(仮称)」の制定が必要と考えます。

・基本的な課題について

1)障害者総合支援法・地域生活支援事業による手話通訳事業は、今後、障害者差別解消法の施行に伴う合理的配慮の推進にかかわって、当面はこれまでの役割を果たしつつも、合理的配慮の提供の推進と手話通訳事業の役割分担について検討する必要があります。
 コミュニケーションにかかるバリアフリーを実現する一環としての意思疎通の人的支援について、福祉サービスのみに依拠するのでなく、医療、労働、教育、司法などの社会サービスを担う機関としての実施、財政責任の在り方についても検討するべきです。

2)手話通訳者の資格は他の福祉職とは異なり技能認定試験で厚生労働大臣の公認資格となっています。他の専門職と同様に、地域で養成する仕組みに加え、専門職養成課程を整え、専門学校、大学等で養成し、法定資格(国家資格)を設けることが必要です。

・制度実施についての課題について

1)実施状況
 障害者総合支援法への改正により、意思疎通支援事業の位置づけを整備し、都道府県・区市町村意思疎通支援事業実施要綱等の通知により、手話奉仕員養成事業や手話通訳者養成事業の必須事業化、都道府県手話通訳者派遣事業の必須事業化などの改善が図られました。しかし、手話通訳者派遣事業の実施率は73%、手話通訳者設置事業の実施率は30%と低く、特に手話通訳者設置事業の実施率が低い水準にあります。論点の一つとして手話通訳設置事業の在り方について取り上げるべきと考えます。

2)制度の脆弱さ
 地域生活支援事業は補助システムであり、財政的裏付けが乏しいため、コミュニケーション保障という重要な役割を担っているにもかかわらず、必要な予算が確保されていません。また、都道府県・区市町村の財政状況の厳しさもあり、地域格差が大きく生じています。事業実施に必要な予算確保の法的根拠を確立することが必要です。
 手話通訳利用は国民の権利として保障されるべきであり、実施体制の整備を国・地方自治体に義務づけることが必要です。

3)手話通訳者の身分保障
 手話通訳者派遣事業を担う登録手話通訳者は有償ボランティア、手話通訳者設置事業による雇用手話通訳者のほとんどは非常勤嘱託職員であり、このため手話通訳者の確保に自治体も苦労しておられることを聞いています。介護職と同様、雇用計画の在り方や賃金の在り方についても論点として取り上げるべきです。(手話通訳設置事業の実施自治体数:537市/1,742市 2014年3月開催の障害保健福祉関係主管課長会議資料より)

4)事業内容の不十分さ
 聴覚障害者の暮らしにくさは、意思疎通支援だけでカバーされるものではありません。聴覚障害者のエンパワーメント、情報アクセシビリティの環境整備、ネットワークづくりと意思疎通の環境整備、相談支援、必要に応じて関係機関につなぐなどの幅広い専門的な知識が必要です。しかし現状では、手話通訳者が上記のような取り組みを個人として担わざるを得ない状態があり、十分に対応ができない状況です。手話通訳者個人が担うのではなく、聴覚障害者情報提供施設や手話通訳派遣事業所等が担える制度に整備にする必要があります。

5)利用者負担について
 意思疎通支援事業の利用者負担については、これまで負担無しで行われてきたこと、コミュニケーション支援が必要とするのは聴覚障害者だけでなく、聴覚障害者と係わる聞こえる人たちも同様であり、また、個人の利用だけでなく複数の利用もあるので、現状では利用者に負担を求めることはありません。障害者権利条約の理念、障害者差別解消法の基本方針に基づいて社会が支えあう観点で利用者負担を求めないことを、さらに法制度で明記する必要があると考えます。

 以上の点を踏まえ検討していただきたいと思います。

 また、ワーキングおよび作業チームに当事者の参画を求めてきましたが、外されたことは極めて遺憾です。今回のヒアリングには、意思疎通支援事業の当事者でもある手話通訳者団体・要約筆記団体等を呼び、引き続きヒアリングを行ってください。
 また、社会保障審議会障害者部会でもこういった団体のヒアリングの機会を作るようにしてください。

その他の見直し項目について。

見直し項目① 常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの在り方について

 一部の自治体においては「社会的雇用」のモデル事業に取り組み成果をおさめているところもありますが、一般就労か、福祉的就労かの二者選択ではなく、障害者の特技や能力を生かした、社会的雇用の市場拡大・充実についても検討すべきではないかと考えます。
 また、障害者の移動支援について、グループホームの利用者が利用しやすく地域格差のないように、また、広域でも利用できるように条件の整備をすべきです。

見直し項目② 障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方について

 聴覚障害者、ろう重複障害者の障害特性を正しく反映するよう、「視力」「聴力」の項目に合わせ、「言語」を調査項目に追加するなど、コミュニケーション関連項目等の扱いについて論点の一つとして検討する必要があります。
 サービス利用計画書作成が義務化されていますが、自治体(委託事業所含む)における策定の状況は芳しくありません。報酬単価が低すぎるため「相談支援事業所」を積極的に開設する事業所も少ない状況です。改めて人件費に見合う報酬単価に見直す必要があります。

見直し項目③ 障害者の意思決定支援の在り方、障害福祉サービスの利用の観点からの成年後見制度の利用促進の在り方について

 障害者の高齢化が進み、成年後見人制度の必要性は今後さらに高まっていくことが想定されます。しかしながら、成年後見人制度の活用にあたっての費用負担が障害者の生活に重くのしかかっており、貯蓄もなく家族からの財政的支援がない障害者は利用したくても利用できない状況です。利用にあたっての費用の公的な助成制度の充実・拡充が必要です。