厚生労働省へ聴覚障害者の福祉施策について要望書を提出



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 2015年1月21日(水)、全日本ろうあ連盟福祉基本政策検討プロジェクトチームは、厚生労働省へ、聴覚障害者の福祉施策について要望書を提出し、意見交換を行いました。
 
【写真】
1枚目 左:小中副理事長
    右:厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 企画課
      自立支援振興室 室長 竹垣守 氏
2枚目 左:厚生労働省
    右:福祉基本政策検討プロジェクトチーム
 
●厚生労働省要望交渉
日時: 2015年1月21日(木)13時30分~
内容: 聴覚障害者の福祉施策についての要望
出席: 福祉基本政策検討プロジェクトチーム
委員長  小中 栄一   全日本ろうあ連盟
     松本 正志     (同上)
     渡邊 健二   全国ろう重複障害者施設連絡協議会
     吉見 剛二   全国高齢聴覚障害者福祉施設協議会
     永井 紀世彦    (同上)
     速水 千穂     (同上)
     山口 愼一     (同上)
     近藤 幸一   全国聴覚障害者情報提供施設協議会
             全国手話通訳問題研究会
     清田 廣    全国ろうあヘルパー連絡協議会
     廣田 しづえ    (同上)
     及川 リウ子    (同上)

連本第140491号
2015年1月21日

厚生労働大臣
  塩 崎 恭 久 様

一般財団法人 全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者の福祉施策に関する要望について

 時下、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
 平素より聴覚障害者福祉の向上にご理解、ご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
 さて、障害者福祉におきましては、障害者の権利に関する条約に基づき、障害者基本法では、共生社会を実現するため、「あらゆる分野の活動に参加する機会」「どこで誰と生活するかについて選択する機会」「言語(手話を含む)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会」の拡大が不可欠であるとされています。
 聴覚障害者福祉の分野におきましては、全日本ろうあ連盟において、聴覚障害者福祉の関係諸団体に集まってもらい、共生社会実現のための福祉基本政策検討プロジェクトチームを設けて検討を進めております。これまで関係団体が各々要望してきた事項の中で、現在検討されている施策や計画の中に是非とも反映していただきたい事項について下記の通り要望として取りまとめました。
 つきましては施策に反映するとともに、必要な予算措置を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

<要望事項>

1 全国の聴覚障害者が地域格差なく福祉サービスの利用ができるよう、社会福祉施設等の社会資源の整備を図って下さい。

(1)全ての都道府県及び政令指定都市に「聴覚障害者情報提供施設」を早期に設置するよう、強く働きかけて下さい。
また、防災・災害対策及び支援の機能を施設の役割の一つに加え、意思疎通支援のコーディネート及び養成担当者、相談支援担当者、IT指導員の人員増員を行うとともに、職員の昇給ができるよう運営費を増額して下さい。

(2)全ての都道府県に聴覚障害児や聴覚障害者が、情報アクセスとコミュニケーションのバリアなく、自ら選択する言語・コミュニケーションにより利用できる、放課後等デイサービス、地域活動支援センター、グループホーム・ケアホーム、特別養護老人ホーム等の社会資源を計画的に整備して下さい。そのために、市町村単位だけでなく、広域で事業運営ができるように施策を講じて下さい。
聴覚・ろう重複障害者が利用するグループホームに「視覚・聴覚言語障害者支援体制加算」を適用して下さい。
小規模デイサービス事業所への報酬切り下げはしないで下さい。

(3)高齢ろう者が利用できる介護保険サービスは限られています。高齢ろう者が、聴覚障害の特性に対する理解や配慮のない介護保険サービスを受けざるを得ない現状を改善するため、障害福祉サービスと介護保険サービスどちらも選択できるようにするなどの施策を講じて下さい。
高齢ろう者が、聴覚障害の特性に配慮された「安心して利用できるサービス(事業所)が少ない」なかで、身近にある障害福祉サ-ビスおよび介護保険サ-ビスが選択できることは、非常に重要です。しかし、2006年の障害者自立支援法の施行に伴って、『介護保険優先原則』が強調され、65歳に達したときに障害福祉サ-ビスの利用を制限されるケ-スが多発しています。65歳になったら障害がなくなるわけではありません。

(4)補足給付において、現在検討されている「障害基礎年金等を所得と勘案」した結果、負担段階が第2段階から第3段階となり、月額負担額が75,300円(特別室利用84,300円)となります。障害基礎年金が月額80.500円という状況では、特養への入居は困難です。また、豊かな暮らしの継続はできません。「非課税の障害者福祉年金を所得とみなす」という方針を改め、現状のままの継続をお願いします。

(5)要支援1・2の訪問介護(ホ-ムヘルプ)と通所介護(デイサービス)を介護給付の対象から外さず、現行制度と同様継続して利用できるように検討してください。
要支援1・2のろう高齢者が、地域の「ふれあいサロン」等の総合事業を利用するとなると、そこには手話等で話ができる利用者や職員がおらず、孤立した状態になります。そのため通所を断念し、自宅に閉じこもりとなり、最終的に生活意欲や身体機能の低下を招くことが予測されます。

2 社会保障審議会ではワーキンググループを設け、障害支援区分認定を含めた支給決定のあり方について検討されることになっていますが、聴覚障害者やろう重複障害者、高齢聴覚障害者の障害特性を正しく反映するよう、コミュニケーション関連項目等の扱いを変更するとともに、「視力」「聴力」の項目に合わせ「言語(発語)」を調査項目に追加して下さい。介護区分認定についても同様に改善して下さい。

3 聴覚障害者福祉に関わる人材養成・確保を強化して下さい。

(1)手話通訳者、手話通訳士については、嘱託や非常勤といった非正規雇用が多く、一向に改善されないままの現状を鑑み、意思疎通支援事業の必須事業である手話通訳設置事業において、正規雇用となるよう施策を講じてください(雇用されている手話通訳者1,189人中、正規職員233人(19.6%)、非正規職員945人(79.5%)/2010年度一般社法人全国手話通訳問題研究会の全国調査から)。
そして、障害者差別解消法における合理的配慮の対応要領および対応指針に、自治体庁舎内などの公共施設での手話通訳者配置について明記するよう、内閣府に働きかけて下さい。
また、登録手話通訳者については労働者として位置付け、労災保険に加入できるよう雇用契約を行うことにより派遣する制度として下さい。

(2)全ての都道府県で手話通訳者、要約筆記者の養成、並びに養成を担当する講師の養成を早期に実施するよう働きかけて下さい。

(3)自治体や情報提供施設において、聴覚障害を専門とする相談支援者の正規雇用を義務付けるとともに、相談支援者の研修事業を新設して下さい。

4 情報アクセス・意思疎通支援を受ける権利について規定し、利用者負担なしの原則に基づき、全国共通の意思疎通支援制度の仕組みについて、障害当事者団体・関係団体とともに検討を進めて下さい。