文部科学省へ「聴覚障害者のスポーツ施策への要望について」要望書を提出



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 12月3日、文部科学省スポーツ青少年局を訪問し、要望書を手渡し、意見交換を行いました。
 
【写真】
左から:長谷川副理事長、太田スポーツ委員会委員長、大竹スポーツ委員会事務局長

連本第140452号
2014年12月3日

文部科学大臣
下村 博文 様

162-0801
東京都新宿区山吹町130SKビル8階
Tel03-3268-8847・Fax03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者のスポーツ施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 国連の障害者権利条約において、障害のある人が平等にあらゆるスポーツ活動に参加できるよう定めております。また、2020年オリンピック・パラリンピックの開催地が東京都に決まったことを機に、国内における障害者へのあらゆるバリアフリーを推進させる施策について広く審議されています。これら障害者のスポーツ施策への取り組みがより一層、国民の皆さまから後押しして頂けることを期待しております。
 つきましては、さらなる聴覚障害者スポーツの施策推進をお願いしたく、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

1.全国のスポーツ施設やスポーツクラブに聴覚障害児・者が日常的にスポーツ活動に参画できるよう、振興対策を講じてください。
① 全国のスポーツ施設における情報バリアフリーの徹底を図ってください。
(説明)

 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、スポーツ施設の整備が始まっていますが、新施設計画や既設スポーツ施設に対し、選手を含む障害者・国民や海外の人が安心して利用できるよう、ハードやソフト面で見直しが進められると思います。この中で聴覚障害者への情報伝達も含めたバリアフリーの徹底を図ってください。

② スポーツ指導者や障害者スポーツ指導員に、「聴覚障害の理解」の啓発に力を入れてください。
(説明)

 地域スポーツクラブやスポーツ施設には公益財団法人日本体育協会が導入しているスポーツ指導者が配置されていると思います。また日本障害者スポーツ協会には障害者スポーツ指導員が導入されています。これらスポーツ指導に携わる方が、聴覚障害児・者に対してスポーツを楽しんでもらうために「聴覚障害の理解」を広げるとともに、障害者基本法で「言語」と定義された手話を普及させるための施策を講じてください。これによってすべての地域で、聴覚障害児・者が障害のない人たちと一緒に日常的にスポーツ活動を楽しめるようになります。

③ 聴覚障害児・者が安心してスポーツに参加できるために、全国各地域のスポーツ教室やスポーツクラブにおける聴覚障害者への情報保障や、聴覚障害者スポーツへの理解を推進する施策をお願いします。
(説明)

 世界でもトップレベルを目ざすスポーツ競技選手や日常生活の中で生涯スポーツを楽しむ聴覚障害者を増やすためには、常日頃からスポーツに親しみ、練習、競技を行うことができる環境を整備し、裾野を広げることが必要です。そのためには、地域で身近な存在であるスポーツ教室やスポーツクラブで、聴覚障害児・者が「手話」などコミュニケーションが保障されたスポーツ活動ができるよう、障害者を受け入れるためのガイドラインなどで受け入れ体制に関する施策を講じてください。

2.デフリンピックに対する国民の理解促進を講じてください。

① 国民へのデフリンピックを始めとする聴覚障害者スポーツに対する啓発のための事業に関する制度創設及び拡充を図ってください。
(説明)

 デフリンピックに関するメディアの取り扱い、国民の関心は以前に比べれば高くなったものの、オリンピック、パラリンピックに比べるとまだまだ低いと言わざるを得ません。そのため、周囲から理解を得られず、聴覚障害者がスポーツ活動を行うにも周囲からの協力が十分ではありません。
 当連盟としても、社会へのデフリンピック啓発普及事業を行ってきておりますが、まだまだ不十分であり、この事業をより一層拡充させていく必要があります。 国民、社会へのデフリンピック啓発普及事業に対する取り組みに対する制度の創設及び拡充を要望します。

② 小学校・中学校の教科書にオリンピック、パラリンピックとあわせ、「デフリンピック」等の障害者スポーツに触れる項目を作成し、その啓発を図ってください。
(説明)

 小学校・中学校とりわけろう学校においてもデフリンピックや、聴覚障害者スポーツの認知はまだまだ低く、障害者のスポーツ全般がまだまだ社会的認知を受けられない状況が続いています。障害者スポーツのすそ野を広げるためにも、小学校・中学校の教科書にオリンピック、パラリンピックとあわせ、「デフリンピック」等の障害者スポーツに触れる項目を作成し、その啓発を図ってください。

3.聴覚障害者の競技スポーツにおける競技力アップに向けて施策の実施と拡充を行ってください。

① 聴覚障害者のアスリートがデフリンピックに参加するにあたり負担が生じないよう、デフリンピック派遣への補助を拡充してください。
(説明)

 2013年度の第22回夏季デフリンピック競技大会2013ソフィアは、貴省の多大なご支援のおかげで選手・スタッフ219名を派遣することができました。その結果、過去最高のメダル数21個を獲得することができました。世界の大舞台にて日本を代表して善戦を繰り広げた様は、私たち聴覚障害者に大いなる勇気と希望を与えてくれました。それだけでなく、日本代表団選手・スタッフの家族や会社、引いては国民に対し、聴覚障害に対する理解を大きく広めることができました。
 パラリンピックも同様ですが、デフリンピックは選手が力を競うだけでなく、その大会を通して社会へ障害者への理解を啓発していくことに大きな意義があります。そのため、デフリンピックには日本を代表するに値する選手を少しでも多く送り出したいと考えます。
 2015年度アジア太平洋ろう者スポーツ大会(台湾)、次回デフリンピック(2017年トルコ)等の国際大会が計画されていますので、この派遣のための施策の実施と拡充を要望いたします。

② 当連盟が主催する「全国ろうあ者体育大会」の安定した継続開催のために財政的支援をお願いします。
(説明)

 主に手話をコミュニケーション手段とする聴覚障害者は、長い間、聴覚障害者に対する偏見や手話の普及がなかなか進まない中で、手話によるスポーツ交流や競技力向上の場として当連盟が主催する全国ろうあ者体育大会(夏季大会は毎年、冬季大会は現在1回/4年開催)を全国各地輪番制で毎年1回開催することで、国内トップレベルの聴覚障害者アスリートが結集する国内最高の競技大会になっています。
 しかし、ここ数年は行政の財政緊縮によって当体育大会に対する補助金が減額され、当連盟の自力運営は限界に近づいています。デフリンピックやアジア太平洋ろう者スポーツ大会などの国際大会への競技力向上のためにも全国ろうあ者体育大会への財政的支援を要望します。

③ 聴覚障害者アスリートや指導者の育成、指導法の研究の促進に関する施策の実施と拡充を行ってください。
(説明)

 現にオリンピック、パラリンピック選手の競技力向上のための対策が進められていますが、デフリンピックも同様です。デフリンピックや競技ごとに開かれる世界選手権へ出場する聴覚障害者アスリートの発掘・育成・強化のために、聴覚障害の特性に通じた指導ができる指導者の育成が求められます。デフリンピックの知名度を高め、聴覚障害者アスリートの意欲を高めるためにも、より一層、聴覚障害者アスリートの育成・強化に対する取り組みのための財政的支援を要望します。

4. 聴覚障害者の特性に合わせた機器の開発や普及をお願いします。
(説明)
 国連の障害者権利条約において、障害のある人が平等にあらゆるスポーツ活動に参加できるよう定めております。 聞こえによる情報が得られない聴覚障害者が障害のない人とスポーツ交流ができるよう、必要な専門知識、用品等の開発、実践研究に取り組めるよう、施策を講じてください。例えば、スターターピストルに変わる機器(スタート姿勢で目視できる位置でランプによるスタート合図)が開発されています。この取り組みで聴覚障害者が音や声による情報を不利とせず、ろう学校だけでなく地域の小中学校や高校などでのびのびとスポーツ交流ができます。