厚生労働省へ聴覚障害者の福祉施策について要望書を提出



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 2013年11月15日(金)、厚生労働省を訪問、聴覚障害者の福祉施策について要望書を提出し、意見交換を行いました。
 
【写真】
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 企画課自立支援振興室を訪問:左奥から松本福祉・労働委員会委員長、長谷川副理事長、吉原情報・コミュニケーション委員会副委員長

連本第130505号
2013年11月15日

厚生労働大臣
 田村 憲久  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎 

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、本年6月16日山形県山形市において開催された第61回全国ろうあ者大会にて、聴覚障害者の福祉施策に関する大会決議を行ないました。ついては、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

1.聴覚障害者情報提供施設について下記事項を要望します。

(1)全ての都道府県及び政令指定都市に聴覚障害者情報提供施設を早期に設置されるよう、強く働きかけてください。

(2)東日本大震災の被害を受けた東北地方の聴覚障害者情報提供施設については優先的に設置且つ設置・整備にかかる費用については、特段の助成措置を図って下さい。

(3)聴覚障害者情報提供施設において、相談支援に係る人員の配置、コミュニケーション支援に係る人員の配置のための運営費を増額してください。

2.ろうあ者相談員について下記事項を要望します。

(1)地方自治体独自施策の「ろうあ者相談員」制度を「聴覚障害福祉士(仮称)」制度として国の制度に位置づけて実施いただきますようお願いします。
(説明)特に災害後の聴覚障害者の生活再建・メンタル支援には全国のろうあ者相談員の連携が必要になります。
 緊急災害時のみならず、聴覚障害者の相談支援には聴覚障害者と同じ言語・コミュニケーション手段を持ち、当事者の特性や生活実態等を理解しており、更に相談支援のノウハウを身につけていることが大切です。身体障害者相談員制度とは全く別のもので専門性を持ったろうあ者相談員であることを念のために申し添えます。
 現状ではろうあ者相談員は地域によってその条件や身分がまちまちであることから、相談支援の地域間格差をなくし、地域内だけでなく必要に応じて広域で支援できる体制となるよう、国の制度に位置付けて実施してください。

(2)「ろうあ者相談員」制度が国の制度となるまでの間、ろうあ者相談員の専門性の確立と資質の向上を図るための研修事業費を新設して下さい。

3.障害者総合支援法に係る下記の事項を要望します。

(1)地域で自立した生活を営む基本的権利として「障害者は、自ら選択する  言語(手話など)及び自ら選択するコミュニケーション手段を使用して、市民として平等に生活を営む権利を有し、そのための情報・コミュニケーション支援を受ける権利が保障される」ことを規定して下さい。

(2)「コミュニケーション支援及び通訳・介助支援」は、全国共通のしくみで提供される支援と位置づけ、利用者に費用は求めないことと規定して下さい。

(3)障害者総合支援法は、障害者手帳を所持する障害者に限定することなく、現行の身体障害者程度等級表に該当しない聴覚障害者もコミュニケーション支援等を利用できるようにして下さい。

(4)「コミュニケーション支援及び通訳・介助支援」を円滑にまた効果的に進めるために聴覚障害の特性、生活実態等を理解し、ニーズに応じた支援を行えるノウハウをもつ専門性のあるコーディネーターの設置が必要です。そのためのコーディネート費を新設してください。

(5)「基幹相談支援センター」に手話通訳士有資格者やろうあ者相談員等を配置できるよう明確に規定して下さい。

4.ろう重複障害者の豊かな地域生活のために下記の事項を要望します。

(1)ろう重複障害者の生活と職業について、入所施設の個室化を図ると共に、一日も早くろう重複障害者が地域で生活できるよう施策を講じて下さい。

(2)ろう重複障害者施設を存続し、ろう重複障害者自らが希望する場所、形態で生活できるよう、社会資源の充実および報酬・人的配置・情報設備の設置に関する配慮を要望します。
(説明)「障害者総合支援法」では障害者の地域移行を促進する内容になっており、その趣旨に基本的には賛同します。しかしろう重複障害者はコミュニケーション等の特性から集団で生活する必要性があり、それに対する支援者に専門性が求められます。この意味でろう重複障害者施設は彼らの生活の場として大変重要な役割を担っています。
 ろう重複障害者施設、グループホーム、ケアホームといった形態を充実させ、ろう重複障害者が安心して生活できる社会資源の充実を要望します。
 また、共同生活介護(ケアホーム)の共同生活(グループホーム)への一元化するにあたって、報酬および人的配置に影響が出ないよう配慮を要望します。また、フラッシュランプや電光文字表示等の情報設備について補助して下さい。

5.ろう重複障害者が多く利用する無認可あるいは小規模作業所について、日中活動における「広域の条件」の見直しをおこない、広域事業として存続・発展ができるような施策を講じてください。
(説明)ろう重複障害者の場合、個々の市町村において事業を行う時、対象となる人数が少ないため、5名程度の無認可作業所から誕生しました。その一方で、障害者自立支援法に基づく事業移行(選択)が迫られる中で、地域生活支援事業、個別給付の事業選択や多機能型事業所への移行を検討したくても、最低人数(定員)の要件(基準)により困難であるのが実態です。
 ろう重複障害者の支援の専門性を軽視して、市町村がこれらの無認可作業所に対して、他の健聴者施設の法人・施設との合併・吸収を迫ってきており、その中にはここ数年市町村の無認可作業所への補助金を減額してきているところもあります。障害の実態、支援の専門性と集団等を踏まえ、今後も増加が見込まれる、ろう重複障害者を対象とした「無認可作業所」が地域生活支援事業における広域事業として運営できるよう、施策を講じると共に各市町村への指導を行ってください。
 また、地域活動支援センターが広域事業として運営できるよう、障害特性に応じて都道府県事業に位置づけるなど弾力的な施策の展開をして下さい。
 なお、「全国ろう重複障害者施設連絡協議会」からも同様の要望を提出しています。

6.65歳に達した障害高齢者は、介護保険制度を優先に利用することになっていますが、ろう高齢者は「ろう」障害の特性から、コミュニケーション、意思疎通や情報提供が不可欠です。8月29日に開かれた「障害者の地域生活の推進に関する検討会」に意見書を出していますが、聴覚障害者の場合、特にニーズの高まるのが65歳を超える高齢者であり、介護保険制度優先とせず、聴覚障害者が必要とする障害者福祉サービスが提供されるよう条件を緩和して下さい。

7.聴覚障害者でも使える、字幕またはテロップ等の文字表示機能付きのAED(自動体外式除細動器)の設置の義務化又は法制化を消防庁と連携して、取り組んで下さい。
(説明)全国の各地にはAEDを設置した、自治体、駅、空港、学校、会社を含める施設が加速的に増加しています。突然の心停止が発生した場合でも迅速に対応できる体制が確立されつつ、一人でも多くの命を助けることが国民にとって喜ばしいことであります。しかし、現在設置されているAEDはほとんど音声方式であるため、聴覚障害者には不向きとなっています。救急蘇生教育又は救急法講座を受けた聴覚障害者が大勢いるにもかかわらず音声方式のAEDでは使えない状況です。国や地方公共団体がバリアフリーで誰でも暮らしやすい、使いやすい社会実現への一つのステップとして字幕またはテロップ等の文字表示機能付きのAEDの設置の義務化又は法制化を図ってください。

以 上