厚生労働省へ手話通訳事業に関する要望書を提出



 2013年8月22日(木)、厚生労働省を訪問、手話通訳事業に関する要望について要望書を提出し、意見交換を行いました。
 
【写真】
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 企画課自立支援振興室を訪問:
左より、吉原情報・コミュニケーション委員会副委員長、中橋委員長

連本第130327号
2013年8月22日

厚生労働大臣
 田村 憲久 様

〒162-0801新宿区山吹町130 SKビル8F
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

手話通訳事業に関する要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 貴省におかれましては、障害者権利条約及び障害者基本法の趣旨に基づき、聴覚障害者福祉の施策推進を図り、障害者総合支援法・地域生活支援事業の実効ある実施をお願いしたく、下記の通り要望いたします。

1. 本年4月より障害者総合支援法の意思疎通支援事業で施行された手話通訳事業(養成、登録(認定)、設置・派遣)を推進するために手話奉仕員及び手話通訳者養成カリキュラムの見直しを含めて「(仮称)手話通訳事業見直し検討委員会」を貴省に設置してください。設置の際は、聴覚障害当事者に委員を委嘱してください。

(説明)
1 養成事業について
 (1)わが国の手話奉仕員及び手話通訳者の養成は、平成10年7月24日(障企第63号)、都道府県及び市町村に厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課長名で通知された「手話奉仕員及び手話通訳者養成カリキュラム」(以下、厚生労働省カリキュラムという。)とこの養成カリキュラムに対応したテキストによる地域講習会が担ってきました。以来15年間、これらの事業は、手話の普及、手話ボランティアや手話通訳者養成の全国共通化、通訳技術の均質化、通訳者設置事業及び派遣事業などを支えてきました。

 (2)しかし、同時に全国的に受講者層の幅の広がり(学童から高齢者)、手話通訳実践の蓄積による手話通訳理念や理論の深まりなど学習効果を高める課題や新しい理念や理論を反映させた新テキストを早急に作成する必要があります。
 また、地域講習会は、一般的に週1回、2時間程度の講座が多く学習効果が上がりにくいこと、年齢や職業等受講者層の幅が広く講座運営が難しいことなど課題も抱えています。

 (3)社会福祉法人全国手話研修センターにおいて10年ぶりに改訂する新テキストは、厚生労働省カリキュラムに準拠しながら、必須事業となった手話奉仕員養成事業をどこの市町村でも取り組めるようテキストの工夫を行ったり、手話通訳養成では様々な課題をクリアするため、講座時間を増加するなど工夫をしています。
 しかし、都道府県、市町村は、あくまでも厚生労働省カリキュラムに基づいた予算査定であり、増加分の予算化は大変難しいのが現状です。
 つきましては、厚生労働省において手話奉仕員及び手話通訳者養成カリキュラムの見直しを強く求めます。

2 認定制度について
 (1)手話通訳士試験制度について、受験料が高額であること、受験会場が全国で3カ所しかなく不便で、旅費等の負担が大きいことなどで主婦層が中心の受験者にとって経済的負担が大きく、受験者数が年々減少しています。

 (2)厚生労働省の手話通訳者養成カリキュラム修了者を対象に都道府県知事(政令指定都市市長)が実施する登録試験制度も社会福祉法人全国手話研修センターが行う全国統一試験制度に46都道府県4政令市が参加しており、実質上全国統一基準による都道府県レベルの認定制度となっています。
 しかし、手話通訳士試験制度との統一性はなく、統一化による手話通訳士養成カリキュラムの作成、免除科目の設定等による試験会場の増加、受験生の負担軽減、これらを通じて受験生の増加を図る等検討が必要となっています。

3 認定・派遣事業について
 (1)本年4月より障害者総合支援法の施行に伴い、奉仕員養成事業及び通訳者養成事業が必須事業となりましたが、従来から市町村の必須事業である手話通訳設置事業は8年を経過しても実施率が30%にとどまっていること、また設置された手話通訳者の大半が非正規雇用であること等課題を抱えたままになっています。

 (2)手話通訳者派遣事業も、派遣コーディネーターの未設置、登録通訳者の複数市町村登録による健康問題等検討すべき課題は山積しています。

 つきましては、障害者総合支援法・地域生活支援事業をさらに推進し、手話通訳事業の一連の見直しを行うための「(仮称)手話通訳事業見直し検討委員会」を立ち上げてください。立ち上げの際、聴覚障害当事者に委員を委嘱してください。

以 上