公明党障がい者福祉委員会へ「障害を理由とする差別を禁止する法制」についての意見を提出



 2013年3月4日(火)、公明党障がい者福祉委員会による「障害を理由とする差別の禁止に関する法制について」のヒアリングがあり、久松事務局長と小出理事が出席、要望書を提出しました。

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連本第120557号
2013年3月4日

公明党 障がい者福祉委員会
委員長  高木美智代様

財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

「障害を理由とする差別を禁止する法制」についての意見

 日頃より、聴覚障害者の福祉向上について、格別のご理解とご協力を賜り、厚くお礼申しあげます。昨年9月14日、内閣府障害者政策委員会差別禁止部会から「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見が発表されました。障害者の社会参加には、障害を理由としての排除をなくし、その障害による不利益をなくすための「合理的配慮」を取り入れることが必要な条件となります。
 私たち聴覚障害者の社会参加に必要な「情報アクセシビリティ」について、一層の拡充を求めたく、以下の意見を提出いたします。

「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見について

① 横断的に存在する「情報・アクセス」の明記
 「情報・コミュニケーション」の項目では、「情報提供」「意思疎通」という枠組みでその差別禁止が提言されています。しかしながら、コミュニケーションは常に相手方が存在し、どの分野においても必ず発生するものです。情報保障やコミュニケーション保障が不要な分野は存在しません。各則に明記されるあらゆる分野の差別をなくすためにも、どの項目にも「情報・コミュニケーション」の「合理的配慮」について明記すべきと考えます。

② 「合理的配慮」の実行を担保する財源の明記
 「合理的配慮」が国民の理解が得られ広く実行するためには、財源の保障が必要不可欠です。「合理的配慮」の実行を確実にするためにも財源については明記すべきです。

③ 紛争解決にあたる機関の在り方
 紛争解決の機関は、すべての障害者に対し開かれたものでなければなりません。
 差別禁止法を運用するにあたり、紛争解決のために設置される機関とその役割については、裁判所と同様に、内閣からの独立性を担保しつつ、この場面においても、当事者間の情報アクセスやコミュニケーションの保障がなされることを明記すべきと考えます。

④ 法的救済と損害賠償請求権
 意見書では、どのような法的救済がなされるかについては、差別禁止法ではなく民法等の一般法によって定められるとなっています。「合理的配慮を行わないことは違法(差別)である」ということをより明確に打ち出すためにも、損害賠償請求権については、法律の施行後、段階的に検討すべき事項として取り組んでいただきたいと考えます。

⑤ 合理的配慮の不提供についての制約
 医療や司法等、個人の生命や人権を脅かす可能性のあるものについては、「合理的配慮の不提供」について、その判断を慎重にするのではなく、むしろ「過度の負担」を容易に判断しないよう一定の制約を設けるべきと考えます。

⑥ 言語及びコミュニケーション手段の自己選択
 聴覚障害者は音声からの情報を得ることができないため、手話言語や文字情報といった視覚的手段から情報を入手することも少なくありません。しかし、残存聴力の程度も個々人によって異なるように、手話通訳を選択する人もいれば、要約筆記者や文字通訳者を選択する人もいます。コミュニケーション手段は当事者自らが選択すべきであり、そのことをこの法律にも明確に記載すべきです。

⑦ 情報・コミュニケーションでの「差別をしてはならないとされる相手方の範囲」
 障害者差別禁止部会の提言では「一般公衆へ情報を提供する相手方」の中に事業者も含めた記述となっていますが、特にこの中でも、「電気通信事業法(昭和59年法律86号)に基づき電気通信役務を行う事業者」については明確に「差別をしてはならない相手方」として記載すべきだと考えます。
 社会に溢れる多くの情報は「音声通信」を基盤としています。音声通信を提供する事業者が音声通信のみならず、それに代わる通信手段(電話リレーサービス等)も提供することが、音声通信手段へのアクセスが制限されている障害者にとって合理的配慮となることを明確にするためにも、通信事業者については、より明確な記載すべきです。

⑧ 教育分野における「環境」について
 今回の提言では「インクルーシブ教育」に主眼が置かれています。それ自体を否定することではありませんが、聴覚障害教育の分野では、聴覚障害児には、そのおかれる環境が非常に重要なものであると指摘されています。
 聴覚障害児にとって、地域の学校の一般学級はもちろん、選択しうる環境の1つとしてろう学校や難聴学級があり、そういった情報を保護者や本人へ提供しないことは差別であることを踏まえ、インクルーシブ教育と併記して、こういった障害特性に合わせた教育環境を整備する場があることを明記していく必要があると考えます。

⑨ 既存の法律に点在する権利制限について
 成年後見人制度では、被後見人となった場合、判断能力がないということで選挙権が剥奪されています。障害者の保護という名の下に、本人が本来持つ権利を国が制限するということは、障害者の意思決定支援の観点から見ても、再考すべき内容です。障害者差別禁止法と併せ、既存の法律に点在する制限の撤廃についても見直しをすべきと考えます。

以 上