厚生労働省自立支援振興室を訪問、福祉及びスポーツ施策についての要望書提出と意見交換



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厚生労働省
自立支援振興室を訪問

文部科学省生涯スポーツ課を訪問

 2012年10月26日(金)、連盟福祉・労働委員会、情報・コミュニケーション委員会とスポーツ委員会合同で、厚生労働省自立支援振興室を訪問、福祉及びスポーツ施策について要望書を提出し、意見交換を行いました。
 
 (写真(上):左より、吉原情報・コミュニケーション委員会副委員長、小出福祉・労働委員会副委員長、長谷川副理事長、太田スポーツ委員長、嶋本スポーツ委員会事務局長)
 

連本第120364号
2012年10月26日

厚生労働大臣
 三井 辨雄  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
財 団 法 人 全 日 本 聾 唖 連 盟
理 事 長 石野 富志三郎

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、昨年、国連・障害者権利条約の批准に向けて、障害当事者が参画する「障がい者制度改革推進会議」において審議されてきた改正「障害者基本法」が施行されました。
 貴省におかれましては障害者権利条約及び障害者基本法の趣旨に基づき、来年4月から施行される「障害者総合支援法」が、「障害者総合福祉法の骨格に関する提言」と障害者自立支援法違憲訴訟の基本合意文書を尊重した法となるよう、聴覚障害者の福祉向上及び社会参加のための施策推進をお願いしたく、下記の通り要望いたします。

1.聴覚障害者情報提供施設について下記事項を要望します。
(1)全ての都道府県及び政令指定都市に聴覚障害者情報提供施設を早期に設置されるよう、強く働きかけてください。
(2)東日本大震災の被害を受けた東北地方の聴覚障害者情報提供施設については優先的に設置かつ、設置・整備にかかる費用についても特段の助成措置を図って下さい。
(説明)東日本大震災により壊滅的な打撃を受けた東北地方への聴覚障害者情報提供施設の設置について、全額国庫負担等により各県(福島県・宮城県・秋田県・山形県)に聴覚障害者支援の拠点である聴覚障害者情報提供施設の設立を早期に実現させる必要があります。
(3)聴覚障害者情報提供施設において、相談支援に係る人員の配置、コミュニケーション支援に係る人員の配置のための運営費を増額してください。
2.ろうあ者相談員について下記事項を要望します。
(1)地方自治体独自施策の「ろうあ者相談員」制度を「聴覚障害福祉士(仮称)」制度として国の制度に位置づけて実施いただきますようお願いします。
(説明)東日本大震災時、貴省の通達によりろうあ者相談員が被災地支援のための公的派遣の対象となりましたことについて、御礼申し上げます。
 特にこのような災害後の聴覚障害者の生活再建・メンタル支援には全国のろうあ者相談員の連携が必要になります。
 緊急災害時のみならず、聴覚障害者の相談支援には聴覚障害者と同じ言語・コミュニケーション手段を持ち、当事者の特性や生活実態等を理解しており、更に相談支援のノウハウを身につけていることが大切です。身体障害者相談員制度とは全く別のもので専門性を持ったろうあ者相談員であることを念のために申し添えます。
 現状ではろうあ者相談員は地域によってその条件や身分がまちまちであることから、相談支援の地域間格差をなくし、地域内だけでなく必要に応じて広域で支援できる体制となるよう、国の制度に位置付けて実施してください。
 
(2)「ろうあ者相談員」制度が国の制度となるまでの間、ろうあ者相談員の専門性の確立と資質の向上を図るための研修事業費を新設して下さい。
3.障害者総合支援法に係る下記の事項を要望します。
(1)地域で自立した生活を営む基本的権利として「障害者は、自ら選択する  言語(手話など非音声言語を含む)及び自ら選択するコミュニケーション手段を使用して、市民として平等に生活を営む権利を有し、そのための情報・コミュニケーション支援を受ける権利が保障される」ことを規定して下さい。
 
(2)「コミュニケーション支援及び通訳・介助支援」は、全国共通のしくみで提供される支援と位置づけ、利用者に費用は求めないことと規定して下さい。
 
(3)障害者総合支援法は、障害者手帳を所持する障害者に限定することなく、現行の身体障害者程度等級表に該当しない聴覚障害者もコミュニケーション支援等を利用できるようにして下さい。
 
(4)「コミュニケーション支援及び通訳・介助支援」を円滑にまた効果的に進めるために聴覚障害の特性、生活実態等を理解し、ニーズに応じた支援を行えるノウハウをもつ専門性のあるコーディネーターの設置が必要です。そのためのコーディネート費を新設してください。
 
(5)「基幹相談支援センター」に手話通訳士有資格者やろうあ者相談員等を配置できるよう明確に規定して下さい。
4.ろう重複障害者の豊かな地域生活のために下記の事項を要望します。
(1)ろう重複障害者の生活と職業について、施設入所者も含めた全国的な実態調査を実施し、その結果に基づき、一日も早くろう重複障害者が地域で生活できるよう施策を図るようにお願いします。
 
(2)ろう重複障害者施設を存続し、ろう重複障害者自らが希望する場所、形態で生活できるよう、社会資源の充実および報酬・人的配置への配慮を要望します。
(説明)「障害者総合支援法」では障害者の地域移行を促進する内容になっており、その趣旨に基本的には賛同します。しかしろう重複障害者はコミュニケーション等の特性から集団で生活する必要性があり、それに対する支援者に専門性が求められます。この意味でろう重複障害者施設は彼らの生活の場として大変重要な役割を担っています。
 ろう重複障害者施設、グループホーム、ケアホームといった形態を充実させ、ろう重複障害者が安心して生活できる社会資源の充実を要望します。
 また、共同生活介護(ケアホーム)の共同生活(グループホーム)への一元化するにあたって、入所制限の緩和をお願いすると共に報酬および人的配置に影響が出ないよう配慮を要望します。
5.ろう重複障害者が多く利用する無認可あるいは小規模作業所について、日中活動における「広域の条件」の見直しをおこない、広域事業として存続・発展ができるような施策を講じてください。
(説明)ろう重複障害者の場合、個々の市町村において事業を行う時、対象となる人数が少ないため、5名程度の無認可作業所から誕生しました。その一方で、障害者自立支援法に基づく事業移行(選択)が迫られる中で、地域生活支援事業、個別給付の事業選択や多機能型事業所への移行を検討したくても、最低人数(定員)の要件(基準)により困難であるのが実態です。
 ろう重複障害者の支援の専門性を軽視して、市町村がこれらの無認可作業所に対して、他の健聴者施設の法人・施設との合併・吸収を迫ってきており、その中にはここ数年市町村の無認可作業所への補助金を減額してきているところもあります。障害の実態、支援の専門性と集団等を踏まえ、今後も増加が見込まれる、ろう重複障害者を対象とした「無認可作業所」が地域生活支援事業における広域事業として運営できるよう、施策を講じると共に各市町村への指導を行ってください。
 また、日中活動の事業所において、「広域の条件」の見直しと緩和をおこない、現状より離れた同種の事業所との一体的運営が可能となるようにしてください。
 なお、「全国ろう重複者施設連絡協議会」からも同様の要望を提出しています。 
6.聴覚障害者でも使える、字幕またはテロップ等の文字表示機能付きのAED(自動体外式除細動器)の設置の義務化又は法制化を消防庁と連携して、取り組んで下さい。
(説明)全国の各地にはAEDを設置した、自治体、駅、空港、学校、会社を含める施設が加速的に増加しています。突然の心停止が発生した場合でも迅速に対応できる体制が確立されつつ、一人でも多くの命を助けることが国民にとって喜ばしいことであります。しかし、現在設置されているAEDはほとんど音声方式であるため、聴覚障害者には不向きとなっています。救急蘇生教育又は救急法講座を受けた聴覚障害者が大勢いるにもかかわらず音声方式のAEDでは使えない状況です。国や地方公共団体がバリアフリーで誰でも暮らしやすい、使いやすい社会実現への一つのステップとして字幕またはテロップ等の文字表示機能付きのAEDの設置の義務化又は法制化を図ってください。

以 上

連本第120362号
2012年10月26日

厚生労働大臣 
 三井 辨雄 様

162-0801東京都新宿区山吹町130SKビル8階
 Tel03-3268-8847・Fax03-3267-3445
財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者のスポーツ施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、2011年8月に障害者基本法が改正され、スポーツを含むあらゆる分野での障害者の社会参加の支援のための施策を推進することが求められました。また「スポーツ基本法」が50年ぶりに改正され、これを実施するための「スポーツ基本計画」が文部科学大臣より告示されました。今後障害者スポーツの一層の発展が期待されています。
 つきましては、さらなる聴覚障害者スポーツの施策推進をお願いしたく、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

① デフリンピック派遣および国際大会派遣への補助を拡充してください。
(説明)
 デフリンピックへの選手団派遣に際し、国庫補助金が交付されるようになりましたが、総額の3分の2の金額の補助のため、残りの3分の1を選手団で負担せざるを得ません。その費用は派遣団体、各競技団体で負担するための活動を行っていますが、この負担は競技レベル向上のために努力してきた選手たちにとって、大変な重荷となります。つきましては、選手の負担を軽減させるため、この残り3分の1に対する補助ができる施策を要望いたします。
 また、聴覚障害者のアスリートの育成及びアジア大会、デフリンピック等の国際大会への派遣のための施策の実施と拡充を行ってください。現在、多くの国際大会に聴覚障害者のアスリートを派遣していますが、その分、各競技団体の事務局運営の負担が大きくなっています。これら事務局のスタッフは障害当事者がボランティアで担っており、国際大会への派遣や強化合宿等の準備および決算処理等をボランティアで処理するにはあまりにも負担が過剰になっています。公費をもって然るべき運営ができるよう、補助の枠を広げるなどの施策を要望いたします。

② 国民へのデフリンピックを始めとする聴覚障害者スポーツに対する啓発のための事業に関する制度創設及び拡充を行ってください。
(説明)
 デフリンピックに関するメディアの取り扱い、国民の関心は以前に比べれば高くなったものの、オリンピック、パラリンピックに比べるとまだまだ低いと言わざるを得ません。
 そのため、選手が所属している会社に派遣に伴う休暇を申請してもなかなか認められない、企業に派遣に対する協賛をお願いしてもなかなか認めてもらえない等、認知度が低いがゆえに起こる問題が多く存在します。
 これを解決するために、社会へのデフリンピック啓発普及事業を行ってきておりますが、まだまだ不十分であり、この事業をより一層拡充させていく必要があります。
 国民、社会へのデフリンピック啓発普及事業に対する取り組みに対する制度の創設及び拡充を要望いたします。

③ 聴覚障害者が「生涯スポーツ」を享受することができるよう、環境を整える施策をおこなってください。
(説明)
 世界レベルの競技力を持つスポーツ選手を増やすためにも、聴覚障害者が常日頃からスポーツに親しみ、練習、競技を行うことができる環境を整備し、裾野を広げることが必要です。そのためにも、地域における「スポーツ教室」からスポーツクラブ活動に至るまで、障害者を受け入れるためのガイドラインを示し、助成等の事業を創設するなど、国が積極的な施策を打ち出すことで、受け入れ態勢が向上します。
 聴覚障害者のスポーツ普及振興及びレベルアップを図るため、地域でのあらゆるスポーツ活動において、障害の有無にかかわらず参加の機会が保障されるよう、受け入れ体制の整備に関する施策の拡充を行ってください。

以  上

連本第120363号
2012年10月26日

文部科学大臣 
 田中 眞紀子 様

162-0801東京都新宿区山吹町130SKビル8階
 Tel03-3268-8847・Fax03-3267-3445
財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者のスポーツ施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、2011年8月に障害者基本法が改正され、スポーツを含むあらゆる分野での障害者の社会参加の支援のための施策を推進することが求められました。また「スポーツ基本法」が50年ぶりに改正され、これを実施するための「スポーツ基本計画」が文部科学大臣より告示されました。今後障害者スポーツの一層の発展が期待されています。
 つきましては、さらなる聴覚障害者スポーツの施策推進をお願いしたく、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

① 聴覚障害児・者へのスポーツ普及振興及びレベルアップを図るため、地域でのあらゆるスポーツ活動において、積極的に障害者を受け入れる体制の整備の促進を図るとともに、「障害理解」の啓発に力を入れてください。
(説明)
 世界レベルの競技力を持つスポーツ選手を増やすためにも、聴覚障害児、者が常日頃からスポーツに親しみ、練習、競技を行うことができる環境を整備し、裾野を広げることが必要です。そのためにも、地域における「スポーツ教室」からスポーツクラブ活動に至るまで、障害者の受け入れに対する一定の基準を設けるなど、国が積極的な施策を打ち出すことで、受け入れ態勢が向上します。
 ろう学校においてもデフリンピックや、ろうスポーツの認知はまだまだ低く、障害者のスポーツ全般がまだまだ社会的認知を受けられない状況が続いています。ぜひ障害者スポーツのすそ野を広げるためにも、小学校・中学校の教科書にオリンピック、パラリンピックとあわせ、「デフリンピック」等の障害者スポーツに触れる項目を作成し、その啓発を図ってください。
 また、聴覚障害児のスポーツ活動を支援するため、ろう学校と地域一般校との交流活動を進め、障害にかかわらずスポーツを楽しむ機会の拡充を図ってください。学童期にスポーツを通して体験できる人間的な成長の機会を保障するためにも、現在行われている学校交流を一層促進するための施策の拡充を要望します。

② スポーツ基本計画の実施には聴覚障害者を含む障害者から意見を組み入れたうえで適切な配慮がなされるようお願いします。
(説明)
 スポーツにおいても、スポーツ基本法に基づき文部科学大臣から障害者スポーツ施策を含むスポーツ基本計画を打ち出しています。国や地方公共団体において、これら施策を実施する取り組みが始まろうとしていると思います。実施する際は、聴覚障害者を含む障害者からの意見をよく取り入れたうえで、適切な配慮がなされるよう指導をお願いします。

③ 聴覚障害者アスリートやスポーツ愛好家への指導者の育成、指導法の研究の促進に関する施策の実施と拡充を行ってください。
(説明)
 スポーツ基本法にもあるとおり、障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければなりません。具体的に言うと、障害者のニーズにあった指導ができる指導者の育成および、その環境の整備が求められます。
 聴覚障害者がスポーツを行ううえで、必要な専門知識、用品等の開発、実践研究の取り組みを促進してください。例えば、聴覚障害者の陸上競技や水泳競技では、スタートを合図するランプが代わりに使用されます。この機器を開発し、全国どこでも、どのろう学校でも使用できるよう普及と取り組みをお願いします。
 また、国際競技力の向上に向けた人材養成およびスポーツ環境の整備において、デフリンピックを中心とした世界選手権大会への聴覚障害者アスリートの発掘・育成・強化や支援などを推進してください。特に、デフリンピックの知名度を高め、聴覚障害者アスリートの意欲を高めるためにも、表彰などの取り組みをお願いします。

以 上