(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構へ「聴覚障害者の労働及び雇用施策への要望について」を提出



連本第110262号
2011年10月21日

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
 理事長  小林 利治 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話 03-3268-8847・FAX 03-3267-3445
財団法人 全日本聾唖連盟
理事長 石野 富志三郎 

聴覚障害者の労働及び雇用施策への
要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私たち聴覚障害者の福祉向上については、深いご理解とご配慮をいただき、厚くお礼申し上げます。
 さて、国においては、障害者権利条約の批准に向けて、障害者基本法改正など国内法制度の整備が進められているところであり、貴機構におかれましてもこの障害者権利条約をふまえた聴覚障害者の労働及び雇用の施策推進をお願いしたく、下記の通り要望いたします。

1. 各企業が法定雇用率を達成できるように、また聴覚障害者の雇用を拡大できるように強力なバックアップを図ってください。
(説明)
 昨年6月の障害者の実雇用率は、一般民間企業が1.68%と依然として法定雇用率が達成されていない状況が続いています。
 障害者の社会参加を後押しするためにも、すべての企業が法定雇用率を遵守することで、障害者の失業問題も改善され、社会参加が促されるものと思います。そのためにも下記の要望を実現してください。
 
(1)「障害者の雇用の促進等に関する法律」を実効性のあるものとするために、企業名を公表するだけでなく、雇用納付金の値上げ等、納付金制度の改善や雇用率のアップを強力に推進してください。

2. 各企業が積極的に聴覚障害者を雇用できるように障害者介助等助成金制度の中の手話通訳担当者の委嘱助成金を改善し、さらに使いやすい制度にしてください。
(説明)
 すべての聴覚障害者の求めに応じて手話通訳者を委嘱できるよう、等級制限撤廃や10年間の支給期間を「聴覚障害者が雇用されている間、聴覚障害者の申請に応じ、利用が出来ること」に改正してください。また助成金制度の拡充を図るとともに、企業に対して企業秘密等の理由で手話通訳を
断ることのないよう指導してください。

3. 企業に職場定着推進マニュアル等の普及を図り、聴覚障害者を受け入れる環境の整備を指導してください。また、『聴覚障害者のための職場定着推進マニュアル』作成を検討してください。
(説明)
 情報が行き渡らず、コミュニケーションが十分でないために誤解されやすく、職場定着がままならない聴覚障害者について理解してもらうために、『重度障害者(聴覚障害者)の職域開発に関する研究報告書』(2003年~2005年機構委託事業)の活用や『聴覚障害者のための職場改善に関する好事例集』、『聴覚障害者の職場定着推進マニュアル』改訂版の普及などを図り、企業に聴覚障害者を受け入れる環境の整備を引き続き指導してください。
 また、聴覚障害者の職場定着を一層推進するためには、企業への理解だけでなく、当事者である聴覚障害者自身の努力が求められています。聴覚障害者のための職場定着マニュアルを作成してください。

4. 障害者職業能力開発校に手話通訳者等を設置し聴覚障害者が学べる環境の整備を充実してください。
(説明)
 職業能力開発校は、新たに技術を身につけ、就職できるようにするために大切な場となっております。ノーマライゼーション理念に添う職業教育環境を推進するためにも、機構で運営している2校が、すべての県立訓練施設や開発校のモデルになるよう手話通訳者や要約筆記者を設置する等、聴覚障害者が学べる環境を整備してください。

5.職場適応援助者(ジョブコーチ)事業の拡充を図ってください。
(1)職場適応援助者助成金の「当該法人の支援を受けた障害者で就職した者が過去3年間で20名以上であること」の要件を緩和して、現在38ヶ所に設置されている聴覚障害者情報提供施設においても聴覚障害者の就労支援活動の強化のために実施できるようにしてください。
(2)聴覚障害者の職場定着を確実なものとしていくために、聴覚障害者が手話コミュニケーションの心配なく、職場定着指導や職業相談などが受けられるよう、ジョブコーチの条件に「手話ができる」ことやジョブコーチ養成カリキュラムに「手話」を取り入れるようにしてください。
(3)聴覚障害者がジョブコーチ養成研修を受けられるように手話通訳者の配置等、情報保障を整備してください。

以 上