WFDニュースレター2011年7月号特集記事『1951-2011 世界ろう連盟60周年記念』



※以下はWFDニュースレター2011年7月号より抜粋(全日本ろうあ連盟和訳)

1951-2011 世界ろう連盟60周年記念

【 設立 】

 
 世界ろう連盟がろう者の人権確立を求めてすでに60年がたちました。今年はその60周年記念を祝う年です。
 
 WFDはイタリアろう協会主催のもと、1951年9月19-23日の世界会議中にイタリアのローマで設立されました。各国ろう協会の16人の代表者が、ろう者のニーズや要望に応えるための国際的な基盤となる組織を、公的に設立することを決定しました。それ以来、WFDの会員国は16カ国から131カ国にまでに拡大しました。
 
 1951年の会議には30-40の国々から約600人が参加しました。
 
 1948年、国連は世界中の一般人の人権の確立に重点を置き始めました。WFDは早くからろう者の人権確立に力を注いだということから、世界でも最も由緒ある国際的な障害者団体のひとつとなっています。
 
 チェーザレ・マガロット博士は世界ろう連盟の創立者のひとりであり、1951-1955年に理事長をつとめたヴィットーリオ・イエラッレ氏のもとで初代事務局長を務めました。
 
 イエラッレ氏とマガロット博士は、1951年ローマにWFD事務局を設置するにあたり、イタリア政府から絶大な信頼を獲得しました。この事務局は1951-1987年イタリア国内が所在地となりました。イタリア政府からの支持を受ける一方、のちにはイタリアろう協会、Ente Nazionale dei Sordomutti(ENS)からの支援も加わり、こうしてWFD事務局は世界中の各国ろう団体と一緒になって情報や人権擁護のネットワークを確立することができるようになりました。

【 組織と活動 】

 
[ 1951-2011年までの理事長 ]
1951-1955 ヴィットーリオ・イエラッレ、イタリア
1955-1983 ドラゴリュブ・ヴコティック、旧ユーゴスラビア
1983-1995 イエーカー・アンダーソン、アメリカ
1995-2003 リサ・カウピネン、フィンランド
2003-2011 マルク・ヨキネン、フィンランド
 
 チェザーレ・マガロット博士はWFD事務局の初代事務局長に選出され、1987年までその任務を担いました。1987年フィンランド、ヘルシンキで開催された評議員会で、リサ・カウピネン博士が2代目事務局長に選出され、1996年まで務めました。この間に、フィンランド政府から多大な経済的援助を受けていました。1996年スイス、ジュネーブでの第67回WFD理事会において、オーストラリア、米国のキャロル=リー・アクアライン女史が、初の常勤(有給)の事務局長に任命されました(1996-2005)。その後は、財政難により、WFDはアクアライン女史の後任として新しい事務局長を任命できない状況が続いています。
 
 1987年事務局はフィンランドのヘルシンキに移りました。フィンランド政府及びフィンランドろう協会(FAD)からの財政援助は、当時WFD事務局長であったリサ・カウピネン博士(WFD名誉理事長)や理事長イエーカー・アンダーソン博士の尽力によるものであり、WFD事務局にとって大きな支援となりました。2003年から2011年まで、マルク・ヨキネンWFD理事長が事務局の指導者として職務を担いました。スカンジナビアのろう団体やその他のろう組織も、WFD事務局に何年も経済援助を続けました。2007年7月スペイン、マドリッドでの第17回評議員会で代表者たちは、フィンランドをWFD事務局の正当な所在地であると認めました。
 
 当初、WFDはろう者の存在を強くアピールし、ろう者自身が先頭となって活動していました。1960年代までは聴者による統制がかなり強くなり、1970年代まで続きました。1980年代に再びWFD理事や世界会議にろう者が率先して関わるようになり、今日に至っています。
 
 1991年の日本、東京での第11回世界会議には世界中から7000人もの人が集まり、史上最大の大規模な会議となりました。
 
 WFD評議員会は4年に1度、世界会議に先立って行われます。2007年のスペイン、マドリッドの第17回評議員会には、スペイン政府や北欧各国の尽力により、評議員会や世界会議に発展途上国の評議員が派遣され、史上最多の94名の評議員が出席しました。
 
 非常に貧しい国々でもより多くのろう者団体は成長し続けています。1980年代の終わりから発展途上国はWFDと実際に関わりを持つようになり、今日では131ものろう協会がWFDの会員となって支えています。
 
 WFDの会員には4種あります。正会員(各国のろう団体)、賛助会員、名誉会員及び個人会員です。WFDの賛助会員の中には、ギャローデット大学のように1950年代からWFDと深い協力関係にある組織もいくつかあります。
 
 WFDの日々の活動では、各国の手話の地位向上に重点を置き、ろう教育の改善を主唱し、様々な方法でろう団体を支援しています。また、決議や政策決定へのろう者の参加を促し、手話通訳者をつける権利を確保し、手話による情報アクセスを可能にすることを行っています。
 
 現在40カ国以上の国々において政府は、手話を自国の言語のひとつとして公的に認めており、ろう者の権利を保護する法律においてもそのことが規定されています。

【 国連との連携 】

 
 国際連合(UN)の諮問機関となったことにより、1950年代の終わりから、WFDは国連やその関連機関である経済社会理事会(ECOSOC)、教育科学文化機関(ユネスコ)、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)と連携してきました。2007年には欧州議会(COE)に加わり、参加権を取得しました。
 
 さらに、WFDは国連機関に対して積極的に人権擁護運動をおこなうことで関係を築いてきました。その機関には、国連児童基金(ユニセフ)、世界銀行、障害と開発に関するグローバル・パートナーシップ(GPDD)、とりわけ今日では国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国際障害者連盟(IDA)などと連携しています。国際障害者連盟(IDA)は障害者のグローバルかつ地域的な組織のネットワークです。
 
 WFDは1983年国連総会で採択された、障害者の機会均等化に関する基準規則の文面作成に積極的に加わりました。
 
 1994年WFDは、特別支援教育(アクセスと特性)における世界会議での「サラマンカ宣言」や「特別支援教育における行動の枠組み」の策定過程にも関わりました。
 
 2001-2006年には、WFDはIDA(当時は国際的な障害者団体が8つありました)とともに、「障害者の権利および尊厳を保護、促進するための包括的かつ総合的な国際条約」の国連アドホック委員会の準備作業に代表として参加しました。国連障害者権利条約(CRPD)の採択を実現することがWFDの目的でした。2006年12月13日、ニューヨークの国連本部にて採択され、2007年3月30日に署名のために開放されました。これは21世紀初の包括的な人権条約であり、各国の総合的な組織によって署名のために開放された初の人権に関わる国際協定であります。国連障害者権利条約は2008年5月3日に発効しました。

【 青年部 】

 
 1951年のWFD設立以来、いつも若いろう者が世界会議に参加していましたが、1987年まで若者向けの公的な場はありませんでした。青年フォーラムがフィンランドのヘルシンキで開かれ、そこで若者のワーキンググループが立ち上げられました。日本の東京でのWFD世界会議では、再度、青年たちの非公式の集いが開かれました。非公式の選挙が行われ、青年グループが結成されました。このグループは第1回青年キャンプ主催のために労を惜しまず働き、さまざまな国々のろう青年のネットワークの発展に寄与しました。第1回WFDYSキャンプ(18-30歳対象)が、世界会議に先立ってオーストリアで開催され、続いてジュニア(13-17歳)、子ども(10-12歳)キャンプが他の国々で行われました。

【 SIG委員会 】

 
 WFDは様々な分野の学術委員会すべてにワークショップを用意しました。ろう教育、手話、その他専門分野(現在は分科会グループとよばれています)、非学術分野(現在はSIGグループとよばれています)があります。最初の学術分野のワークショップは1988年フィンランド、ヘルシンキで開かれました。専門家のネットワークは1991年に作られました。

【 地域事務局 】

 
 地域事務局は特定の地域のろう団体によって構成されているネットワークです。最初のWFD地域事務局は1984年アジア・太平洋地域、その後アフリカ東部・南部地域に設置され、また1996年には東欧・中央アジアに設置されました。その後さらに、南米、メキシコ・カリブ海沿岸地域にも地域事務局が設置されました。

【 その他特別行事 】

 
 2001年9月、WFDは発祥の地であるイタリアのローマで、イタリアろう協会主催のもと50周年記念を祝いました。会議やアートや歴史の展示会を開催し、祝賀晩餐会が催されました。
 
 WFD国際会議開催年の合間に、WFD正会員や賛助会員の主催により小規模のWFD会議が開催されることもあります。 これまで唯一開催された例としては、WFD人権会議(テーマ:私たちの権利、私たちの未来)が2005年9月フィンランドのヘルシンキで行われ、69カ国から400人を超える参加者が集まりました。

【 さいごに 】

 
 長きにわたりWFDの先頭に立って尽力されてきた歴代理事長の皆様方に感謝するとともに、これまであらゆる形でWFDの繁栄に深く貢献してくださったWFD正会員の皆様方にもお礼を申し上げたいと思います。
 
 アフリカの大地で初のWFD国際会議が開催されるという、記念すべき点から見ても南アフリカのダーバンでWFD60周年記念を祝うことはまさに絶好の機会です。このイベントで、ジャック・R・ガノン博士の手による1951-2001年までのWFDの歩みが発表される予定です。WFD理事や事務局はジャック・R・ガノン博士に、WFDの歴史を無償で著すという素晴らしい仕事をしてくださったことに謝意を表したいと思います。
 
 2011年7月17日ダーバンでのWFD評議員会終了後の祝賀式典には、どなたでもご参列いただけます。その場にいらっしゃらなくても、ろう者の完全な人権のためにこれまで力を尽くし、現在も活動を続けている世界中の賞賛すべき人達や組織を思い、心をひとつにしていただければ幸いです。